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699. 気持ち4

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「黙っていては分りません。答えなさい」

決して大きな声ではなかったが、
身体中が締上げられるような凄まじい圧を
その声から誠一は感じていた。
これは司祭が人の過ちを諭すというような
生易しいことではなかった。
求められる言葉は贖罪であり、
罪の是非を問われていることはなく、
ただ言葉の後に断罪されることを
待つ身のようであった。

「事実です。ですがお聞きください」
誠一は精一杯の誠意をもって答えた。

「聞く耳持たぬ。
リシェーヌの復活は私が責任をもって対応しよう。
この場を去り、二度とリシェーヌの前に
顔をださないか、それとも」

エヴァニアは一度、言葉を切った。
無論、誠一はその後に続く言葉を言われずとも分かっていた。
無駄だと思いつつも抗うか、何もせずにこの場を去り、
享楽に身を委ね、生を全うするかの二択であった。

自分が自分らしく生きる。分相応の生を享受する。
ならばこの場を早々に退散すべきであった。
英雄の器でないことなどは、自分自身が
重々承知していた。元の世界にも戻りたかった。
7面メイスを握る右手から汗が滴り、メイスを濡らした。
メイスを流れ落ちる雫は、まるで涙のようであった。
 
誠一は答える代わりに自然と魔術を紡いでいた。

「身体強化、精神強化、スキル強化、
防御強化、攻撃強化、速度強化、、、etc.」
一人の魔術師によりこの世界に存在する
数多の補助魔術が己自身に向けて唱えられていた。

「釈明も無し。力を持って己の主張を押し通す気かい。
それでは禽獣と変わらないね。
そんな男にリシェーヌは預けられない」

誠一は応じずに魔術を唱え続けた。

「限界はここになし、狂い舞い踊れ、狂気に身を任せ、
赴くままにその力をふるえ。コールバーサーク」

身体能力を極限まで高めてもエヴァニアを
圧倒出来る気がしなかった。詠唱が止まった。
次の瞬間、誠一はその場に残影を残して、消えた。
誠一はエヴァニアの側面に移動していた。
そして、誠一は僧侶の複数の祝福の唄が聴こえた。

容赦なく横なぎに振られた7面メイスは
エヴァニアの腹部を強振したように見えた。

「老体に容赦がないねぇ。目的のためには手段を選ばず。
しかし実力差を見誤るようでは己の死を早めるだけだよ」
エヴァニアの右肘と右膝がメイスを上下から挟んでいた。

誠一はその状態から全力で一歩を踏み込み、一気に加速した。

「鋭き風よ、全てを斬り尽くし、世界を切り崩せぇー、エアチャージ」

誠一の周りを風が吹き上がり、空気を切り刻んだ。
エヴァニアは突進した誠一を軽くいなした。

「くそっ、エアパレット」

空気の礫が無数にエヴァニアとその周囲の地にぶつかった。
弾幕はエヴァニアの視界を一瞬遮った。

誠一は一瞬の間に活路を見出した。
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