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639.神堕ちの儀15
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「ったく前回よりかなり小ぶりなのに一撃で倒せないか」
ヴェルを敵と見なした3匹の水蛇がヴェルに襲いかかった。
「おらっ、3段突きだっ」
ヴェルの槍が3度、同じ軌跡を描いた。
3匹の水蛇に怪我を負わせたが、倒しきるに至らなかった。
ヴェルに咬みつこうと、ヴェルを巻き上げようと
水蛇は地を這って動いた。
しかしその動きは全くヴェルを捉えることができなかった。
速さに圧倒的な違いがあった。
ヴェルは槍で水蛇の頭を潰すと、魔石を素早く入手して、
アルとシエンナに触れさせた。
儀式は既に3時間を超えていた。
魔法陣の輝きが次第に鈍くなり始めて、最後には消えた。
「はああっ終わったのかしら。
まったく突然のことで焦ったわ。
それにしても一体、何の魔術儀式だったのかしら」
シエンナは大の字で地面に転がっていた。
「さあな、でもまあ、神堕ちがどうこうって言ってたから、
神様に危機が迫ってたんじゃないか」
ヴェルはふらふらしながら、服を着始めた。
「そうね、アルが起きたら、
その辺りを詳しく聞きましょうか」
キャロリーヌが地面に倒れる誠一に外套をかけた。
サリナとアミラも戻ってくると、地面に腰を下ろした。
「これだけ倒したら暫くは寄って来ないと思う」
サリナも体力の限界のようで、力尽きた様に座り込んで
顔を伏せていた。
「ひとまずみんな、休みなさい。
私が警戒しておくからね」
キャロリーヌの一言に全員が眠り始めるということで
賛成の意を示した。
『神堕ちの儀』が始まった同時刻、
ソルテールで誠一たちを待つ剣豪とロジェは
妓館で酒を呑んでいた。
突然、ロジェが叫んだ。
「なんだ一体何が起きた」
突然、湧き上がる活力にロジェは狼狽えた。
『絆の仲間』の称号が発現して、ロジェの力が増していた。
「ふーむ、これは一緒について行けば良かった。
面白い見物がはじまったでござるよ」
剣豪はコップになみなみと注がれている酒を呑み干すと
誠一たちの向かった雪山の方に目を向けた。
「そんな場合じゃないだろ、鬼谷殿」
「そうは言ってもここからでは何もできぬ。
落ち着きなされ、ロジェ殿。今、出来る事はない。
酒を呑み、女を抱いて湧き上がる活力を発散するでござる。
その位しかやれることはない」
椅子から立ち上がったロジェは再び席につくと、
剣豪と同様に酒を呑み干した。
「くそっ仕方ない。
アルフレート君の神にでも無事を祈るしかないな」
薄暗い天井を見上げるロジェであった。
『神堕ちの儀』が始まった同時刻、
地方都市で皇帝と称したダンブルに与した反乱軍の鎮圧に
ファブリッツィオとラムデールは、向かっていた。
2人は、突然、湧き上がってきた力に当惑した。
「ラムデール、これは一体」
敵兵を前にファブリッツィオは突然のこの活力に
集中力を乱された。
目の前の敵兵はそれを見逃すほどの愚か者ではなかった。
「ストラッツェール侯爵家の者ヨ。その首、獲った」
長槍の鋭い突きがファブリッツィオに襲いかかった。
槍の穂先を躱し、柄を掴むとそのまま振り回して
敵兵を馬上からファブリッツィオは振り落とした。
「黙れ雑兵。今はそれどころではないっ」
ファブリッツィオの周りでは喝采と雄叫びが上がった。
ともすると押され気味で士気が下がり気味だった軍は
このファブリッツィオの蛮勇で一気に盛り返した。
「ファブリッツィオ、今はどうにも確認しようがない。
それより『絆の仲間』によって湧き上がる力で
この劣勢を一気に覆そう。
アルフレートが戻って来た時、じっくりと話は聞かせて貰おう」
「わかった。そうだな。此処は戦場だったな」
ファブリッツィオは剣を大きく空に向かって掲げて、
雄叫びをあげた。
「行くぞ、俺に続けぇ」
ストラッツェール家の兵はその雄叫びに唱和すると、
反乱軍を押し返し始めた。
ヴェルを敵と見なした3匹の水蛇がヴェルに襲いかかった。
「おらっ、3段突きだっ」
ヴェルの槍が3度、同じ軌跡を描いた。
3匹の水蛇に怪我を負わせたが、倒しきるに至らなかった。
ヴェルに咬みつこうと、ヴェルを巻き上げようと
水蛇は地を這って動いた。
しかしその動きは全くヴェルを捉えることができなかった。
速さに圧倒的な違いがあった。
ヴェルは槍で水蛇の頭を潰すと、魔石を素早く入手して、
アルとシエンナに触れさせた。
儀式は既に3時間を超えていた。
魔法陣の輝きが次第に鈍くなり始めて、最後には消えた。
「はああっ終わったのかしら。
まったく突然のことで焦ったわ。
それにしても一体、何の魔術儀式だったのかしら」
シエンナは大の字で地面に転がっていた。
「さあな、でもまあ、神堕ちがどうこうって言ってたから、
神様に危機が迫ってたんじゃないか」
ヴェルはふらふらしながら、服を着始めた。
「そうね、アルが起きたら、
その辺りを詳しく聞きましょうか」
キャロリーヌが地面に倒れる誠一に外套をかけた。
サリナとアミラも戻ってくると、地面に腰を下ろした。
「これだけ倒したら暫くは寄って来ないと思う」
サリナも体力の限界のようで、力尽きた様に座り込んで
顔を伏せていた。
「ひとまずみんな、休みなさい。
私が警戒しておくからね」
キャロリーヌの一言に全員が眠り始めるということで
賛成の意を示した。
『神堕ちの儀』が始まった同時刻、
ソルテールで誠一たちを待つ剣豪とロジェは
妓館で酒を呑んでいた。
突然、ロジェが叫んだ。
「なんだ一体何が起きた」
突然、湧き上がる活力にロジェは狼狽えた。
『絆の仲間』の称号が発現して、ロジェの力が増していた。
「ふーむ、これは一緒について行けば良かった。
面白い見物がはじまったでござるよ」
剣豪はコップになみなみと注がれている酒を呑み干すと
誠一たちの向かった雪山の方に目を向けた。
「そんな場合じゃないだろ、鬼谷殿」
「そうは言ってもここからでは何もできぬ。
落ち着きなされ、ロジェ殿。今、出来る事はない。
酒を呑み、女を抱いて湧き上がる活力を発散するでござる。
その位しかやれることはない」
椅子から立ち上がったロジェは再び席につくと、
剣豪と同様に酒を呑み干した。
「くそっ仕方ない。
アルフレート君の神にでも無事を祈るしかないな」
薄暗い天井を見上げるロジェであった。
『神堕ちの儀』が始まった同時刻、
地方都市で皇帝と称したダンブルに与した反乱軍の鎮圧に
ファブリッツィオとラムデールは、向かっていた。
2人は、突然、湧き上がってきた力に当惑した。
「ラムデール、これは一体」
敵兵を前にファブリッツィオは突然のこの活力に
集中力を乱された。
目の前の敵兵はそれを見逃すほどの愚か者ではなかった。
「ストラッツェール侯爵家の者ヨ。その首、獲った」
長槍の鋭い突きがファブリッツィオに襲いかかった。
槍の穂先を躱し、柄を掴むとそのまま振り回して
敵兵を馬上からファブリッツィオは振り落とした。
「黙れ雑兵。今はそれどころではないっ」
ファブリッツィオの周りでは喝采と雄叫びが上がった。
ともすると押され気味で士気が下がり気味だった軍は
このファブリッツィオの蛮勇で一気に盛り返した。
「ファブリッツィオ、今はどうにも確認しようがない。
それより『絆の仲間』によって湧き上がる力で
この劣勢を一気に覆そう。
アルフレートが戻って来た時、じっくりと話は聞かせて貰おう」
「わかった。そうだな。此処は戦場だったな」
ファブリッツィオは剣を大きく空に向かって掲げて、
雄叫びをあげた。
「行くぞ、俺に続けぇ」
ストラッツェール家の兵はその雄叫びに唱和すると、
反乱軍を押し返し始めた。
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