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663.氷竜8
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炎はヴェルを覆い尽くしたが、
ヴェルは全く動く素振りを見せなかった。
氷竜は悠然と構えていた。
炎の中から声が聞えて来た。
「おーい、アル。早く何とか言えって。
炎の護符を持っているとはいえ中々、熱いんだけど」
ヴェルの言葉で我に返る誠一だった。
しかし、一体、ヴェルは何を待っているのだろうか
誠一には皆目見当が付かなかった。
「えっ、僕待ち?」
「当たり前だろ!
お前が言上を上げないと俺は突撃できん。
リーダーはお前だろ」
いや今のノリなら、突撃以外にないでしょ
と誠一は思ってしまった。
そして、突然、そんなことを振られても
誠一は、気の利いたセリフの一つ言える訳もなかった。
「まったくヴェルにも困ったもんだ。
だが、その実力は認めざるを得ないな。
ならば僕も今、此処で見せよう」
誠一は7面メイスを高々と
淀んだ雲に覆われた空へ向けて掲げた
「ヴェル、先陣は任せた。
鋭き風よ、全てを斬り尽くし、世界を切り崩せぇー
エアチャージ」
誠一の周囲の凍てついた空気が切り刻まれ、
空気の断層が可視化できるほどの風の刃が誠一を覆った。
「おう、任された。路は俺が切り開く。
いくぞおーアル!フレイムチャージ」
不死鳥を模る炎の塊が雪の世界を侵食しながら、氷竜に突撃した。
そしてその後を風の刃が凍てつく空気を切り刻みながら、進んだ。
その二人の姿を見ながら、シエンナがため息をついた。
「はあ、いずれ私もウオーターチャージとか
やらないといけなくなるのかな。むう、何かあまり効果なさげ」
氷竜の眼下に勢いよく迫る二人を見ても
何の素振りも見せなかった。
何百年も戦闘らいし戦闘をしていなかった。
人が羽虫を叩き殺すが如く偶に現れる挑戦者たちを
潰していた。
今回も大した脅威を感じなかった。
初撃を敢えて受けて、その冠絶した実力差を
見せつけて人間どもを恐れ慄かせるつもりであった。
「ヴェル、僕が先行する!
あの竜はどうやら余裕を見せている」
「おうっ!頼む。それの方が炎は荒ぶる。
先頭は任せた」
ヴェルと誠一は瞬時に入れ替わった。
誠一の生み出す風はヴェルの炎を
更に舞い上がらせて、大きくした。
「おいおい、剣豪殿。あの竜はアホウなのか」
マリアンヌは泰然と構える竜を眺めて呆れていた。
「さあ、あまりにも圧倒的な力ゆえに
羽虫と虎を同一に見てしまうこともあるのであろう。
まあ、それで痛い思いをするのは本人でござる」
剣豪はにやにやと竜を眺めて笑っていた。
氷竜にとって、難敵と言える様な者たちと
刃を交えたのは、数百年も前のことであった。
それ以来、挑む者たちを適当にあしらって
追い返していた。
その結果、挑戦者たちを死に至らしめることもあった。
しかし氷竜は、そこに何の感情も沸くことはなかった。
先程感じた怒りの感情など、
久々過ぎて氷竜自身が戸惑ってしまったほどであった。
小さい竜巻と炎が向かってきたが、
氷竜は左程の脅威に感じることはなかった。
誠一は氷竜の右前足にありったけの風の刃をぶつけた。
竜の鱗が削り落ちる音がした。
それはまるで鉄をやすりで削る様な音であった。
氷竜の足元の雪が竜の血で染まり始めた。
「次は俺だー」
ヴェルの炎が血の噴き出す右前足に直撃した。
竜鱗よりむき出しとなった肉が焼かれた。
ヴェルは全く動く素振りを見せなかった。
氷竜は悠然と構えていた。
炎の中から声が聞えて来た。
「おーい、アル。早く何とか言えって。
炎の護符を持っているとはいえ中々、熱いんだけど」
ヴェルの言葉で我に返る誠一だった。
しかし、一体、ヴェルは何を待っているのだろうか
誠一には皆目見当が付かなかった。
「えっ、僕待ち?」
「当たり前だろ!
お前が言上を上げないと俺は突撃できん。
リーダーはお前だろ」
いや今のノリなら、突撃以外にないでしょ
と誠一は思ってしまった。
そして、突然、そんなことを振られても
誠一は、気の利いたセリフの一つ言える訳もなかった。
「まったくヴェルにも困ったもんだ。
だが、その実力は認めざるを得ないな。
ならば僕も今、此処で見せよう」
誠一は7面メイスを高々と
淀んだ雲に覆われた空へ向けて掲げた
「ヴェル、先陣は任せた。
鋭き風よ、全てを斬り尽くし、世界を切り崩せぇー
エアチャージ」
誠一の周囲の凍てついた空気が切り刻まれ、
空気の断層が可視化できるほどの風の刃が誠一を覆った。
「おう、任された。路は俺が切り開く。
いくぞおーアル!フレイムチャージ」
不死鳥を模る炎の塊が雪の世界を侵食しながら、氷竜に突撃した。
そしてその後を風の刃が凍てつく空気を切り刻みながら、進んだ。
その二人の姿を見ながら、シエンナがため息をついた。
「はあ、いずれ私もウオーターチャージとか
やらないといけなくなるのかな。むう、何かあまり効果なさげ」
氷竜の眼下に勢いよく迫る二人を見ても
何の素振りも見せなかった。
何百年も戦闘らいし戦闘をしていなかった。
人が羽虫を叩き殺すが如く偶に現れる挑戦者たちを
潰していた。
今回も大した脅威を感じなかった。
初撃を敢えて受けて、その冠絶した実力差を
見せつけて人間どもを恐れ慄かせるつもりであった。
「ヴェル、僕が先行する!
あの竜はどうやら余裕を見せている」
「おうっ!頼む。それの方が炎は荒ぶる。
先頭は任せた」
ヴェルと誠一は瞬時に入れ替わった。
誠一の生み出す風はヴェルの炎を
更に舞い上がらせて、大きくした。
「おいおい、剣豪殿。あの竜はアホウなのか」
マリアンヌは泰然と構える竜を眺めて呆れていた。
「さあ、あまりにも圧倒的な力ゆえに
羽虫と虎を同一に見てしまうこともあるのであろう。
まあ、それで痛い思いをするのは本人でござる」
剣豪はにやにやと竜を眺めて笑っていた。
氷竜にとって、難敵と言える様な者たちと
刃を交えたのは、数百年も前のことであった。
それ以来、挑む者たちを適当にあしらって
追い返していた。
その結果、挑戦者たちを死に至らしめることもあった。
しかし氷竜は、そこに何の感情も沸くことはなかった。
先程感じた怒りの感情など、
久々過ぎて氷竜自身が戸惑ってしまったほどであった。
小さい竜巻と炎が向かってきたが、
氷竜は左程の脅威に感じることはなかった。
誠一は氷竜の右前足にありったけの風の刃をぶつけた。
竜の鱗が削り落ちる音がした。
それはまるで鉄をやすりで削る様な音であった。
氷竜の足元の雪が竜の血で染まり始めた。
「次は俺だー」
ヴェルの炎が血の噴き出す右前足に直撃した。
竜鱗よりむき出しとなった肉が焼かれた。
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