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617.鍛冶師20
しおりを挟む「俺はこれだな」
ロジェはフランベルジュを見つめていた。
「このショーテルって奴も面白そうだが、
俺にはこれを扱う才能はないな。
ならば、今の剣技で有効に敵を傷づけられる
フランベルジュにするかな」
波打つ刃渡りは、炎のようであり、
その刃で肉をえぐられた時のことを考えると、
誠一はぞっとした。
形状の複雑さからその刀身はロジェの持つ
ツヴァイヘンダーより脆そうであった。
重甲冑のような板金鎧相手より
軽装の相手や魔物相手により効果があるのだろうと
誠一は思った。
「ラッセルさん、魔石を10個ほど置いていきます。
すみませんが、短剣の柄に埋め込んで貰ませんか?」
「アルフレート様、短剣は投擲もしくは刺突に使いますか?」
ラッセルの問いに誠一はどうすべきか迷った。
身体を休めているサリナ用のため、どういう振り分けにすべきか迷った。
「そうね。8本を投擲用で2本を刺突用にして。
刺突用には補助系と雷系の魔術を込めるわ。
相性の良い魔石をその二本に埋め込んで」
思案に耽る誠一の代わりにキャロリーヌが即応した。
ラッセルが一応、誠一の方へ目を向けた。
特に定見のなかった誠一は思案を止めて、
キャロリーヌの意見に賛同した。
「ラッセルさん、キャロの言う通りに作ってください」
ラッセルとカーリーはご機嫌の様相だった。
心なしか娘のラミをにっこりしていた。
「ラッラセルさん、どうしました?」
まるで笑いが止まらないという感じのラッセルの笑みだった。
その笑みは見る者に不信感を与えた。無論、誠一もその一人だった。
「はっこれはアルフレート様、失礼しました。
ついつい、久々の大口案件で日銭を稼ぐことに
頭を悩ませずに鍛冶に打ち込めると思うと自然、
笑みが零れてしまいまして」
いやいや、何か悪さが成功した様な嫌な笑いでしたよ
と誠一は心の中で突っ込んだ。
無論、ヴェルも同じように感じた一人だった。
「いやいや、ラッセルさん。その笑みは邪悪過ぎるぜ。
何か相場の分からない俺らからぼったくったのかと思っちまったよ」
「鍛冶に集中させて頂きます。一か月後にお立ち寄りください」
ラッセルが態度を改めて、頭を下げた。
「ラッセル、お金の話もしないと。
全額後払いじゃどうにも路頭に迷う」
カーリーが誠一たちに聞えないようと
小声でラッセルに耳打ちした。
ラッセルとカーリーにとっては小声のようだったが、
誠一たちには丸聞えだった。
普段、鍛冶場では鋼を鍛えるために非常に大きい音が
彼等の周りで響き渡っている。
自然、普段の声も大きくなり、
耳も少し聞こえにくくなっているのだろう。
誠一は苦笑した。
「では総額の50%の支払いでどうでしょうか?」
へへッという感じでラッセルとカーリーが頭を下げた。
金の力は偉大だと誠一は実感した。
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