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493.使節団6

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  ヴェルトール王国使節団は、北関に向かって出発した。
道中で殿を務めているアーロン率いるテルトリア騎士団、
そしてファブリッツィオ、ラムデールに出会った。
装いはぼろぼろながらも負傷兵を保護しながら、
整然と隊列を組んで王都に撤退中であった。

 敗軍の将とはいえ、アーロンは当然の事、
2人も世にその名を響かせていた。
ラムデールは此度の一連の戦で大いに勇名を轟かせて、
嫡子たる立場を盤石のものにした。
ファブリッツィオの勇名は、ティモフェイ・ストラッツェールの
嫡子たる地位を不安にさせる程であった。
お家騒動の種になる前に婚姻という手段で他家に
出されることになるだろう。

 アーロンは使節団を一瞥するだけで、声をかけることもなく、
行軍を一時的に留めることもなかった。
ファブリッツィオとラムデールは、軍を離れて誠一たちの所へ現れた。

「アルフレート、戻ってきたか。
噂には聞いていたが、随分と面白おかしい活躍を
グレートウォールではしていたそうだな。
貴様に詩才があったとは知らなかった」
高らかに笑うファブリッツィオだった。

「アルフレート、才を誇示するとは言わないが、
流石にやり過ぎじゃないか。今、装着している鎧も。
ったく使節団が反乱軍を煽ってどうするつもりだ。
殺してくれと言っているようなもんだろう」
怒っている様な心配している様なそんな感情が入り混じっているために
ラムデールの声には、棘があった。

「バリーシャ女王のお言葉だよ。従うしかないだろう」
この件で揶揄われると、ネタキャラ扱いになってしまう誠一は
不貞腐れてしまうようになっていた。

「まあいい、どんな形であれお互い無事で何よりだ。
こんな状況だ。どんな事をしてでも生きて戻ってこい」
ファブリッツィオは、馬上の人となり本隊に合流すべく走り出した。

「アルフレート。自分の血で鎧を染めるようなことにはなるなよ。
俺は今でもおまえの廃嫡を認めていない。
テルトリア領の次期当主は今でもお前だ」

「勝手に言ってろ、ラムデール。
着々と外堀は埋まってるからな、もう諦めろ」

肯定するでも否定するでもなくラムデールは
意味ありげにニヤリとすると、走り去った。

「おっおい、アル。今のラムデールの表情。何か企んでそうだよな」
ヴェルに言われずとも誠一もそれを感じた。
これ以上、頭痛の種を増やすなと思いながらも
お互いに無事であったことにほっとする誠一であった。

「まっお互いに無事であったからこそできる話しだし。
後々のことは後々に考えるとして、使節団に私たちも追いつかないと」
シエンナの言葉で誠一たちも急ぎ使節団に合流すべく動き出した。
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