580 / 830
572.それぞれの思惑11
しおりを挟む
その夜、誠一はベッドに寝転びながら暗がりの中、
天井を見つめていた。
「早まったかな」そう誠一はぽつりと呟いた。
後先考えずに威勢のいいことを言うヴェルですら、
何も言わなかった。
最上級の遺跡の難度を肌で触れるだけでも
自分たちに足りないものが何かを明確に知る機会になると
誠一は思った。
しかしそれは、どうやら早計過ぎた思い付きだったのだろうか。
誠一は暗い天井を見つめながら自問自答した。
誠一はベッドから立ち上がり窓に目を向けた。
空気が揺れたような気がした。
この部屋は二階であり、壁を音もなく昇って来られる訳ないと
かぶりを振り、風かなと誠一は思い直した。
コンコン、窓が叩かれる音がした。
誠一はベッドから跳ね起き、7面メイスを手にした。
真っ黒な顔の輪郭をしたモノが窓越しに誠一の目に映った。
真っ黒な顔の口の辺りが蠢いた。
「バッシュ様の使いだ」
誠一は窓を開けた。にぃと黒い顔が笑ったような気がした。
「部屋に入る必要はないだろう。用件を言え」
「くっくくく、強気のだな。
しかしあまり舐めた口を聞くようならば、我が主にも考えがある。
バッシュ様に対して舐めた態度を改めろ」
これはバッシュの言葉は無いなと誠一は察した。
そして、気にした様子も見せずに軽く受け流した。そして、強く出た。
「貴様の意見など俺には必要ない。さっさと用件を言え」
「クソガキが。盛った猿の如く貴様が毎夜のように女を
引き入れてお楽しみだったから接触が遅れた。
バッシュ様に詫びろ」
言い終えた直後に黒顔の口の辺りから突然、
どす黒い血が涎の様にだらだらと流れ出した。
突然のことであったが、目の前の男の安否を気遣うでもなく
誠一は7面メイスを構えた。
「この男の非礼は死をもって詫びさせよう」
どす黒い血を流す口が動いた。先ほどとは打って変わって、
抑揚のない生気を感じさせない声であった。
「貴様、バッシュか」
「察しがいいな。そうだ。
貴様は随分と神とやらに気に入られているようだな。
この世界の住人の願いを聞き入れる神なんぞ聞いたことも無い。
まあ、それはどうでもいい。大会戦でのアレは神の頼みとは言え貸だ。
必ず貸は返して貰う」
何のことを指しているのかは誠一も察していたが、
ここは知らぬふりをすることにした。
「一体、何のことを指して貸と言っているのは分からないな。
そもそも神に俺がお願いしたことをどう証明する?」
黒顔はだらだらと血を流しながら、誠一の話を聞いていた。
星明りしかない闇の中でもそのどす黒い色は誠一の目でも確認できた。
自然、誠一の眉間に皺が寄った。
天井を見つめていた。
「早まったかな」そう誠一はぽつりと呟いた。
後先考えずに威勢のいいことを言うヴェルですら、
何も言わなかった。
最上級の遺跡の難度を肌で触れるだけでも
自分たちに足りないものが何かを明確に知る機会になると
誠一は思った。
しかしそれは、どうやら早計過ぎた思い付きだったのだろうか。
誠一は暗い天井を見つめながら自問自答した。
誠一はベッドから立ち上がり窓に目を向けた。
空気が揺れたような気がした。
この部屋は二階であり、壁を音もなく昇って来られる訳ないと
かぶりを振り、風かなと誠一は思い直した。
コンコン、窓が叩かれる音がした。
誠一はベッドから跳ね起き、7面メイスを手にした。
真っ黒な顔の輪郭をしたモノが窓越しに誠一の目に映った。
真っ黒な顔の口の辺りが蠢いた。
「バッシュ様の使いだ」
誠一は窓を開けた。にぃと黒い顔が笑ったような気がした。
「部屋に入る必要はないだろう。用件を言え」
「くっくくく、強気のだな。
しかしあまり舐めた口を聞くようならば、我が主にも考えがある。
バッシュ様に対して舐めた態度を改めろ」
これはバッシュの言葉は無いなと誠一は察した。
そして、気にした様子も見せずに軽く受け流した。そして、強く出た。
「貴様の意見など俺には必要ない。さっさと用件を言え」
「クソガキが。盛った猿の如く貴様が毎夜のように女を
引き入れてお楽しみだったから接触が遅れた。
バッシュ様に詫びろ」
言い終えた直後に黒顔の口の辺りから突然、
どす黒い血が涎の様にだらだらと流れ出した。
突然のことであったが、目の前の男の安否を気遣うでもなく
誠一は7面メイスを構えた。
「この男の非礼は死をもって詫びさせよう」
どす黒い血を流す口が動いた。先ほどとは打って変わって、
抑揚のない生気を感じさせない声であった。
「貴様、バッシュか」
「察しがいいな。そうだ。
貴様は随分と神とやらに気に入られているようだな。
この世界の住人の願いを聞き入れる神なんぞ聞いたことも無い。
まあ、それはどうでもいい。大会戦でのアレは神の頼みとは言え貸だ。
必ず貸は返して貰う」
何のことを指しているのかは誠一も察していたが、
ここは知らぬふりをすることにした。
「一体、何のことを指して貸と言っているのは分からないな。
そもそも神に俺がお願いしたことをどう証明する?」
黒顔はだらだらと血を流しながら、誠一の話を聞いていた。
星明りしかない闇の中でもそのどす黒い色は誠一の目でも確認できた。
自然、誠一の眉間に皺が寄った。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
料理の腕が実力主義の世界に転生した(仮)
三園 七詩
ファンタジー
りこは気がつくと森の中にいた。
なぜ自分がそこにいたのか、ここが何処なのか何も覚えていなかった。
覚えているのは自分が「りこ」と言う名前だと言うこととと自分がいたのはこんな森では無いと言うことだけ。
他の記憶はぽっかりと抜けていた。
とりあえず誰か人がいるところに…と動こうとすると自分の体が小さいことに気がついた。
「あれ?自分ってこんなに小さかったっけ?」
思い出そうとするが頭が痛くなりそれ以上考えるなと言われているようだった。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
転生幼女の異世界冒険記〜自重?なにそれおいしいの?〜
MINAMI
ファンタジー
神の喧嘩に巻き込まれて死んでしまった
お詫びということで沢山の
チートをつけてもらってチートの塊になってしまう。
自重を知らない幼女は持ち前のハイスペックさで二度目の人生を謳歌する。
錆びた剣(鈴木さん)と少年
へたまろ
ファンタジー
鈴木は気が付いたら剣だった。
誰にも気づかれず何十年……いや、何百年土の中に。
そこに、偶然通りかかった不運な少年ニコに拾われて、異世界で諸国漫遊の旅に。
剣になった鈴木が、気弱なニコに憑依してあれこれする話です。
そして、鈴木はなんと! 斬った相手の血からスキルを習得する魔剣だった。
チートキタコレ!
いや、錆びた鉄のような剣ですが
ちょっとアレな性格で、愉快な鈴木。
不幸な生い立ちで、対人恐怖症発症中のニコ。
凸凹コンビの珍道中。
お楽しみください。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる