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726. 初の戦略・戦術26

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「ガキどもに何が分かる。
貴族たる矜持を捨てて、賊に与する屑どもが。
ここで終わりだ。やれっ」

ジェミロが短刀を引き抜き、掲げた。
すると隠れていた兵士たちが現れた。

「我が君主のお仰せのままに」

「我が命、此処に捧げます」

誠一たちがそれなりに体力を消耗しているのを見て取り、
勝利を確信しているのだろうか、敵兵は雄叫びを上げた。

まさに芝居がかった一幕が誠一たちの前で繰り広げられた。
数十人の屈強な兵士たちが誠一とヴェルを囲んでいた。
明らかに今までと違った雰囲気の兵士たちであった。

「我が領地の選りすぐりの戦士たちだよ。
まさか1の策、2の策を越えてここまで来るとは
予想していなかったが、君らの追撃もここまで。
今回の賭け事は中々に緊張した。うむ、楽しませて貰った。
お礼と言っては何だが苦しまずに死んで貰おう」

兵士たちの後方から余裕綽々で不快な声を上げるジェミロだった。

囲まれた誠一とヴェルは背中を合わせていた。
「どうにも不快な囀りが聞えるよな、アル。
みんなが追い付くまで粘るぞ。俺の背中は任せた」

「言うに及ばずだよ、ヴェル。
黙って背中を預けた以上、当たり前のことだろ」
誠一は淡々としてヴェルに返答した。
ヴェルの表情は見えなかったがニヤリしたような気がした。

「くっ相変わらず、お前は漢として俺の一歩先を行くな。
言葉にした俺がどうにも矮小に感じちゃうだろ」
誠一は答えずに防御魔術を展開した。
それに併せてヴェルも展開した。

「エアシールド」

「フレイムシールド」

敵兵は誠一たちに群がって来た。
防御魔術で敵の侵攻経路を限定し、
目の前で得物を振り上げる敵兵を
二人は容赦なく叩き潰した。
一人倒されるごとにジェミロの眉間の皺が
一本増える様であった。

 半数ほどが戦闘不能になると、ジェミロは
この場からの逃亡を試みた。
誠一たちはいまだに囲まれており、
ジェミロの逃亡を阻止できる状況でなかった。

「くそったれ、転送石だな。
いつでも逃げられたってことか。
何が命をベットしてるだ!」
ヴェルは愚痴りながらも面前の敵を捌くので
手一杯であった。それは誠一も同様であった。

先程のローランやデルヒムほどの使い手はいないが、
如何せん数が多かった。
囲いを突破する前にジェミロを取り逃がすこと必定であった。

余裕のあるジェミロは逃亡する前に兵士たちの士気を更に煽った。
「あの二人を倒した者には恩賞は思いのままだ。
ジェイコブ王の元、領主に引き上げてやろう。
女も金も思いのままだ」

響き渡るジェミロの高笑いは、誠一たちを不快にした。
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