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564.閑話 とある料理店での情景2
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……
重い会場のドアをメイと共に開けると、賑やかな音楽が耳に飛び込んできた。
高級そうな料理や、いつも以上に華やかな会場の飾りつけが目に入り、1週間前に戦地にいたなんて嘘みたいな光景に、呆気《あっけ》にとられる。
戦勝パーティ会場を見回すと、下級クラスの生徒はいないようだった。
そのことに、心の中で『当たり前だ』と呟く。
下級生であるルイーゼ達は、私たちが特別野外活動に行っていたと思っているのだから。
ちなみに私を襲った男子達は、指揮官から学園に報告され、帰還するなり塔に入れられた。だから今は不在だ。
「カミヅキ様ぁ~」
そんな台詞が耳に入ってきて、自然と目が行く。
すると大きく胸の開いた、タイトな黒のロングドレスを着たFクラス講師が映った。そして、その隣にはディオン。
ディオンは品のある黒のスーツを着ていて、長い黒髪を後ろで束ねている。既に周りは女生徒だらけだ。
Fクラス講師は、大きな胸を見せつけるようにしてディオンに迫っているのに、ディオンは嫌がる様子も見せずに何やら話をしている。
服の色が同じだからか、そんな2人がとてもお似合いに見えて、思わずムッとしてしまう。
そんな時、ディオンとバチっと目が合って、思わずプイっとそっぽを向いてしまった。
再び目を向けると、もうディオンは女生徒の方を向いていた。
その事に更に怒りが湧く。
キスまでしてきたくせに!なんなのよ!
ふと、これまでのキスを思い出してしまい、そっと唇に指を当てると、顔にぼっと火がついた。
あああーー!
恥ずかしくなって脳内の私が頭を抱えて叫ぶと、次に私を殺した奴の言葉が浮かび上がった。
『あれぇ?まだ生きてんの』
『早く死んで』
……まただ。
最近ずっと、殺される直前の事ばかり思い出してしまう。
それもこれも……
長く艶のある黒いディオンの髪に目を向ける。
あの姿を目にすると、どうしても私を殺した人物を思い出してしまう。
戦争が終わったら告白しようと思っていたのに、なんかそれどころじゃなくなっちゃった……
疑いは深まる事も、解決する事もなく、ずっと平行線のまま。
やっぱり、ディオンが私を殺した犯人なんかじゃないとは思う。
でも、そう思っても疑いが完全に晴れるわけではない。
いっそのこと、全部話してしまえば楽になれるのに……
もし、本当に犯人だったら……って思うと、怖くて言えない。
「はぁー」
ため息をついて誰も居なさそうなテラスに出ると、「シエルちゃん」と呼ぶ声が聞こえた。
その声に振り返ると、派手な柄物のスーツを着たアランが映った。
「アラン……」
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