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589.狩猟祭14

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咄嗟のことであったが、誠一は何とかそれを躱した。
しかしサリナは短刀を放り投げて、そのまま誠一を抱きしめた。
誠一はそのまま凄まじい膂力でサリナに締上げられた。
抜け出そうと藻掻くが締上げは強くなり、
誠一の背中からみしみしと軋む音がした。

「まったく敵に塩を送るとは、
どんだけお人好しパーティなんでしょうね」
莉々はかけられた首飾りを外すと、再びサリナにかけた。

「ぜえぜえ、はあはあ」
その場に片膝を付く誠一だった。

「アルフレート、すまない。すまなかった」
取り乱しているサリナを誠一は苦しかったが
落ち着かせようとした。
少し誠一の呼吸が落ち着いてきた。

傍にはだらだらと血を流しながら、
ガタガタと身体を震わせている莉々が立っていた。
全身に巡る苦痛で最早、言葉を発する事が出来ないのだろう。
莉々は押し黙ったままだった。誠一は青空を睨みつけた。

「はあはあ、プレーヤーは狡猾だ。サリナ、気を付けて」

剣豪は目を細めてこれを注視していた。
「ふむ、やはり耐え忍ぶだけでは発現せぬな」

剣豪の首を飛ばすかの様にロジェが
ツヴァインヘンダーを構えていた。

剣豪の後方から正確に心臓を打ち抜くように
キャロリーヌが矢を番えていた。

剣豪の脳天を叩き潰すかのように上空に
巨大な氷柱がシエンナの詠唱によって現れていた。

剣豪の全身を燃やし尽くような巨大な炎が
ヴェルの詠唱によって現れていた。

剣豪の脊椎を拉げさせるかの様にアミラが
拳を握って、低い姿勢で構えた。

おどけたように剣豪は笑った。
「これはまっこと一体なんのつもりでござる?」

「それはこちらの台詞です。先生、一体何を企んでいますか?」
皆を代表してシエンナが尋ねた。

「いやいや何も考えてござらぬ。
流れに任せて知りたいことを知るのみでござる」

剣豪を囲む全員が全員胡散臭げな眼を向けていた。
そんな彼らの後ろからすすっと莉々の方へ向かう影が一つ。

苦痛に耐える莉々に向かって一振りの短剣を
莉々奈が突き刺そうとした。そこへ誠一が割って入った。
7面メイスが短剣を持つ莉々奈の腕を殴打した。
短剣を落として、莉々奈はその場を離れた。
「ちっ莉々、勘弁してくれよな。
おまえくらいだよ、神罰に耐えられるのは。
私たちには無理だ。女神様に従うしかないんだよ。
従えないなら、頼むから死んでくれ」

莉々は血を噴き出した。
「ごふっ。莉々奈、ごぼごぼ、すまない。節は曲げられない」

「啓示が下った。莉々矢、莉々視を連れてこの場を逃れるよ」
莉々奈は、自らの影に溶け込むようにその場から消えた。

「ちょっと、莉々絵はどうするのよ?」
その言葉に応えるように莉々奈が莉々絵の影より
現れるとそのまま、莉々絵の首筋を掻っ切った。

「3人か。そう遠くまでは飛べそうにないな。
ふふう、女神様のお言葉によりここは退かせて貰う。
影より影を渡り歩くモノ。
それが真の暗殺の神髄、私たちは退かせて貰うわ」

3人は自らの影に溶ける様にその場から消えた。
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