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576.狩猟祭1
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誠一たちは、ソルテールに向かって馬車で移動していた。
ロジェと誠一が馬に乗り先行し、サリナとキャロリーヌが
馬車の後方を馬に乗って、走った。
馬車を御するのは、ヴェルでその隣にちょこんと
アミラが座っていた。
剣豪は荷車ですやすやと寝息を立てていた。
シエンナは荷車で霊峰氷山に関する書物を読んでいた。
誠一の耳にヴェルとアミラの会話が時節、耳に入って来た。
「前回の旅では、大蜂の巣を落としたり、
俺がフレイムチャージの技を閃いたりと色々とあったな」
誠一は後ろを振り向かずともアミラがキラキラした目で
ヴェルの話に耳を傾けていることが容易に想像できた。
そして、その後に続く突っ込みというより厳しい指摘が飛ぶことも。
「あの技をこの旅路で閃いたですか!
ヴェルが14歳の頃です。凄いです」
ヴェルは鼻息荒く、意気揚々にその時のことを話していた。
アミラが興奮気味に合いの手をいれていた。
盛り上がる二人に冷や水をかけるような冷たい声が
荷車から聞こえてきた。
「誠一君、気のせいか少し気温が下がったかな」
誠一の隣で身体を少し震わせたロジェだった。
「ヴェル、盛り上がっているところ悪いけど、
その話、少し訂正させて貰うわよ。
それとアミラ、ヴェルの言うことだってことで
無条件に受け入れない」
アミラが不満気に口をとがらせた。
「こんなことでヴェルが嘘を言ってなんの得があるですか?」
「それはもちろんあるわよ。あなたの気を、もがもが」
ヴェルが突然、手綱をアミラに預けた。
そして、荷車に移ると、シエンナの口を塞いだ。
「はははっ、そうそうアミラ。
フレイムチャージは俺とアルが旅の休憩中に
始めて放ったんだよ。
そしたらさ、おまえは会ったことがないけど、
リシェーヌが俺の技に駄目出ししまくって、
フレイムランサーを放ったんだ。あいつは天才だよ」
アミラはキョトンとしていたが、
目がシエンナとヴェルを睨みつけていた。
彼女の握る手綱がめきょめきょと悲鳴をあげている様に
潰れていた。
そして、それが二頭の馬にも伝わったのか、一声、嘶いた。
「そんな話はどうでもいいです。
それよりヴェル、何時までシエンナを抱きしめているです」
アミラの舌がシュルシュルと音を鳴らしていた。
瞳孔がすっーと細くなりヴェルとシエンナを捉えていた。
不穏な雰囲気と無視できぬ話が聞えた誠一は
後ろを振り向いた。
ヴェルはシエンナの側にピタリと座って
口を塞いでいたただけであった。
口から手を離したヴェルとシエンナが顔を見合わせていた。
誠一は少し笑ってしまった。ヴェルは苦労しそうだな。
一瞬、振り返ったアミラと目が合ってしまった。
慌てて前方に目を向ける誠一であった。
隣でロジェがぼやいていた。
「少し緩み過ぎだな。流石にまっすぐな道が続くが、
馬を御しているにしては注意力散漫だな」
誠一が頷くと、すかさずロジェが言った。
「アルフレート君、君もだぞ」
誠一はすみませんと頭を下げた。
後方からは凍えるような冷気がまだ、伝わってきた。
ロジェと誠一が馬に乗り先行し、サリナとキャロリーヌが
馬車の後方を馬に乗って、走った。
馬車を御するのは、ヴェルでその隣にちょこんと
アミラが座っていた。
剣豪は荷車ですやすやと寝息を立てていた。
シエンナは荷車で霊峰氷山に関する書物を読んでいた。
誠一の耳にヴェルとアミラの会話が時節、耳に入って来た。
「前回の旅では、大蜂の巣を落としたり、
俺がフレイムチャージの技を閃いたりと色々とあったな」
誠一は後ろを振り向かずともアミラがキラキラした目で
ヴェルの話に耳を傾けていることが容易に想像できた。
そして、その後に続く突っ込みというより厳しい指摘が飛ぶことも。
「あの技をこの旅路で閃いたですか!
ヴェルが14歳の頃です。凄いです」
ヴェルは鼻息荒く、意気揚々にその時のことを話していた。
アミラが興奮気味に合いの手をいれていた。
盛り上がる二人に冷や水をかけるような冷たい声が
荷車から聞こえてきた。
「誠一君、気のせいか少し気温が下がったかな」
誠一の隣で身体を少し震わせたロジェだった。
「ヴェル、盛り上がっているところ悪いけど、
その話、少し訂正させて貰うわよ。
それとアミラ、ヴェルの言うことだってことで
無条件に受け入れない」
アミラが不満気に口をとがらせた。
「こんなことでヴェルが嘘を言ってなんの得があるですか?」
「それはもちろんあるわよ。あなたの気を、もがもが」
ヴェルが突然、手綱をアミラに預けた。
そして、荷車に移ると、シエンナの口を塞いだ。
「はははっ、そうそうアミラ。
フレイムチャージは俺とアルが旅の休憩中に
始めて放ったんだよ。
そしたらさ、おまえは会ったことがないけど、
リシェーヌが俺の技に駄目出ししまくって、
フレイムランサーを放ったんだ。あいつは天才だよ」
アミラはキョトンとしていたが、
目がシエンナとヴェルを睨みつけていた。
彼女の握る手綱がめきょめきょと悲鳴をあげている様に
潰れていた。
そして、それが二頭の馬にも伝わったのか、一声、嘶いた。
「そんな話はどうでもいいです。
それよりヴェル、何時までシエンナを抱きしめているです」
アミラの舌がシュルシュルと音を鳴らしていた。
瞳孔がすっーと細くなりヴェルとシエンナを捉えていた。
不穏な雰囲気と無視できぬ話が聞えた誠一は
後ろを振り向いた。
ヴェルはシエンナの側にピタリと座って
口を塞いでいたただけであった。
口から手を離したヴェルとシエンナが顔を見合わせていた。
誠一は少し笑ってしまった。ヴェルは苦労しそうだな。
一瞬、振り返ったアミラと目が合ってしまった。
慌てて前方に目を向ける誠一であった。
隣でロジェがぼやいていた。
「少し緩み過ぎだな。流石にまっすぐな道が続くが、
馬を御しているにしては注意力散漫だな」
誠一が頷くと、すかさずロジェが言った。
「アルフレート君、君もだぞ」
誠一はすみませんと頭を下げた。
後方からは凍えるような冷気がまだ、伝わってきた。
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