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733. 領土防衛戦2

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「王国に状況と援軍の依頼をしていますから、
その回答待ちです。それまでは、その」
誠一はそこで言いよどんでしまった。
そこから先へ続く言葉を見つけることができなかった。

「そこから先は」
しかしマリアンヌは、それを許さずに厳しく追及した。

言葉に詰まった誠一は口に溜まる唾をごくりと飲み込んだ。
「そっそれから先はそのあの」
何とか言葉を繋ぎ、マリアンヌの追及を躱して
時間を稼ごうと目論んだが、口先だけの弁明にすら
なっていない誠一の言葉では全く時間稼ぎになっていなかった。
醜態を晒しただけであった。

「端的に言うと、無為無策と言うことでいいんだな。
近隣のジェイコブ派によい様に王国の民を痛めつけられて、
見てみぬ振りをするということだな」

「いやそういう訳でな」
誠一が何とか何かを言おうとしたが、マリアンヌに遮られた。

「アルフレート・フォン・エスターライヒ、
君は何か思い違いをしていないか。
誰も全ての策や案を示せなどと言っていないぞ。
妙案や良案がないならば、何故、周囲の仲間に意見を求めない。
万能な者など、この世に一人としていない。
ましてや君はまだまだ経験不足だ。その歳で学ぶことを放棄するなよ」

くそっ言いたいこといいやがって、
今までどんだけそれを俺に押し付けてきたと思っているんだ。
押し付けられた責任にどれだけ真摯に応えようとしてきたと
思っているんだ。
言葉にできない思いを誠一は心の中で叫んだ。
誠一は、今まで自然とそんな風に思わせてきたヴェルとシエンナの方を
恨めしそうに見てしまった。

「マリの言いたいことは分かったけど。
すまねえ、俺がアルに頼りっぱなしでついついアルに
押し付けていたからよ」

「その私もアルがいつも的確な判断を下していたから、
ついついそれに甘えていたから」

ヴェルとシエンナが誠一を前に反省の弁を述べた。
誠一は恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になっていた。
自分には彼等より長く生きた経験があった。
そのことをすかっかりと忘れていた。
彼等も学び、経験を積んでいた。
そして誠一と対等に話せるくらいの青年に成長していた。
ロジェやキャロリーヌは誠一より生きた年数は
遥かに短いにも関わらず、大人であった。

「いやごめん。分からないことや対処しきれないことが
生じているのにみんなに相談することを忘れていたよ。
流石にテンパっていたみたいだ」
誠一はまだ、素直に己の不明を詫びることができた。
その態度に満足したのかマリアンヌは、それ以上、
話を続けることはなかった。
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