転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組！だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業？それとも社畜？誰か助けて

687. 閑話 とある休日の昼間の情景4

懐疑的であったが、千晴は『ヴェルトール王国戦記』に
ログインして、誠一のステータス画面を覗いた。

マシュー・マサイアス・ヴァーグメンデル・フォン・ビレッドス(偽名)・
鈴木　誠一(本名)・神々への反逆者・神隠しのアミュレット・
管理者との対話・廃嫡・SSR・絆・
婚約者1キャロリーヌ・押し掛けられた男etc
と相変わらず笑える称号と脈絡のないいくつもの
称号の羅列があった。
正直、あまりゲームに理解と興味がない千晴には
その称号が示す意味を理解していなかった。

その中で一つ、千晴の目をひいた称号があった。
『異世界人の誘い』⇒1名。

確かに少し前からこの称号はあったが、
1名という記載が千晴の記憶になかったような気がした。

「うーん、どうだったかな」

ぼんやりと見つめていた千晴の背筋に悪寒が走った。
千晴は、言い様の無い気味の悪さを感じた。

鈴木誠一、ファンタジーの世界において
この名前は改めて考えると極めて異質であった。
無論、鬼谷十四郎というような名前もあるが、
極めて古い時代の姓名であった。
アルフレート・フォン・エスターライヒ
というキャラクターはこの現世で鈴木誠一という名で
存在したと主張した。
しかし、その存在を知る者は誰もいない。
彼の語ることは、極めて信憑性が高かったが、
それを証明するものは一切見つける事ができなかった。
最終的に千晴はおそらく彼の主張する肉親まで
調査の手を伸ばす予感がしていた。
しかし、何となくそれは徒労に終わるだろうことを
千晴は薄々感じていた。

彼と同じことが島崎の身に起きたかもしれない。
ゲームの世界に囚われたのだろうか。

　千晴はその考えに首を振って否定した。
ありえない、そんなことがある筈がなかった。
そんな簡単にうつつの世の記憶を
改竄することなど出来る筈がなかった。
実は『ヴェルトール王国戦記』の世界が現実で、
この世界がゲームの世界なのかもしれない。
とりとめもない考えが千晴の心に浮かんでは
千晴に否定された。
次々に浮かんでくる奇妙な考えを否定しきれず、
一抹の不安を覚えた。
千晴は賭け布団に包まりながら、
『ヴェルトール王国戦記』の画面を覗いた。

千晴のパッドに映し出される『ヴェルトール王国戦記』の
画面では、誠一たちが楽しそう談笑していた。

生々しい笑い声にキャラクターたちの表情、
今の千晴とって、それらが気味悪く映った。
　
島崎のことや『異世界人の誘い』について
聞きたかったが、どうにも気が進まず、パッドの明かりを
消した。

部屋が暗闇に包まれ、千晴は目を閉じた。
いつの間にか千晴は眠りについてしまった。