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625.神堕ちの儀1

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「寒い、寒いっ、めっちゃ寒い。寒すぎる」
ヴェルが両手を抱えながら、
山小屋に設置されている暖炉の前で
ガタガタと震えていた。
その隣で同様にアミラが震えていた。

「あーもう、うるさい。
吹雪なんだから寒いに決まっているでしょ」
寒さの中でもつっこみを怠らないシエンナだった。

山小屋には窓はなく、外の状況を確認することは
出来なかったが、外から聞こえる物音が吹雪の激しさを
誠一たちに伝えていた。
シエンナは粗末な山小屋が倒壊しないように
補強の魔術を施しているようだった。
どうやら防御魔術を展開しているようだった。
キャロリーヌは重ね着で丸くなっていた。
全く動きがないが、時節、薪をくべる動作で
起きていることは誠一にも分かった。
旅が始まっても塞ぎ込んでいて、
最低限の会話しかしないサリナ。

吹雪が去るまで誠一たちはこの小屋に拘束されそうであった。

 日を遡る事、5日前、誠一、キャロリーヌ、ヴェル、
シエンナ、アミラ、サリナは霊峰氷山へ向けて出発した。
目的は霊峰氷山の最深部でなく、
冒険者ギルドで受けた依頼のためであった。
氷雪系の魔石を50個の納品。
それがギルドで受けた依頼の内容であった。

 ラッセルの鍛冶屋を出て、翌日に剣豪が課したミッションであった。
霊峰氷山を攻略する上で必要なことと思いの外、
剣豪が厳しい口調で伝えた。
誠一はこういう時の剣豪は信用に足ると思っており、
雪の対策と準備を済ますと、急ぎ出発した。
氷雪系の魔物がよく出没する地域、それは霊峰氷山に
連なる山々であった。
そのうちの一つ中級の洞窟である『氷結の洞窟』で
魔物を狩る計画であった。
山の麓の村を出て、暫くすると雪が路に目立ち始めて、
路の斜度が少しづつ上がりはじめ、吐き出す息が白くなり始めた。
そして、白い粉が舞い落ち始めると、
そこから山の天候が崩れるのは早かった。

誠一たちは、強烈な吹雪に見舞われた。

麓の村で周辺の地図や情報を入手していたサリナに
誘導されて、吹雪の中で何とか山小屋に退避した。

「アル、これからどうする?」
ヴェルの声は普段より大きかった。

「期日の指定はないから、取り敢えず吹雪が
止むの待つしかないけど」
外の物音と同様に誠一の声も大きくなった。
それほどに外から聞こえる音は五月蠅かった。

「だけど、吹雪が長引いたら多分、
一回の遠征じゃ集めきれないだろ。
また、出直しになるぜ。そうしたら足が出るぞ」
ヴェルの声は普段より単に声が大きいだけだったが、
閉塞された状況、外の音が普段より誠一たちの気持ちから
余裕を奪っていたのだろう。珍しくシエンナが声を荒げた。

「じゃあ、どうするのよ。
ヴェル、少しはあなたが建設的な意見をだしたらどうなの?」

「いや俺はだな、まず、問題提起をしたんだよ。
そうしないと話が進まないだろ」

2人の言い争いが山小屋の雰囲気を急速に悪くした。
「二人ともそこまで!」
誠一が2人を鋭い声で制した。
二人だけでなく他のメンバーも誠一に注目した。
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