上 下
512 / 830

505.使節団18

しおりを挟む
誠一たちと『清き兵団』は、ゾンビの群れを抜けると
使節団の後を追った。

「アル、前方にいる結構な兵団に突っ込むの?」
キャロリーヌは前方を観察して誠一の判断を仰いだ。

「北関からの反乱軍はのろのろと兵を繰り出してるだけのようだね。
キャロ、一発いける?」
誠一の意図を察したキャロリーヌは空に向かって矢を番えた。

「最後の一発になるわよ。一本の矢よ。
その矢尻へ神の拳を顕現させよ。フォストゴッテスっー」
放たれた矢は、白い雲を引き裂きさいて上昇した。
地上に光が差し、空は明るくなり、人の視界には、神の拳が
ジェイコブ軍の中央に向かって降下を始めているように見えた。
矢の周りに発生している激しい気流が拳の様に見えた。
一瞬でジェイコブ軍は大混乱に陥った。
先ほどと同様に左右に逃げ纏い始めたが、時すでに遅しであった。

「我々、『清き兵団』が先行します。後について来てください」
清き兵団は雄叫びをあげながら、ジェイコブ軍へ突撃した。
ジェイコブ軍の混乱の極致となった。
清き兵団は背中を見せるジェイコブ軍の兵を容赦なく突き刺した。
そのため更に混乱は大きくなり、倒れた仲間を踏みつけてでも我先にと
逃げ出していた。

「アル、もしかしてキャロリーヌの一撃でジェイコブは死んだのかな」
シエンナが大混乱の敵兵を眺めていた。

「さあ、それは分からない。だけど、悪運強い人だから、
兵に紛れて逃亡していると可能性が高いよ」

誠一、シエンナ、そしてキャロリーヌは兵団の後に続き、
大混乱のジェイコブ軍に突入した。
一本の矢が誠一の防御魔術によって防がれた。
誠一は馬の歩みの遅くして周囲を見渡した。
すると、一人の男と目が合った。

「逆賊アルフレート。四肢を落としてでも皇帝陛下の元へ連れて行く」

「バラムさんですか。
できれば、ここは見逃して欲しいのですけど」

バラムは誠一を嘲笑した。
「面従腹背の徒は、禽獣にも劣る。
貴様の様な輩は、皇国の正義の下に裁く」

誠一は馬の歩みを止めて、バラムと対峙した。
偽りとはいえ、一緒に魔物を討伐したり、旅をした者であった。
誠一は、彼に刃を向けることを躊躇した。
一方、バラムはそういった感傷を一切持たず、
短剣を以て誠一に肉薄した。

「やっぱり、戦だとこうなるか」
誠一はバラムを見ながら嘆息した。

先手を取られたが、誠一はバラムの早さを脅威に感じなかった。
元々の基礎能力に加えて、補助魔術、啓示で強化された身体能力を
もってバラムの初撃を躱した。
そして、そのまま7面メイスでバラムを叩き倒した。

バラム程の実力者に対して、圧倒的な力の差を示した誠一に対して、
他の監軍たちは手を出すことを控えてしまった。

地に臥すバラムを誠一は見つめるが、
止めの一撃を繰り出すことができなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

転生幼女の異世界冒険記〜自重?なにそれおいしいの?〜

MINAMI
ファンタジー
神の喧嘩に巻き込まれて死んでしまった お詫びということで沢山の チートをつけてもらってチートの塊になってしまう。 自重を知らない幼女は持ち前のハイスペックさで二度目の人生を謳歌する。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

処理中です...