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502.使節団15

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「S級冒険者ナサレノ、殺すつもりで行くぞ。
フレイムランサー」

一躍でナサレノとの距離を詰めた。
無論、なんなく躱されたヴぇるであった。
素早く反転したヴェルは、またも同じ技でナサレノに攻撃した。
「フレイムランサー」

ナサレノは最小の動作でハルバートの穂を避けた。
そして、自分の側面を通り過ぎる瞬間にヴェルの首を
落とそうと剣を振り上げた。

「破裂しろ、フレイムランサー」
ハルバートの先端に集約されていた炎の塊が爆発した。
爆発の衝撃を上手くコントロールすることができずに
コロコロとヴェルは転がってしまった。

無論、この隙を逃すほどナサレノは甘くなかった。
ヴェルに向かって真紅の剣を振り下ろした。
しかし、その剣は竜爪により遮られた。

「おいおい、マジか。伝説の真紅の剣を
己が肉体の一部で防ぐとか。あり得ないだろ」
それは、人の身でどれほど訓練をしても
到達しえない肉体の強度であった。

「ふん、貴様が万全の状態でその剣を振っておれば、
先ほどのようにこの爪を斬ることなど容易いだろう」

お互いに肩で息をしていた。
正門からは、グレイガー皇太子が兵を率いて出て来た。
それを上空から観察したエドワードは撤退の指示を下した。
「グロウ、撤収だ。ヴェルナーとアミラを連れて、撤収しろ」

グロウは嫌そうにヴェルを一瞥した。
アミラがヴェルに肩を貸して、立ち上がらせた。

「さて、ナサレノ。古き友誼に免じて、ここはおまえにも退いて貰いたい」

「ちっこの状態で貴様とやり合おうとは思わん。
グロウ、この勝負はお預けだ」
ナサレノは真紅の剣を鞘に納めるとヴェルたちに
背を見せながら正門に向かって歩き始めた。

「ふん、よかろう。次、戦場で相まみえる時はいずれかが死ぬ時だ」
グロウもナサレノに背を向けて、撤退を始めた。
その時、顔を真っ赤にしながらヴェルに身体を寄せて
サポートするアミラがグロウの目に入った。
グロウは無性にイライラしてしまい、ヴェルの頭を叩いた。
「貴様、男だろ!アミラに寄りかからずに己で走れ。
できなくば、その辺に捨て置くぞ」

ヴェルの代わりにアミラがグロウを睨みつけた。
「ヴェルは、命の恩人なのです。一生をかけて、この恩を返すです。
こんなことはほんの些細なことです」
更にアミラはヴェルに身体を寄せて、動き出した。

グロウは声に出ない叫びを上げて、アミラからヴェルを引き剥がすと、
自分の頭の上にかち上げて走り出した。
全身の痛みで朦朧としているヴェルには一体、
何が起きているのか確認する術はなかった。
取り敢えず、戦場に放置されることはないと安心し、身を成り行きに委ねた。
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