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605.鍛冶師8
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「やれやれ、結婚前も後もあんな感じなんです。
改めて、紹介します」
ラッセルは工房に誠一たちを招き入れた。
工房には誠一たちが以前、見た武器以外にも
数多くの奇怪な武具が所狭しと置いてあった。
のこぎりのような形状の刃を両側に持ち、
傷口を広げ、死に誘うフランベルジェ。
刃の逆側に櫛のような形状を持たせて、
剣を破壊するソード・ブレイカー。
S字に湾曲した刀身が盾を避けて、
敵に襲いかかるショーテル。
手甲に取り蹴られた短い4本の鈎爪が
刺突、引っ掛けて敵を傷づける鉄鋼鈎。
「おい、アル。何か妙なもんが増えてね?
これで生計が成り立つんかよ。謎過ぎるぞ」
今日は随分とラッセルを苦笑させる日だなと
思いながら誠一もヴェルと同様の疑問を持っていた。
「まあ、それはどうでもいいや。
ラッセルさんが飢死にしてなければ、
何とかなっていることだしな。
それよりアル、そろそろ、話しておけよ。ぐえっ」
変な声を出して、ヴェルがその場に蹲った。
ヴェルの首根っこを引っ掴んでアミラの方へキャロリーヌが放り投げた。
「申し訳ございません、先ほどから弟が
失礼な事ばかり言ってしまって」
キャロリーヌは両腕で胸を寄せるような仕草で頭を下げた。
少しラッセルの鼻息が荒くなった。
「お気になさらずに、お姉さん。
それよりもアルフレート様、勇者リシェーヌ様に
ついてお話しして頂けるんですよね」
お互いに居住まいを正し、誠一はラッセルに
リシェーヌのことを話した。
真実は明かせないためにヴェルたちへ
説明したことと同じ話をした。
誠一が話終えた後、静かな間が工房を支配した。
「そうですか」
沈黙を破りラッセルは一言呟くと、
ルメディア教の方式で祈った。
祈り終えたラッセルは真摯な態度で誠一に伝えた。
「わたくしの力ではエリクサーを
入手することはできませんし、
大した力になれません。
精々、神の恩寵により創り出した武器を
提供するくらいです」
「いえ、それで十分です。
武具の調整とここにある武具を
購入させて頂ければ十分な助けになります」
2人の間で新たな約束が交わされた。
「よっし!話は終わったな。
ラッセルさん、俺とアルの武器は良いとして、
他の仲間の武器を新しく選ぶか更新したい。
それとまた、腕試しをするか?」
ヴェルの勢いは少し重苦しかった工房の雰囲気を
吹き飛ばした。
「そうですね、どの程度、成長したか見てみましょうか?
では庭に向かいましょう。私と妻がお相手しましょう」
庭に出た誠一たちは感嘆の声を上げた。
ぼろ小屋からは想像もつかない程、良く整地されていた。
そう言えばと誠一は思った。
建物の外観は、ぼろだったが、
屋内はそれを感じさせなかった。
手入れのできる所はそれなりに自分たちで
手をかけているのだろうと誠一は推察した。
改めて、紹介します」
ラッセルは工房に誠一たちを招き入れた。
工房には誠一たちが以前、見た武器以外にも
数多くの奇怪な武具が所狭しと置いてあった。
のこぎりのような形状の刃を両側に持ち、
傷口を広げ、死に誘うフランベルジェ。
刃の逆側に櫛のような形状を持たせて、
剣を破壊するソード・ブレイカー。
S字に湾曲した刀身が盾を避けて、
敵に襲いかかるショーテル。
手甲に取り蹴られた短い4本の鈎爪が
刺突、引っ掛けて敵を傷づける鉄鋼鈎。
「おい、アル。何か妙なもんが増えてね?
これで生計が成り立つんかよ。謎過ぎるぞ」
今日は随分とラッセルを苦笑させる日だなと
思いながら誠一もヴェルと同様の疑問を持っていた。
「まあ、それはどうでもいいや。
ラッセルさんが飢死にしてなければ、
何とかなっていることだしな。
それよりアル、そろそろ、話しておけよ。ぐえっ」
変な声を出して、ヴェルがその場に蹲った。
ヴェルの首根っこを引っ掴んでアミラの方へキャロリーヌが放り投げた。
「申し訳ございません、先ほどから弟が
失礼な事ばかり言ってしまって」
キャロリーヌは両腕で胸を寄せるような仕草で頭を下げた。
少しラッセルの鼻息が荒くなった。
「お気になさらずに、お姉さん。
それよりもアルフレート様、勇者リシェーヌ様に
ついてお話しして頂けるんですよね」
お互いに居住まいを正し、誠一はラッセルに
リシェーヌのことを話した。
真実は明かせないためにヴェルたちへ
説明したことと同じ話をした。
誠一が話終えた後、静かな間が工房を支配した。
「そうですか」
沈黙を破りラッセルは一言呟くと、
ルメディア教の方式で祈った。
祈り終えたラッセルは真摯な態度で誠一に伝えた。
「わたくしの力ではエリクサーを
入手することはできませんし、
大した力になれません。
精々、神の恩寵により創り出した武器を
提供するくらいです」
「いえ、それで十分です。
武具の調整とここにある武具を
購入させて頂ければ十分な助けになります」
2人の間で新たな約束が交わされた。
「よっし!話は終わったな。
ラッセルさん、俺とアルの武器は良いとして、
他の仲間の武器を新しく選ぶか更新したい。
それとまた、腕試しをするか?」
ヴェルの勢いは少し重苦しかった工房の雰囲気を
吹き飛ばした。
「そうですね、どの程度、成長したか見てみましょうか?
では庭に向かいましょう。私と妻がお相手しましょう」
庭に出た誠一たちは感嘆の声を上げた。
ぼろ小屋からは想像もつかない程、良く整地されていた。
そう言えばと誠一は思った。
建物の外観は、ぼろだったが、
屋内はそれを感じさせなかった。
手入れのできる所はそれなりに自分たちで
手をかけているのだろうと誠一は推察した。
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