735 / 888
725. 初の戦略・戦術15
しおりを挟む
「アル、野郎が逃げやがる。
そのでかぶつはおまえに譲る。いいな!」
誠一はローランに目を向けると自然、目が合った。
ローランの表情は先程と打って変わって、
へらへらした様相から様変わりしていた。
しかし、誠一は怯むことはなかった。
アルフレート・フォン・エスターライヒという
素体の持つ能力と才能に頼ったままであれば、
誠一は気圧されていただろう。
だが、鈴木誠一という男のこの世界での
数年の苦行と努力、経験が彼に恐れを抱かせなかった。
「おう、任されたよ。
あまり時間がかけられないけど、大丈夫?
そっちの男は中々、素早そうだけど大丈夫?」
「俺の眼から逃れられるような奴に
滅多に会うことはないぞ」
自信満々のヴェルであった。
目で追えても身体がついてこなければ、
無意味だと誠一は言いたかったが、
目の前の巨躯が既に動き出していた。
誠一は焦ることなく目の前の難敵へ冷静に対処した。
「丁度良い距離だ。死ねよ、回転賽の目切り」
ローランの斧が幾度も上下左右に鋭く動いた。
並みの戦士であれば、賽の目に刻まれていたであろう。
誠一が一歩下がれば、ローランは斧を振りながら
一歩進んだ。
しかし、斧は空を斬るだけで、誠一を捉える事はなかった。
「頃合いですね。それなりに僕もこのメイスを
振り続けてきたつもりです」
誠一はローランが斧を振り切ったタイミングで
7面メイスを思いっきり振り上げて、脳天目がけて
振り下ろした。
「一点必中、叩き潰せ。星球降下撃」
振り下ろされた7面メイスは、
ローランの眉間を叩いた。
頭部を守っていたヘルムは拉げ、
ローランの頭は前後左右に不規則に揺れていた。
足取りはおぼつかなく、ふらふらと数歩よろめくと、
そのままばたりと倒れた。
「アル、終わったか、止めは後続に任せとけよ。急ぐぞ」
デルヒムは全身血だらけでピクピクしながら、
横たわっていた。
誠一とヴェルはジェミロを追って走り出した。
走り出して直ぐに誠一たちはジェミロに追いついた。
日頃の不摂生が祟って、ジェミロはふらふらしながら、
走っていた。倒す前に既に虫の息のようであった。
二人の眼には歩くよりその速度は遅く見えたが、
当の本人は必至の形相であった。
「あの野郎、幾重にも罠を仕掛けてやがるな。
アル、殺気をビンビンに放っている敵兵が
家屋に隠れていやがる」
誠一は感心していた。
あれが演技だとすると、大したものだと思った。
迫真の演技とは今のジェミロのことを
指すのだろう感じてしまった。
「ホント大したものだよ。
演劇の途にでも進んでいれば、
人々に迷惑をかけずにいたものを」
背中を晒すジェミロがピクリとした。
立ち止まると、肩を怒らせながら振り向いた。
そのでかぶつはおまえに譲る。いいな!」
誠一はローランに目を向けると自然、目が合った。
ローランの表情は先程と打って変わって、
へらへらした様相から様変わりしていた。
しかし、誠一は怯むことはなかった。
アルフレート・フォン・エスターライヒという
素体の持つ能力と才能に頼ったままであれば、
誠一は気圧されていただろう。
だが、鈴木誠一という男のこの世界での
数年の苦行と努力、経験が彼に恐れを抱かせなかった。
「おう、任されたよ。
あまり時間がかけられないけど、大丈夫?
そっちの男は中々、素早そうだけど大丈夫?」
「俺の眼から逃れられるような奴に
滅多に会うことはないぞ」
自信満々のヴェルであった。
目で追えても身体がついてこなければ、
無意味だと誠一は言いたかったが、
目の前の巨躯が既に動き出していた。
誠一は焦ることなく目の前の難敵へ冷静に対処した。
「丁度良い距離だ。死ねよ、回転賽の目切り」
ローランの斧が幾度も上下左右に鋭く動いた。
並みの戦士であれば、賽の目に刻まれていたであろう。
誠一が一歩下がれば、ローランは斧を振りながら
一歩進んだ。
しかし、斧は空を斬るだけで、誠一を捉える事はなかった。
「頃合いですね。それなりに僕もこのメイスを
振り続けてきたつもりです」
誠一はローランが斧を振り切ったタイミングで
7面メイスを思いっきり振り上げて、脳天目がけて
振り下ろした。
「一点必中、叩き潰せ。星球降下撃」
振り下ろされた7面メイスは、
ローランの眉間を叩いた。
頭部を守っていたヘルムは拉げ、
ローランの頭は前後左右に不規則に揺れていた。
足取りはおぼつかなく、ふらふらと数歩よろめくと、
そのままばたりと倒れた。
「アル、終わったか、止めは後続に任せとけよ。急ぐぞ」
デルヒムは全身血だらけでピクピクしながら、
横たわっていた。
誠一とヴェルはジェミロを追って走り出した。
走り出して直ぐに誠一たちはジェミロに追いついた。
日頃の不摂生が祟って、ジェミロはふらふらしながら、
走っていた。倒す前に既に虫の息のようであった。
二人の眼には歩くよりその速度は遅く見えたが、
当の本人は必至の形相であった。
「あの野郎、幾重にも罠を仕掛けてやがるな。
アル、殺気をビンビンに放っている敵兵が
家屋に隠れていやがる」
誠一は感心していた。
あれが演技だとすると、大したものだと思った。
迫真の演技とは今のジェミロのことを
指すのだろう感じてしまった。
「ホント大したものだよ。
演劇の途にでも進んでいれば、
人々に迷惑をかけずにいたものを」
背中を晒すジェミロがピクリとした。
立ち止まると、肩を怒らせながら振り向いた。
0
お気に入りに追加
159
あなたにおすすめの小説
異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。
お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
【後日談完結】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~
ばいむ
ファンタジー
剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。
高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。
特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長していった。
冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、そして・・・。
初投稿というか、初作品というか、まともな初執筆品です。
今までこういうものをまともに書いたこともなかったのでいろいろと変なところがあるかもしれませんがご了承ください。
誤字脱字等あれば連絡をお願いします。
感想やレビューをいただけるととてもうれしいです。書くときの参考にさせていただきます。
おもしろかっただけでも励みになります。
2021/6/27 無事に完結しました。
2021/9/10 後日談の追加開始
2022/2/18 後日談完結
神様のサウナ ~神様修業がてらサウナ満喫生活始めました~
イタズ
ファンタジー
定年を機に、サウナ満喫生活を行っていた島野守。
極上の整いを求めて、呼吸法と自己催眠を用いた、独自のリラックス方法『黄金の整い』で、知らず知らずの内に神秘の力を身体に蓄えていた。
そんな中、サウナを満喫していたところ、突如、創造神様に神界に呼び出されてしまう。
『黄金の整い』で得ていた神秘の力は、実は神の気であったことが判明し、神の気を大量に蓄えた身体と、類まれなる想像力を見込まれた守は「神様になってみないか?」とスカウトされる。
だが、サウナ満喫生活を捨てられないと苦悶する守。
ならば異世界で自分のサウナを作ってみたらどうかと、神様に説得されてしまう。
守にとって夢のマイサウナ、それが手に入るならと、神様になるための修業を開始することに同意したとたん。
無人島に愛犬のノンと共に放り出されることとなってしまった。
果たして守は異世界でも整えるのか?
そして降り立った世界は、神様が顕現してる不思議な異世界、守の異世界神様修業とサウナ満喫生活が始まる!
*基本ほのぼのです、作者としてはほとんどコメディーと考えています。間違っていたらごめんなさない。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ
高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。
タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。
ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。
本編完結済み。
外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる