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527.一時の再会1
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起き上がった誠一は少しやつれ気味の表情で
気だるい身体に鞭を打って、魔術院に向かっていた。
明日から本格的な出征の準備が始まる。
今日を逃せば、魔術院へしばらく行くことができなかった。
夜に朝にキャロリーヌを抱いて、
その脚で『深淵の回廊』のクリスタルの森に誠一は向かった。
無論、封印されているリシェーヌへ会うことが目的の誠一だった。
我ながら節操がないのかなと思いつつも転送陣の上に立っていた。
誠一はクリスタルに封印されたリシェーヌの前に立っていた。
心なしリシェーヌの表情が険しく見えた。
いや、これは多分、自分にやましい気持ちがあるから
そう見えるに違いないと言い聞かせた。
誠一はリシェーヌを見つめて、普段の通り今までのことを話し始めた。
いつもと違いどうも違和感があった。
際限なく彼女に語り掛けていても飽きることなく続けられたが、
今日は勝手が違っていた。
耳を塞ぐ少女にあの手この手で無理やり話し掛けているように誠一は
感じられた。
「まさかね」
「そのまさかでござる」
「はっ」
誠一はその声に驚き、振り向いた。
飄々とした雰囲気、つかみどころのない表情で自分と同じように
怠そうな一人の男が立っていた。
「鬼谷先生でしたか。
いったいここにはどういったご用件で?」
誠一は7面メイスを強く握り、構えた。
それと同時に無詠唱で補助魔術を展開した。
「まだ、先生と呼びますか」
剣豪は嬉しそうだった。そして続けた。
「いえ、ちょっとファウスティノに用があったので、
学院を訪ねたのです。
すると想い人に会いに行くにしては、随分と生臭い別の雌の匂いを
ぷんぷんさせている無粋な男が学院内を
うろうろしているではないですか!
おもしろ、いやいや心配で後をつけたのでごさる」
ひょいと誠一に近づき、くんくんと匂いを嗅ぐ剣豪。
「ふむ、相手はキャロリーヌでござったか。
にしてもお互いに始めて同士にしては、随分と楽しんだようですな」
きっ気のせいかな、誠一にはリシェーヌの眉間が
ピクリと逆上がったような気がした。
「意識は無くとも匂いや音は感じているでござるよ。
余程、キャロリーヌの匂いが不快なのでござろう」
剣豪はアイテム袋から酒や水を取り出すと容赦なく誠一に
ぶちまけた。リシェーヌの眉間に皺が寄っていた。
もしかして、ここまま目覚めるのかもと誠一は淡い期待をした。
「目覚めることはないでござる。
仮に目覚めたとしても直ぐに亡くなります」
誠一は手渡された手拭いで身体を拭った。
若干だが、リシェーヌの表情が和らいだように見えた。
気だるい身体に鞭を打って、魔術院に向かっていた。
明日から本格的な出征の準備が始まる。
今日を逃せば、魔術院へしばらく行くことができなかった。
夜に朝にキャロリーヌを抱いて、
その脚で『深淵の回廊』のクリスタルの森に誠一は向かった。
無論、封印されているリシェーヌへ会うことが目的の誠一だった。
我ながら節操がないのかなと思いつつも転送陣の上に立っていた。
誠一はクリスタルに封印されたリシェーヌの前に立っていた。
心なしリシェーヌの表情が険しく見えた。
いや、これは多分、自分にやましい気持ちがあるから
そう見えるに違いないと言い聞かせた。
誠一はリシェーヌを見つめて、普段の通り今までのことを話し始めた。
いつもと違いどうも違和感があった。
際限なく彼女に語り掛けていても飽きることなく続けられたが、
今日は勝手が違っていた。
耳を塞ぐ少女にあの手この手で無理やり話し掛けているように誠一は
感じられた。
「まさかね」
「そのまさかでござる」
「はっ」
誠一はその声に驚き、振り向いた。
飄々とした雰囲気、つかみどころのない表情で自分と同じように
怠そうな一人の男が立っていた。
「鬼谷先生でしたか。
いったいここにはどういったご用件で?」
誠一は7面メイスを強く握り、構えた。
それと同時に無詠唱で補助魔術を展開した。
「まだ、先生と呼びますか」
剣豪は嬉しそうだった。そして続けた。
「いえ、ちょっとファウスティノに用があったので、
学院を訪ねたのです。
すると想い人に会いに行くにしては、随分と生臭い別の雌の匂いを
ぷんぷんさせている無粋な男が学院内を
うろうろしているではないですか!
おもしろ、いやいや心配で後をつけたのでごさる」
ひょいと誠一に近づき、くんくんと匂いを嗅ぐ剣豪。
「ふむ、相手はキャロリーヌでござったか。
にしてもお互いに始めて同士にしては、随分と楽しんだようですな」
きっ気のせいかな、誠一にはリシェーヌの眉間が
ピクリと逆上がったような気がした。
「意識は無くとも匂いや音は感じているでござるよ。
余程、キャロリーヌの匂いが不快なのでござろう」
剣豪はアイテム袋から酒や水を取り出すと容赦なく誠一に
ぶちまけた。リシェーヌの眉間に皺が寄っていた。
もしかして、ここまま目覚めるのかもと誠一は淡い期待をした。
「目覚めることはないでござる。
仮に目覚めたとしても直ぐに亡くなります」
誠一は手渡された手拭いで身体を拭った。
若干だが、リシェーヌの表情が和らいだように見えた。
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