転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組！だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業？それとも社畜？誰か助けて

528.一時の再会2

「ところで先生は何故王都に？」

「近々、大戦があるようで協力しろと。
無視できぬ金だったため、ヴェルトール王国に協力しようかと」

ふと誠一は此度の戦の帰趨について剣豪に尋ねた。

「ヴェルトール王国が滅びることはないでしょうな。
かと言って、ダンブルが早々に滅亡することもないでしょう。
現状、王国が最強であることは間違えありませんが、
群雄割拠の時代を迎えるのではと考えております。
遠く離れた大国の介入や干渉も注意しておく必要がありますな」

剣豪の説明を聞きながら、誠一は内心で首を傾げていた。
自分がプレーヤーであった時、既にゲームは過疎化に向かっていた。
新たな領域を開発して、プレーヤーに開放するほど
ゲームの人気が盛り返したとは思えなかった。
千晴に今度、その辺りのことを尋ねてみようと心の片隅に留めた。

「そうそう最後にエリクサーですが」
ワザとらしく剣豪が言葉を切った。
誠一の目が剣豪の目を捉えて離さなかった。

「どうやらとある大手のクランが血眼になって探している様です」
誠一はその情報にがっかりして目を伏せてしまった。

「私の経験上、近々、神々より下賜されるアイテムが
増える周期が訪れるでござる。
市場、闇のマーケットに耳目を傾けなさい」

それが排出率アップのイベントのことだと誠一には分かったが、
恐るべきはそれが分かる剣豪の経験と感性であった。
誠一の背中に自然と背中に汗が滴った。

「どのみち大きな戦でござる。
故にどのような強者であっても生きるも死ぬも運次第。
アルフレート様もお気をつけなされ」

そろそろ話も終わりのような雰囲気であった。
誠一は一礼をして剣豪を見送る態を取ったが、
剣豪が動く気配はなかった。
リシェーヌを盗み見している様でもなく、
一体どうしたのだろうと誠一は不思議に思った。

「ふむ、暫く会わぬうちに察しが悪くなったのか、
それとも底意地悪くなったのか、どちらにしてもよろしくない」

剣豪の呟きで誠一は失念していたことを思い出した。

「すみません、地上まで送ります」

「ここに来るのも最後かもしれぬ。
次はクリスタルに包まれた某に会うかもしれぬ。
安請け合いしたとはいえ、暴れん坊のナサレノ、
エドワード坊ちゃんの牽制は中々に骨が折れる」
からからと笑う剣豪に誠一も釣られて笑った。

「そう言っている間は大丈夫でしょう」

むむっと剣豪は唸ると、酒を軽く煽り転送陣の方へ
気儘に歩き始めた。

色々と剣豪に対して思うことはあったが、誠一は黙って剣豪の後を追った。

「リシェーヌ、バタバタしてごめん。また来るよ」

誠一には一瞬、リシェーヌが微笑んだように見えた。