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631.神堕ちの儀7

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「ふう、最初の難関ね。此処を越えて狩りをする?
それとも引き返して明日、また、洞窟に入る?」
シエンナが誠一に判断を促した。

巨大な湖畔を誠一は見つめた。
対岸に先を進む洞窟がうっすらと見えていた。

「進もう。
そのために魔力と体力の回復液や魔石は
ふんだんに準備してからね。
シエンナの先頭で湖面を凍らせながら進む」
判断を促したシエンナであったが、
その答えが当たり前のように湖に足を踏み入れていた。

「まっ、これだけ冷たいし。
思ったより魔力は必要ないかもね。じゃ、進むよ」

シエンナは杖を湖に向けて魔術を唱えた。
水が氷るとシエンナはそこを進んだ。
その後にサリナ、ヴェル、アミラ、
そして弓に矢を番えたキャロリーヌが続いた。
少し間をおき、後方を確認すると誠一もその列に続いた。

ざっぱーん、湖面が激しく揺れた。
水の中で蛇が身体をうねらせて、誠一たちに近づいていた。
対岸まではまだまだ、距離があった。
先頭のシエンナは歩みも止めず、見向きもしなかった。

「まったく厄介ね。アル、腰をしっかりと掴んで。
ちょっと、場所を弁えてよ」
誠一が腰というより腹の部分に腕を回して支えるが、
キャロリーヌが変な声を上げた。誠一は慌てて、腰に
手を回して、支え直した。

キャロリーヌの声が響くと分かりやすい程に一瞬、
シエンナの身体が跳ね上がった。
そして、先頭のシエンナの歩みは遅くなった。

「キャロ、支えてるから、さっさと矢を放って」
誠一はシエンナに聞える様に大声で叫んだ。

「わかっているわよ。
はああ、我が矢は稲妻如く。飛電弓」
キャロリーヌの放った矢は激しく帯電していた。
矢は、蛇の腹部に突き刺さった。
無論、致命傷にはならなかったが、
蛇は一度、半身を大きく跳ね上げ、
そのまま倒れて、湖面に叩きつけられた。

「気絶したみたいよ、シエンナ、急いで」
キャロリーヌが大声でシエンナに伝えた。

「よっし!俺が止めを刺すぞ。
うおおおっ、俺も使える様になったぞ!中級魔術。
全てを焼切れ、ファイアスライサー」
ヴェルはぷかぷかと浮かぶ巨大な水蛇に
向かってファイアスライサーを放った。

「いや、ヴェル。待ってって!」
誠一の叫びは既に遅かった。

「ヴェル、もっとファイアスライサーを放って。
くそおおっ踊れ、風の刃!エアスライサー」
誠一も腕を振り上げて、魔術を放った。

水蛇は身体を震わせた。気絶から復活したようであった。
誠一とヴェルの攻撃を受けて、それなりの傷を負ったが、
湖水に深く潜った。シエンナは立ち止まった。

サリナが手で水に触れて揺れを感じていた。
「来るよ、真下に」

「アル、変わって。水ヨ水ヨ。
ここに展開セヨ。ウォーターシールド」

「了解。氷の柱よ。ここに樹立せよ」
シエンナは湖面にシールドを展開した。
大量の水により強力な防御陣が展開された。

誠一はシエンナの樹立するような巨大な氷塔ではなかったが、
それなりに厚い氷の壁を足元に展開した。
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