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737. 領土防衛戦6
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一応、子爵家の教育係に抜擢される男であった。
それなりの教養と経験があるようで、
自軍の守勢に弱いという弱点を把握しているようであった。
「アルフレート・フォン・エスターライヒ、出ろ!一騎打ちだ。
お互いに兵たちの血を無駄に流したくないだろう」
初老の男は大剣を振り上げて、
一騎打ちという言葉を連呼していた。
大剣は陽の光を鮮やかに反射していた。
誠一は目を凝らして、鑑定眼を展開した。
大剣は魔術刻印が刻まれていた。鎧と大盾も同様であった。
「あの大剣を片手で扱うために鎧やガンレットに
身体強化系の魔術が刻印されているか。
それに大盾にも刻印されているようだな」
「アル、つまりあれか。
高価な装備品を身に付けて、
自分が強くなったつもりになっているって訳だな」
「いやヴェル。実際にロジェさんの持つ
ツヴァイヘンダーくらいの剣を片手で扱いながら、大盾も扱う。
それなりに技術もあれば経験もあると思う。
それに力がなければ、民を抑えつけることは出来ないしね」
誠一の評価に不服そうなヴェルであった。
「かと言って、魔術師と侮っている
あの男に負ける気はしないけどね。
侮られているうちにさっさと倒すから、
残りの連中は皆で頼む。
全滅は無理だと思うけど、出来る限り倒して」
誠一の言葉に満足気なヴェルであった。
「ったくアル、お前はどうして
そう気を揉む様な事ばかり言うんだ!
一撃で倒して来るとかもっと景気の良いことを
言ってくれよな」
ヴェルに発破をかけられて、誠一は気合を入れ直して、
初老の男に向かって歩き出した。
誠一の目には青空も木々も乾いた大地も映っていなかった。
倒すべき相手のみを映し出していた。
「おいってちょっと待て、おーい、アル。
ってかアレに気付いてないのか?」
初老の男が立つ少し前へ雑に隠された落とし穴の罠が
仕掛けてあった。
誠一の歩みはそんなものが
全く目に入っていないような堂々たる歩みだった。
「ほんとお貴族様には困ったもんだよ。
ヴェル、少し黙って。アルフレートがあんな見え透いた罠に
気付かないようなアホじゃないでしょ。
あれは注意を引くための罠よ。本命は、あそことアレかな」
サリナが言うや否や短剣を二本、投擲した。
木々が誠一に向かって倒れた。土埃が誠一に覆い被さった。
しかし、それらが誠一を汚し傷つけることはなかった。
全てが弾かれていた。
「ったくいつの間に防御魔術を展開してたんだ。
無詠唱か魔石を解放したのか、シエンナ、分かったか?」
シエンナは誠一を凝視していた。
眼光に凄まじい力が籠っていた。
誠一の一挙手一投足を逃すまいとしていることは
明白であった。
「恐らく魔石に込めていた魔術を解放したようね。
魔術の噴き上がったのは左手からよ。
うん、それにしてもアルはいつから魔道具の勉強を
しているのかしら。
魔術院での魔道具の実習は中等部後期からはず。
負けられないわ」
シエンナは悔しそうであった。
それなりの教養と経験があるようで、
自軍の守勢に弱いという弱点を把握しているようであった。
「アルフレート・フォン・エスターライヒ、出ろ!一騎打ちだ。
お互いに兵たちの血を無駄に流したくないだろう」
初老の男は大剣を振り上げて、
一騎打ちという言葉を連呼していた。
大剣は陽の光を鮮やかに反射していた。
誠一は目を凝らして、鑑定眼を展開した。
大剣は魔術刻印が刻まれていた。鎧と大盾も同様であった。
「あの大剣を片手で扱うために鎧やガンレットに
身体強化系の魔術が刻印されているか。
それに大盾にも刻印されているようだな」
「アル、つまりあれか。
高価な装備品を身に付けて、
自分が強くなったつもりになっているって訳だな」
「いやヴェル。実際にロジェさんの持つ
ツヴァイヘンダーくらいの剣を片手で扱いながら、大盾も扱う。
それなりに技術もあれば経験もあると思う。
それに力がなければ、民を抑えつけることは出来ないしね」
誠一の評価に不服そうなヴェルであった。
「かと言って、魔術師と侮っている
あの男に負ける気はしないけどね。
侮られているうちにさっさと倒すから、
残りの連中は皆で頼む。
全滅は無理だと思うけど、出来る限り倒して」
誠一の言葉に満足気なヴェルであった。
「ったくアル、お前はどうして
そう気を揉む様な事ばかり言うんだ!
一撃で倒して来るとかもっと景気の良いことを
言ってくれよな」
ヴェルに発破をかけられて、誠一は気合を入れ直して、
初老の男に向かって歩き出した。
誠一の目には青空も木々も乾いた大地も映っていなかった。
倒すべき相手のみを映し出していた。
「おいってちょっと待て、おーい、アル。
ってかアレに気付いてないのか?」
初老の男が立つ少し前へ雑に隠された落とし穴の罠が
仕掛けてあった。
誠一の歩みはそんなものが
全く目に入っていないような堂々たる歩みだった。
「ほんとお貴族様には困ったもんだよ。
ヴェル、少し黙って。アルフレートがあんな見え透いた罠に
気付かないようなアホじゃないでしょ。
あれは注意を引くための罠よ。本命は、あそことアレかな」
サリナが言うや否や短剣を二本、投擲した。
木々が誠一に向かって倒れた。土埃が誠一に覆い被さった。
しかし、それらが誠一を汚し傷つけることはなかった。
全てが弾かれていた。
「ったくいつの間に防御魔術を展開してたんだ。
無詠唱か魔石を解放したのか、シエンナ、分かったか?」
シエンナは誠一を凝視していた。
眼光に凄まじい力が籠っていた。
誠一の一挙手一投足を逃すまいとしていることは
明白であった。
「恐らく魔石に込めていた魔術を解放したようね。
魔術の噴き上がったのは左手からよ。
うん、それにしてもアルはいつから魔道具の勉強を
しているのかしら。
魔術院での魔道具の実習は中等部後期からはず。
負けられないわ」
シエンナは悔しそうであった。
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