701 / 830
691.ギルド4
しおりを挟む
「おい、これは何事だ」
入り口から凛とした声が広間に届くと、
淀んだ空気が一気に吹き飛んだ。
「おおっあれは、S級の莉々様だ」
「うおおおおお、伝説の美女だ」
「なんてラッキーな日だ」
一瞬で全ての冒険者たちの注目をマリアンヌが集めた。
ギルドマスターの演説は一瞬で忘却の彼方に
追いやられてしまった。
苦虫を噛み潰したような顔で入り口の上の方を
睨みつけるギルドマスターだった。
誠一は、ギルドマスターの視線の先が気になり
目を向けたが、そこには普通の天井であった。
S級の冒険者を真正面から睨みつける度胸は
ギルドマスターにはなかったようだった。
「おいおい、莉々の名は失った。
今はマリアンヌだ。今後、そこを違えるなよ」
冒険者たちは、マリアンヌの進む道を
潮が引くかのように開けた。
すたすたと誠一たちの方へ向かって歩くマリアンヌ。
ただ歩いているだけであったが、衆目の注目を集めいた。
「おい、アルフレート、それにヴェル。
いつまでかかっている。こんなこと、さっさと終わらせろ」
「何て声だ。ああっ、今晩のオカズ、ゲットだ」
「おおっ、マリアンヌ様のお説教だ。俺にも俺にも」
「なんてうらやましい小僧どもだ」
野次というより羨望の眼差しが2人に集中した。
一気に主役の座を取られたギルドマスターが舌打ちした。
「ふん、相変わらずいまいましい。おい、莉々。
いやすまん、マリアンヌ、他の仲間はどうした?」
「特に隠すことではないな。
莉々火と莉々絵はアルフレートの主宰するクランと戦って、死んだ。
私から神は去った。他のメンバーは拠点に戻っただろうな」
ギルドマスターが事の重大さに怯んだ。
「馬鹿野郎。
そんな重大なこと、こんなとこで滔々と語るんじゃねえよ。
ビビるだろうがよ。
それでおまえはアルフレートのクランに参加してるんだな」
蕩けるような笑みを浮かべて、マリアンヌが答えた。
その笑みに引き込まれる冒険者たち。
ギルドマスターは顔を大きく左右に振った。
不覚にもアルフレートとヴェルも引き込まれるそうになった。
誠一は限界突破の宝珠を無意識に右手で転がしていた。
ヴェルは炎の護符を力強く握りしめた。
「そうだな、そうなる。中々、面白いぞ。
ギルマス、おまえも参加するか?
その氷の雫の純度を見れば、お前クラスならば、分かるだろう」
ギルドマスターは心の底から高々と笑った。
「くはははは、そうだな、面白そうだ。
残念ながら、死線を潜り、ぞくぞくするような場に
好んで身を置くにはちと歳を取り過ぎた。
今の穏やかな生活は捨てがたい。
孫の顔も見たいしな」
それを日和ったと言う輩もいるだろうが、
マリアンヌは肯定するでも否定するでもなかった。
「そうだな、それがおまえの道程なら、それもよかろう。
もはや我より神は去ったが、しかと伝えておこう」
「そうだな、頼む。
それとアルフレート、一回目の指名依頼は完了だ。
さっさと、この堅物娘を連れて、帰れ。
ギルドの業務の邪魔だ」
ギルドマスターは踵を返して、執務室に戻ろうした。
「あまり盛って過去の冒険話をするなよ。
そこそこにしておけ。
その言葉を鵜呑みにするアホウがいるかもしれないからな」
振り返ることなく、右手を軽く上げてギルドマスターは応えた。
階段を踏む音と軋む音が聞えた。
入り口から凛とした声が広間に届くと、
淀んだ空気が一気に吹き飛んだ。
「おおっあれは、S級の莉々様だ」
「うおおおおお、伝説の美女だ」
「なんてラッキーな日だ」
一瞬で全ての冒険者たちの注目をマリアンヌが集めた。
ギルドマスターの演説は一瞬で忘却の彼方に
追いやられてしまった。
苦虫を噛み潰したような顔で入り口の上の方を
睨みつけるギルドマスターだった。
誠一は、ギルドマスターの視線の先が気になり
目を向けたが、そこには普通の天井であった。
S級の冒険者を真正面から睨みつける度胸は
ギルドマスターにはなかったようだった。
「おいおい、莉々の名は失った。
今はマリアンヌだ。今後、そこを違えるなよ」
冒険者たちは、マリアンヌの進む道を
潮が引くかのように開けた。
すたすたと誠一たちの方へ向かって歩くマリアンヌ。
ただ歩いているだけであったが、衆目の注目を集めいた。
「おい、アルフレート、それにヴェル。
いつまでかかっている。こんなこと、さっさと終わらせろ」
「何て声だ。ああっ、今晩のオカズ、ゲットだ」
「おおっ、マリアンヌ様のお説教だ。俺にも俺にも」
「なんてうらやましい小僧どもだ」
野次というより羨望の眼差しが2人に集中した。
一気に主役の座を取られたギルドマスターが舌打ちした。
「ふん、相変わらずいまいましい。おい、莉々。
いやすまん、マリアンヌ、他の仲間はどうした?」
「特に隠すことではないな。
莉々火と莉々絵はアルフレートの主宰するクランと戦って、死んだ。
私から神は去った。他のメンバーは拠点に戻っただろうな」
ギルドマスターが事の重大さに怯んだ。
「馬鹿野郎。
そんな重大なこと、こんなとこで滔々と語るんじゃねえよ。
ビビるだろうがよ。
それでおまえはアルフレートのクランに参加してるんだな」
蕩けるような笑みを浮かべて、マリアンヌが答えた。
その笑みに引き込まれる冒険者たち。
ギルドマスターは顔を大きく左右に振った。
不覚にもアルフレートとヴェルも引き込まれるそうになった。
誠一は限界突破の宝珠を無意識に右手で転がしていた。
ヴェルは炎の護符を力強く握りしめた。
「そうだな、そうなる。中々、面白いぞ。
ギルマス、おまえも参加するか?
その氷の雫の純度を見れば、お前クラスならば、分かるだろう」
ギルドマスターは心の底から高々と笑った。
「くはははは、そうだな、面白そうだ。
残念ながら、死線を潜り、ぞくぞくするような場に
好んで身を置くにはちと歳を取り過ぎた。
今の穏やかな生活は捨てがたい。
孫の顔も見たいしな」
それを日和ったと言う輩もいるだろうが、
マリアンヌは肯定するでも否定するでもなかった。
「そうだな、それがおまえの道程なら、それもよかろう。
もはや我より神は去ったが、しかと伝えておこう」
「そうだな、頼む。
それとアルフレート、一回目の指名依頼は完了だ。
さっさと、この堅物娘を連れて、帰れ。
ギルドの業務の邪魔だ」
ギルドマスターは踵を返して、執務室に戻ろうした。
「あまり盛って過去の冒険話をするなよ。
そこそこにしておけ。
その言葉を鵜呑みにするアホウがいるかもしれないからな」
振り返ることなく、右手を軽く上げてギルドマスターは応えた。
階段を踏む音と軋む音が聞えた。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
転生幼女の異世界冒険記〜自重?なにそれおいしいの?〜
MINAMI
ファンタジー
神の喧嘩に巻き込まれて死んでしまった
お詫びということで沢山の
チートをつけてもらってチートの塊になってしまう。
自重を知らない幼女は持ち前のハイスペックさで二度目の人生を謳歌する。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる