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712. 初戦略・戦術2
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「キャロ、もういいよ。
千晴さんはどうやら眠りについたようだよ」
誠一は適当にキャロリーヌへ伝えた。
すぐさま、誠一が神のとの対話を終えたことが隊に伝わった。
隊の極度の緊張が一気に解けた様に誠一には感じられた。
誠一はざわつく傭兵や冒険者たちの会話に耳を傾けていた。
「噂は本当だったんだな」
「あり得ないだろ。こんな場所で啓示を受けるなんて。
どんだけ神に愛されているんだよ」
「俺、今回の出征に参加して良かった」
無論、否定的なことを言う者もいたが、
周囲の冷たい目線と聞こえよがしの罵詈雑言を受けて、
慌ててその意見を引っ込めていた。
恐ろしいまでの同調圧力が働いていた。
誠一はそのことが恐ろしかった。
意見の言えなくなる環境は決して
良い雰囲気とはいえないと思い、一策を講じた。
「キャロ、千晴さんからお言葉を頂いたよ。
残念ながら、懐紙は在庫切れだから、
お言葉をみんなに伝える様にとの事だけど」
突然、キャロリーヌが馬車を止めた。
そして、上空に矢を放った。矢は青空に向かって
上昇しながら、大きな音を奏でた。
音に気付いた先頭を走るヴェルは停止した。
「おーい、姉貴。何事だ」
「全軍に告ぐ。
千晴様よりアルフレート・フォン・エスターライヒが
啓示を賜った」
キャロリーヌはそれ以上のことを言わなかったが、
当たり前の様に全員が下馬して、片膝を地につけた。
剣豪やマリアンヌですら、同じ姿勢で不動の態を取っていた。
誠一を除く全員にとって、それがさも当然のような行動であった。
やばいやばい、誠一は内心焦っていた。
キャロリーヌに言付けて、後でみんなに適当な言葉を
伝えて貰う程度にしか考えていなかった。
クランの仲間はまだしも、今回、
採用した連中まで畏まっている。
これは誠一の理解の範疇を余裕で超えていた。
冗談じゃ済まない雰囲気に誠一はのまれそうだった。
「みんな、気を楽にして。
千晴さんは畏まった雰囲気が苦手だから。
今も天空より我らを見ているけど、
残念に感じると思うよ」
何よりもまずこの重苦しい空気を
何とかしようと言ってみたが、
効果は全くないどころか、
より緊張が走ったように誠一は感じた。
「千晴さんは、おっしゃった。
全員、無事に任務を完遂するようにと。
誰一人欠ける事無く再び王都の地を
踏むことを約束しなさいと」
当たり障りのないことを適当に並べた誠一だった。
しかしその効果はてきめんであった。
「うおおおおー千晴様、万歳!」
ヴェルが立ち上がりハルバートを天高くつき上げた。
それに他の仲間も続いた。
高々60名にも届かない軍であったが、
彼等の雄叫びは天を突き破らんとする程の迫力であった。
凄まじいまでの音量と熱量を誠一は感じていた。
彼らの瞳に理性が宿っているようには到底、見えなかった。
まるで狂信者が生まれる瞬間を見ているようであった。
誠一はメイスをゆっくりと掲げた。
「皆、静かに。千晴さんはお休みになられたいそうだ。
十分に熱意は伝わったとのことだそうだ。旅を再開しよう」
ヴェルは騎乗すると、ゆっくりと動き出した。それに後続も続いた。
千晴さんはどうやら眠りについたようだよ」
誠一は適当にキャロリーヌへ伝えた。
すぐさま、誠一が神のとの対話を終えたことが隊に伝わった。
隊の極度の緊張が一気に解けた様に誠一には感じられた。
誠一はざわつく傭兵や冒険者たちの会話に耳を傾けていた。
「噂は本当だったんだな」
「あり得ないだろ。こんな場所で啓示を受けるなんて。
どんだけ神に愛されているんだよ」
「俺、今回の出征に参加して良かった」
無論、否定的なことを言う者もいたが、
周囲の冷たい目線と聞こえよがしの罵詈雑言を受けて、
慌ててその意見を引っ込めていた。
恐ろしいまでの同調圧力が働いていた。
誠一はそのことが恐ろしかった。
意見の言えなくなる環境は決して
良い雰囲気とはいえないと思い、一策を講じた。
「キャロ、千晴さんからお言葉を頂いたよ。
残念ながら、懐紙は在庫切れだから、
お言葉をみんなに伝える様にとの事だけど」
突然、キャロリーヌが馬車を止めた。
そして、上空に矢を放った。矢は青空に向かって
上昇しながら、大きな音を奏でた。
音に気付いた先頭を走るヴェルは停止した。
「おーい、姉貴。何事だ」
「全軍に告ぐ。
千晴様よりアルフレート・フォン・エスターライヒが
啓示を賜った」
キャロリーヌはそれ以上のことを言わなかったが、
当たり前の様に全員が下馬して、片膝を地につけた。
剣豪やマリアンヌですら、同じ姿勢で不動の態を取っていた。
誠一を除く全員にとって、それがさも当然のような行動であった。
やばいやばい、誠一は内心焦っていた。
キャロリーヌに言付けて、後でみんなに適当な言葉を
伝えて貰う程度にしか考えていなかった。
クランの仲間はまだしも、今回、
採用した連中まで畏まっている。
これは誠一の理解の範疇を余裕で超えていた。
冗談じゃ済まない雰囲気に誠一はのまれそうだった。
「みんな、気を楽にして。
千晴さんは畏まった雰囲気が苦手だから。
今も天空より我らを見ているけど、
残念に感じると思うよ」
何よりもまずこの重苦しい空気を
何とかしようと言ってみたが、
効果は全くないどころか、
より緊張が走ったように誠一は感じた。
「千晴さんは、おっしゃった。
全員、無事に任務を完遂するようにと。
誰一人欠ける事無く再び王都の地を
踏むことを約束しなさいと」
当たり障りのないことを適当に並べた誠一だった。
しかしその効果はてきめんであった。
「うおおおおー千晴様、万歳!」
ヴェルが立ち上がりハルバートを天高くつき上げた。
それに他の仲間も続いた。
高々60名にも届かない軍であったが、
彼等の雄叫びは天を突き破らんとする程の迫力であった。
凄まじいまでの音量と熱量を誠一は感じていた。
彼らの瞳に理性が宿っているようには到底、見えなかった。
まるで狂信者が生まれる瞬間を見ているようであった。
誠一はメイスをゆっくりと掲げた。
「皆、静かに。千晴さんはお休みになられたいそうだ。
十分に熱意は伝わったとのことだそうだ。旅を再開しよう」
ヴェルは騎乗すると、ゆっくりと動き出した。それに後続も続いた。
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