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564.閑話 とある料理店での情景2

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店の側で立ち尽くす千晴の腕を取ると清涼は、
ドアを開けて入店した。
千晴は諦めてとぼとぼと清涼に引かれるように続いた。

「やあ、いつもの個室に案内して」
「いらっしゃいませ、清涼様、お待ちしておりました」
カウンターに立っていたウェイターが清涼に頭を下げた。
そして、あってはならぬことだが、ウェイターは
まじまじと千晴を見つめた。
千晴の気分は時が過ぎるにつれて益々、
惨めな気分に支配されていった。
しかし、千晴が思っているほど店内で食事と会話を
楽しむ客は気にしている様ではなかった。

千晴は背中を丸めて、部屋に案内するウェイターと
清涼の後に続いた。
席についたが、二人はどうにもよそよそしかった。

「困ったな。千晴がそんな感じだと
食事とこの時間を楽しめないよ」

えっ何、これって私が悪いの。
そんな気持ちがふつふつと湧き上がって来た。

「莉々子は全くそんなことを気にせずに楽しんでたけどな」

えっ何、別の女性の名前をここで出すのはあり得ないでしょ。
まあ、別に恋人でもないから別にいいけどね。
そんな気持ちがむくむくと沸き上がった。

「まあでもここの料理を食べれば暗い気分も晴れるさ。
それより誠一君は大丈夫だったんだよね」

清涼に悪気がない分、余計に質が悪かったが、
千晴は大人の対応を取った。
「何とかね、上手く脱出できたみたいで、
お礼を伝えて欲しいと伝言を賜りました」

「そうかそれは良かった。
しかし、彼は本当にこの世界に実在したのかな」

お洒落に盛りつけされた前菜が配膳されてきたために
一旦、会話は中断された。
見るだけで心を弾ませ、口にすれば、芳醇な野菜の味が広がった。
美味しいと心の底から感じられたが、前菜でこれほどの料理、
恐らくスペシャルなコースメニュを清涼は
チョイスしているはずだと千晴は思った。
千晴は本気で料金を心配してしまった。
暫くは節制の生活だなと腹をくくる千晴であった。
食事が進み、それに伴いお酒も進んだ。
そして、ほろ酔い気分は、千晴の口を軽くした。

「彼の住んでいたアパートにはその痕跡は
見つかりませんでしたよ。
隣人の男性も記憶になさそうでしたし。
そもそも誠一さんの伝えたアパートは
どうもロキメック社が契約していましたよ」

清涼が驚いた表情で千晴を見つめた。

「佐藤さん、いや千晴。
あんまり危ない真似はしないように約束したよね」

「いえ、アパートの部屋に凸するとかしてないですよ。
あくまでも周辺で聞き取り調査をしただけですから。
そんな清涼さんが心配するようなことはないですって」

千晴は慌てて、弁解じみたことを言った。
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