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524.会戦直前5
しおりを挟む「僕個人のお願いで調べて貰っている件について教えて欲しい。
何か有益な情報はあった?」
「市場や闇ルートで売買された情報はないわ。
ただ、いくつかのクランがそれを求めて蠢動している。
それらのクランだけど表向きは無関係を装っているけど、
かなり親密な関係にあるらしいわ。
それとそれを求める理由については全く情報が出回ってない。
噂だと神の啓示を受けたと言われている。
ただ6神教で開示されていないから、
よっぽどの秘匿事項か野良神の啓示かと噂されているわ」
カルザティから得た情報とほぼ同じであった。
一体、そのプレーヤーの目的は何なのだろう。
仮に祈りの神殿を先に攻略されたとしたら、
次にエリクサーなり毒壺が生成されるのに
どの程度の月日が必要になるのだろうか。
様々な疑問が湧くが、推測すらできずに誠一は悶々としていた。
誠一は自然と呟いた。
「祈りの神殿の攻略を早めるべきか」
サリナは目を見開いて誠一を見つめた。
誠一の瞳に薄い青みかかった瞳が映り、我に返った。
「ごめん、サリナ。考え事に耽ってしまった」
「それはいいけど、まあ、食事に誘った女性の前で
すべき態度ではないよね。ってか、祈りの神殿の攻略って!
一応、言っておくけど、現メンバーの実力と人数じゃ
全滅するのがオチだから。
仮に剣豪鬼谷が協力したとしてもエリクサーを入手できずに
生きて撤退できれば上出来な感じよ」
サリナが唾を飛ばしながら捲し立てた。
「ちょっ、サリナ、落ち着いて。唾が凄いって。
流石に女性が男性の前ですべきマナーじゃないよ。
それに大声で捲し立てないで。
誰が聞いているか分からないから」
サリナは大きく深呼吸を一つすると、
呑みかけの麦酒を一息で飲み干し、次を頼んだ。
「ふん、シエンナやキャロリーヌのように
上品でなくすみませんね。
当方、しがない村の出身でして、
あまり行儀がよろしくないのですよ。
しかしねー、あんたもそういう時は、
それとなく女に恥をかかせないように指摘しなよ」
えっええ、何故か自分が悪者にされている。
その上、後半の重要な指摘をスルーしている。
誠一は納得できない気持ちでいっぱいだったが、
事を荒立てて、周囲の視線を集めるのが嫌でそのまま話を続けた。
「すみません。
エリクサー入手に動いているクランの動向を調べてください」
ぐびぐび、ぷぱー。
そんな音が聞えてきそうなサリナの飲みっぷりだった。
「まあいいけど。いつまでみんなに黙っているつもり?
別に話しても問題ないと思うけどね。
それともうちょっとリーダーなら
バシッと決めてしっかりした態度を取らないと駄目よ」
図星を突かれた誠一はむすっとして黙り込んでしまった。
サリナは二杯目を呑み干して、ひょいひょいと料理を
適当に口にして、じゃあねーと言い残して料理屋を出た。
その後、誠一は独りで食事を済まして、エンゲルス家に帰宅した。
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