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575. 閑話 とあるいつもの居酒屋での情景2

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「そそそっそ、そっか。
千晴はヴェルトールの世界の戦いに
あまり詳しくはなかったかな。
基本、兵が多いに越したことはないけど、
勝敗を決定づけるのは将軍同士の一騎打ちってことが
多いんだよね。
指揮官が倒されて軍の統率が乱れるからだと思うけどな。
そもそも軍を指揮する将軍が最前線で一騎打ちって
まあ、ゲームならではだよな。
実際にはほとんどあり得ない話だから」
絶え間なく講釈が始まってしまった。
よく分からない千晴は適当に相槌を打っていた。

千晴は酔いが随分と回っていたため、
清涼の講釈の合間であったが、普段気にしていることを
ふと口走ってしまった。

「ふううぅ、そう言えば、島崎さんって会社に
全く顔を出してないですね。どうなったんだろう」

講釈を中断された清涼は一瞬、不快気な表情をした。
「そんな話かよ。
島崎さんは温情で自己都合による退職になるよ。
無断欠勤だけど、部長の指示で有休消化を充てている。
まったくいいご身分だよ。退職金も満額の支払いだしな。
普通はありえないだろ。
奥さん、元奥さんになるかもしれないけど、
非常勤の役員に名前を連ねる予定だし、
生活に困らず万々歳で羨ましい限りだよ。
それと島崎、島崎さんの愛人の坪内さんは、
部署異動になる。施工部のアシスタントだよ。
莉々子の下に就くことになる予定」

「えっ莉々子の下。大丈夫かな」
驚きを隠せない千晴だった。

「それとなく退職を促したらしいけど、
本人が拒否したらしい。折衷案で施工部のアシスタントにね。
二人もいらないし、莉々子は晴れて念願の設計部へ
異動になるだろうな」

社内の事情に疎い千晴は驚きの連続であった。
願わくばこの人事で莉々子が自分に構う余裕が
なくなることを祈るばかりであった。

「しかしなあ、あいつは自分が思っているほどに
能力が高くないぜ。
野郎ばかり施工部でちょいと美人だから
ちやほやされて少し天狗になっているんだよな。
設計なんて職種が莉々子にできんのかな」

嫌な事を付け加える清涼であった。
上手くいかなければ、そのとばっちりは自分へ
今まで以上に酷く飛んで来そうで千晴は憂鬱になってしまった。
ゲームに目を向ければ、北関から脱出して以来、
誠一の親友であるヴェルが別行動を取っているようでいなかった。

 千晴は小さくあくびをした。それを見た清涼がくすりと笑った。

「そろそろお開きにするかな。結構な時間だし、千晴、家まで送るよ」
即座に千晴は清涼の申し出を断った。
家まで送って貰って、流石に『はい、さようなら』
という訳にもいかず、コーヒの一杯くらい部屋に招き入れて
振舞わざるを得ないだろ。
となると時間帯からして清涼が泊まることになる。
そうなれば、自然、関係を結ぶことになるかなあと
千晴はぼんやりした頭で計算した。

清涼はそんな千晴の考えを見透かしたように笑った。
「千晴は警戒心が強いなぁ。
まあ、それだけ警戒心が強ければ、大丈夫かな。
では駅までご一緒いたしましょう」
清涼が会計に向かった。千晴は慌てて、清涼の後を追った。
彼から支払い用のカードを強引にひったくり、支払いを済ました。

「ここは千晴にごちそうになるかな」
清涼は千晴の手をにぎにぎしながら、駅に向かって歩き出した。
清涼にひかれるままに千晴も慌てて、歩き出した。
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