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498.使節団11
しおりを挟む「アル、行くぞ!」
「アル、何してるの!彼女、婚約者でしょ。見殺しにする気なの!」
2人に急かされるが、確実な死に向かって突っ込むには
強い覚悟が必要だった。誠一はみっともなく叫んだ。
『千晴さん!力を貸してください。助けてください。
シエンナを彼女を助けたいんです』
『へっ、これって危機的状況だったの?』
この馬鹿女が!そんなことは、見れば分かるだろう。
誠一は激昂して、心の中で叫んでいた。
『ごっごめんなさい。誠一さんたちがポコポコと敵を倒しているから、
全然、気づかなくって。シエンナが犠牲になりそうなのよね』
まずい、心の叫びが書き込まれたのか、誠一は心配になり咄嗟に謝った。
「すっすみません。焦って、感情が昂ってしまいました」
『凄い表情だったので驚いただけです。
それより少し頑張ってください。詳しい方に連絡します』
『お願いします、急いでください』
誠一が叫ぶとシエンナの方に向かって動き出した。
それを見た二人も誠一に合わせて動き出した。
「よしっ!姉貴、アルに続くぞ。何か啓示を受けてそうだ」
「行くわよ!シエンナに追いつくわよ」
2人と合流した誠一は励ます気もあって、神の事を伝えた。
「二人とも千晴さん、あっいや神が何か策を講じてくれるようです」
誠一の言葉に二人は頷き、改めて気力を振り絞った。
突如、誠一たちの上空が暗くなった。彼らを巨大な影が覆った。
突然のことに3人は空を見上げた。空には巨大な竜が飛翔していた。
「アルーあれは、あれは、あれか?」
「分からん」
「二人ともよく見なさい。あれは竜公国の竜騎兵よ」
くそっここまでか、誠一は観念した。
竜公国まで相手にして、生き残れる訳がない。
誠一は一瞬だけ瞳を閉じた。
最後の時にシエンナを一人だけにする訳にはいかない。
そう思うと、誠一は雄叫びをあげた。
「うおおおおっ!二人とも脱落せずについて来て」
「おうっやれるだけやったるぜ」
ヴェルの『絆の仲間』が発動し、力を与えた。
「言われなくても最後の最後までついて行くわ」
キャロリーヌの『純潔の婚約者』が発動し、力を与えた。
誠一たちの後方でゾンビやスケルトンが跳ね上がり、砂塵が舞い上がっていた。
「なんだありゃ」
「さあ、ヴェル。見える?」
「いやいやいや、先頭をグロウさんが走ってる」
逆に正門の方から悲鳴や歓声が上がり始めた。
「ヴェル、正門の騒ぎは何か見える?」
「ちょっと待て。むっレドリアンとデルガドがいない。
城兵同士が争っている上にゾンビども倒し始めているぞ。
ってかシエンナと接触して、こちらに戻って来てる。
ってかシエンナは阿保か。この状況で空に向かって祈ってるぞ。
あっ、何か戦士のようなリーダーらしき男に頭を叩かれてる」
誠一の頭に声が聞えた。
『誠一さん、北関の方から出て来たのは、
知り合いのプレーヤーのキャラクタです。
撤退咆哮にいる敵だけに注意して』
千晴の声が聞えると同時にシエンナが合流した。
誠一は安堵した。状況の厳しさとは裏腹にほっとした表情を
隠しきることはできなかった。
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