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536.大会戦8
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「なんだこの臭い」
少し離れた場所で戦う誠一はあまりにも妙な臭いに
一瞬、気を取られた。
誠一と相対するバロック一家のチンピラたちも同様であった。
その時、風を切る音が一瞬、誠一の耳に入った。
その直後、誠一の眼前の敵たちが倒れた。
何人かは即死せずに倒れて呻き声を上げていた。
「戦場での気の緩みは死に直結するわよ」
颯爽と誠一の隣に並ぶキャロリーヌであった。
しかし誠一の視線は目の前に転がるバロック一家の死体と
転がる重傷者であった。
誠一は、晴天の中にも関わらず薄ら寒かった。
誠一の背中にすさまじい悪寒が走っていた。
一瞬の気の緩み、全く予想だにしない場所や死角からの攻撃、
それが死に直結する。目の前にその好例が転がっていた。
一歩間違えれば、それは誠一の姿であった。
「アル、深刻に考えないで。いつも通りにね」
キャロリーヌの言葉に生返事をする誠一。
目の前で戦う敵は誠一にとっては全く脅威となる敵ではなかったが、
どうにも誠一の動きが鈍い。
「あーもう。アル、戦に生き残られたらね、しよっ。
一つだけアルの希望を叶えてあげようかな」
きちきち、ぎろり。
誠一が敵と刃を交えながら、キャロリーヌの方を見た。
「ひっ」
キャロリーヌが悲鳴をあげた。
誠一の目が言質は取ったなりと言っているようであった。
魔物を倒すかのように目の前のバロック一家を無慈悲に
7面メイスで武器ごと叩き潰した。
メイスは命まで取ることは無かったが、
肉を潰して骨を叩き壊して戦闘力を奪っていた。
誠一の周りでは苦痛の叫び、怨嗟の叫びが渦巻いていた。
しかし、その呪詛のごとき悲鳴にも誠一は臆することなく
メイスを振り上げ振り下ろす作業を繰り返した。
力の差は冠絶しており、全くバロック一家の者たちでは
相手になっていなかった。
誠一たちに追いついたロジェ、サリナ、シエンナも
直ぐに参戦した。
流れ矢などの不測な事態に注意すれば、
ロジェや仲間にとって危険は少なかった。
故に彼は誠一を観察した。サクサクと敵を倒しているが、
誠一の攻撃は完全に敵の息の根を止めていなかった。
戦闘力を奪うに留めており、殺す余裕があっても
直ぐに他の敵を狙っていた。一人でも多くの敵の戦闘力を奪う。
悪くない選択だとロジェには映ったが、
あまりにも行き過ぎているようにも思えた。
王都で宣誓した彼の覚悟は上辺だけだったのかと
穿った見方すらロジェはしてしまった。
「人を撲殺するのが戦場の全てではないが、失望させてくれるなよ」
目を細めて誠一の行動を注視するロジェであった。
少し離れた場所で戦う誠一はあまりにも妙な臭いに
一瞬、気を取られた。
誠一と相対するバロック一家のチンピラたちも同様であった。
その時、風を切る音が一瞬、誠一の耳に入った。
その直後、誠一の眼前の敵たちが倒れた。
何人かは即死せずに倒れて呻き声を上げていた。
「戦場での気の緩みは死に直結するわよ」
颯爽と誠一の隣に並ぶキャロリーヌであった。
しかし誠一の視線は目の前に転がるバロック一家の死体と
転がる重傷者であった。
誠一は、晴天の中にも関わらず薄ら寒かった。
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一瞬の気の緩み、全く予想だにしない場所や死角からの攻撃、
それが死に直結する。目の前にその好例が転がっていた。
一歩間違えれば、それは誠一の姿であった。
「アル、深刻に考えないで。いつも通りにね」
キャロリーヌの言葉に生返事をする誠一。
目の前で戦う敵は誠一にとっては全く脅威となる敵ではなかったが、
どうにも誠一の動きが鈍い。
「あーもう。アル、戦に生き残られたらね、しよっ。
一つだけアルの希望を叶えてあげようかな」
きちきち、ぎろり。
誠一が敵と刃を交えながら、キャロリーヌの方を見た。
「ひっ」
キャロリーヌが悲鳴をあげた。
誠一の目が言質は取ったなりと言っているようであった。
魔物を倒すかのように目の前のバロック一家を無慈悲に
7面メイスで武器ごと叩き潰した。
メイスは命まで取ることは無かったが、
肉を潰して骨を叩き壊して戦闘力を奪っていた。
誠一の周りでは苦痛の叫び、怨嗟の叫びが渦巻いていた。
しかし、その呪詛のごとき悲鳴にも誠一は臆することなく
メイスを振り上げ振り下ろす作業を繰り返した。
力の差は冠絶しており、全くバロック一家の者たちでは
相手になっていなかった。
誠一たちに追いついたロジェ、サリナ、シエンナも
直ぐに参戦した。
流れ矢などの不測な事態に注意すれば、
ロジェや仲間にとって危険は少なかった。
故に彼は誠一を観察した。サクサクと敵を倒しているが、
誠一の攻撃は完全に敵の息の根を止めていなかった。
戦闘力を奪うに留めており、殺す余裕があっても
直ぐに他の敵を狙っていた。一人でも多くの敵の戦闘力を奪う。
悪くない選択だとロジェには映ったが、
あまりにも行き過ぎているようにも思えた。
王都で宣誓した彼の覚悟は上辺だけだったのかと
穿った見方すらロジェはしてしまった。
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目を細めて誠一の行動を注視するロジェであった。
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