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496.使節団9

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「デルガド、あ奴らを侮るな。足元を掬われるぞ。
さっさと、薄汚いゾンビどもに襲わせろ」

「五月蠅い、命令するな。既に命令してる。
それよりレドリアン、貴様の方こそ奴らの退路を限定しろ」

北関の大広間でダンブルが玉座に座っていた。

「陛下、裏切者と日和見者たちが網にかかりました。
後方に大きく退いた使節団はジェイコブが殲滅するでしょう。
そして、間諜として我らを欺いたアルフレートは
死体に群がられて惨たらしく死ぬでしょう」
シャービスは淡々と現状をダンブルに伝えた。
ダンブルは無表情であったが、軽く頷いた。

バリーを始めとした左右に並ぶ諸将は下品な笑みを浮かべていた。

「キャロリーヌとあの丸っこい娘は生け捕りにするのも悪くないな」

「それをいうならば、アルフレートと槍のようなものを
振るっている男も生け捕りたいものよ」

「どれも捨てがたいってことだな」

諸将の私語を咎めることもなくダンブルは好きなようにさせていた。
ダンブルの濁った瞳に映るものは彼に何も思い起こさせることはなかった。


「はあはあ、くそっ。数が多過ぎる」
ハルバートを何度も何度も振り回して、ヴェルはばて始めていた。

誠一も幾度も7面メイスを振り上げては
振り下ろしを繰り返し、疲労を感じ始めいた。

ゾンビやスケルトンは全く誠一たちの脅威となっていなかったが、
誠一たちを確実に消耗させていた。
 このままではじり貧となることは明白であったが、
誠一たちにはこの状況を打開するような強力な技がなかった。
キャロリーヌのフォストゴッテスはためが必要な上に
何発も打てるような技ではなかった。

「アルーやるしかねえ。
フレイムチャージとエアチャージの合わせ技だ!」

「ふうふう、やめなさいって。
北関に籠る連中は今のところ出てくるつもりは無さそうなんだから、
このまま可能な限り体力と魔力を温存して
撤退するのが今のところは上策よ」

「ヴェル、落ち着きなさい。シエンナの言う通りよ。
本チャンはこいつらを突破した後に来るわ」

2人の女性に叱責されたヴェルは技を繰り出すことを止めたが、
ぶつぶつと文句を垂れていた。

「このままじゃ飲み込まれちまう。それが分かんないのかよ」

「愚痴を言っている間はまだまだ、余裕がある証拠さ、ヴェル」
7面メイスを振り回しながら、誠一はヴェルに向かって叫んだ。
叫びながらも誠一は周囲を見渡した。
確実に数は減っているはずだが、次々と視界に
ゾンビやスケルトンが映るためにまるで減っているようには
感じられなかった。誠一たちに徒労が襲い始めていた。

 誠一は突破口を開くために腹を据えた。
「僕がエアスライサーを連発するからヴェル、そこへ突っ込んで」

「おう、やるしかないな」

「踊れ、風の刃!エアスライサー」
誠一は何発ものエアスライサーを唱えた。
シエンナの補助魔術がエアスライサーの威力を高めた。

「矢ヨ、雨の如く降り落ちろ、五月雨討ち」
キャロリーヌが矢の雨を放った。

ぽっかりと開いた退路にヴェルが突撃を敢行した。
その後にキャロリーヌ、シエンナ、そして誠一が続いた。
彼等の勢いは凄まじかったが、包囲を突破するまでには
至らなかった。
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