743 / 830
733. 領土防衛戦2
しおりを挟む
「王国に状況と援軍の依頼をしていますから、
その回答待ちです。それまでは、その」
誠一はそこで言いよどんでしまった。
そこから先へ続く言葉を見つけることができなかった。
「そこから先は」
しかしマリアンヌは、それを許さずに厳しく追及した。
言葉に詰まった誠一は口に溜まる唾をごくりと飲み込んだ。
「そっそれから先はそのあの」
何とか言葉を繋ぎ、マリアンヌの追及を躱して
時間を稼ごうと目論んだが、口先だけの弁明にすら
なっていない誠一の言葉では全く時間稼ぎになっていなかった。
醜態を晒しただけであった。
「端的に言うと、無為無策と言うことでいいんだな。
近隣のジェイコブ派によい様に王国の民を痛めつけられて、
見てみぬ振りをするということだな」
「いやそういう訳でな」
誠一が何とか何かを言おうとしたが、マリアンヌに遮られた。
「アルフレート・フォン・エスターライヒ、
君は何か思い違いをしていないか。
誰も全ての策や案を示せなどと言っていないぞ。
妙案や良案がないならば、何故、周囲の仲間に意見を求めない。
万能な者など、この世に一人としていない。
ましてや君はまだまだ経験不足だ。その歳で学ぶことを放棄するなよ」
くそっ言いたいこといいやがって、
今までどんだけそれを俺に押し付けてきたと思っているんだ。
押し付けられた責任にどれだけ真摯に応えようとしてきたと
思っているんだ。
言葉にできない思いを誠一は心の中で叫んだ。
誠一は、今まで自然とそんな風に思わせてきたヴェルとシエンナの方を
恨めしそうに見てしまった。
「マリの言いたいことは分かったけど。
すまねえ、俺がアルに頼りっぱなしでついついアルに
押し付けていたからよ」
「その私もアルがいつも的確な判断を下していたから、
ついついそれに甘えていたから」
ヴェルとシエンナが誠一を前に反省の弁を述べた。
誠一は恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になっていた。
自分には彼等より長く生きた経験があった。
そのことをすかっかりと忘れていた。
彼等も学び、経験を積んでいた。
そして誠一と対等に話せるくらいの青年に成長していた。
ロジェやキャロリーヌは誠一より生きた年数は
遥かに短いにも関わらず、大人であった。
「いやごめん。分からないことや対処しきれないことが
生じているのにみんなに相談することを忘れていたよ。
流石にテンパっていたみたいだ」
誠一はまだ、素直に己の不明を詫びることができた。
その態度に満足したのかマリアンヌは、それ以上、
話を続けることはなかった。
その回答待ちです。それまでは、その」
誠一はそこで言いよどんでしまった。
そこから先へ続く言葉を見つけることができなかった。
「そこから先は」
しかしマリアンヌは、それを許さずに厳しく追及した。
言葉に詰まった誠一は口に溜まる唾をごくりと飲み込んだ。
「そっそれから先はそのあの」
何とか言葉を繋ぎ、マリアンヌの追及を躱して
時間を稼ごうと目論んだが、口先だけの弁明にすら
なっていない誠一の言葉では全く時間稼ぎになっていなかった。
醜態を晒しただけであった。
「端的に言うと、無為無策と言うことでいいんだな。
近隣のジェイコブ派によい様に王国の民を痛めつけられて、
見てみぬ振りをするということだな」
「いやそういう訳でな」
誠一が何とか何かを言おうとしたが、マリアンヌに遮られた。
「アルフレート・フォン・エスターライヒ、
君は何か思い違いをしていないか。
誰も全ての策や案を示せなどと言っていないぞ。
妙案や良案がないならば、何故、周囲の仲間に意見を求めない。
万能な者など、この世に一人としていない。
ましてや君はまだまだ経験不足だ。その歳で学ぶことを放棄するなよ」
くそっ言いたいこといいやがって、
今までどんだけそれを俺に押し付けてきたと思っているんだ。
押し付けられた責任にどれだけ真摯に応えようとしてきたと
思っているんだ。
言葉にできない思いを誠一は心の中で叫んだ。
誠一は、今まで自然とそんな風に思わせてきたヴェルとシエンナの方を
恨めしそうに見てしまった。
「マリの言いたいことは分かったけど。
すまねえ、俺がアルに頼りっぱなしでついついアルに
押し付けていたからよ」
「その私もアルがいつも的確な判断を下していたから、
ついついそれに甘えていたから」
ヴェルとシエンナが誠一を前に反省の弁を述べた。
誠一は恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になっていた。
自分には彼等より長く生きた経験があった。
そのことをすかっかりと忘れていた。
彼等も学び、経験を積んでいた。
そして誠一と対等に話せるくらいの青年に成長していた。
ロジェやキャロリーヌは誠一より生きた年数は
遥かに短いにも関わらず、大人であった。
「いやごめん。分からないことや対処しきれないことが
生じているのにみんなに相談することを忘れていたよ。
流石にテンパっていたみたいだ」
誠一はまだ、素直に己の不明を詫びることができた。
その態度に満足したのかマリアンヌは、それ以上、
話を続けることはなかった。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした
月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。
それから程なくして――――
お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。
「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」
にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。
「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」
そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・
頭の中を、凄まじい情報が巡った。
これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね?
ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。
だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。
ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。
ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」
そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。
フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ!
うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって?
そんなの知らん。
設定はふわっと。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
転生幼女の異世界冒険記〜自重?なにそれおいしいの?〜
MINAMI
ファンタジー
神の喧嘩に巻き込まれて死んでしまった
お詫びということで沢山の
チートをつけてもらってチートの塊になってしまう。
自重を知らない幼女は持ち前のハイスペックさで二度目の人生を謳歌する。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる