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480.対決1
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誠一、ヴェル、そしてシエンナは魔術院で課題をこなす毎日であった。
毎日、敗残兵として魔術院の生徒もグリーンシティに到着していた。
それは騎士学園も同じであった。
戦場で帰らぬ人となった者、腕や脚を失った者、兵士に比べれば、
その数は僅かであったが、学生にも犠牲者はいた。
誠一たち3人が課題を終わらせ、食堂で昼食を取っている時のことであった。
高等部や同学年の学院生たちが彼らを囲んでいた。
「アルフレート、君はどうしてまだ、魔術院にいるんだ?
君の居場所はここじゃないだろう」
「そうだ。麗しの皇帝陛下に尾っぽを振っとけ。
さっさと、反乱軍に戻れよ。この二枚舌野郎」
「おまえのお陰でどれだけ魔術院の評判が落ちたと思っているんだ。責任取れよ」
「お前がここにいると俺たちのキャリアに傷がつくだろ。やめちまえよ」
「ヴェル、シエンナもこんな奴と一緒にいるなよ。こっち来いよ」
事情を知らない学生たちが誠一たちの反乱軍への投降、
王国離反、そして、反乱軍を裏切っての王国への投降を
批判してきた。
世情が彼らを不安にさせ、苛立たせていた。
誰でもいいから、難癖や八つ当たりしていれば、
その間だけでも彼らはそれらの感情から逃れることができた。
「ちょっと、何てことを言うのよ。
あんたたちねー、アルが一体、何故、ここいるか考えたら、
どんな任務に就いていたか分かるでしょうよ」
シエンナが頬を膨らませて、凄んだ。
誠一はあまり迫力を感じなかった。
その代わりにその可愛らしさにほっこりしてしまった。
それは取り囲む男子たちも同じようであった。
その反面、男子たちのにやけ面に女子たちは
不満一杯の表情であった。
よっぽどその女子たちの迫力の方が誠一には恐ろしかった。
「おい、シエンナ。何、男どもをほっこりさせてるんだよ。
それよりおまえら俺を愛称で呼べるほど仲が良かったか?
ヴェルナーさんだろうが!」
ヴェルが傍に置いてある愛用のハルバートを片手に取ると、
頭上で4,5回、旋回させた。
ドン、ヴェルがハルバートの柄の端末を床に叩きつけた。
「ヴェル、やる気か!やるならやってやる。
お前ら臆病者と違って俺らは戦場を経験してきたんだぞ」
1人の男子がそう言って周りを見渡したが、
意外にも他の仲間はそれに迎合せずに目線を合わせようとしなかった。
そこでやっと誠一が口を開いた。
「君たちが一体、僕らに何の不満があるのか分からないが、
正式な手続きに則って決闘を受けようか?」
誰も誠一と目を合わせようとしなかった。
凄んだ本人すら、俯き誠一を見ようとしなかった。
感情を押させた抑揚のない誠一の声が続いた。
「さあ、決闘を望む者は挙手を。
望まぬ者は大人しく席に戻って、課題を再開すればいいさ」
彼等は互いを牽制しながら、じりじりと後退していた。
毎日、敗残兵として魔術院の生徒もグリーンシティに到着していた。
それは騎士学園も同じであった。
戦場で帰らぬ人となった者、腕や脚を失った者、兵士に比べれば、
その数は僅かであったが、学生にも犠牲者はいた。
誠一たち3人が課題を終わらせ、食堂で昼食を取っている時のことであった。
高等部や同学年の学院生たちが彼らを囲んでいた。
「アルフレート、君はどうしてまだ、魔術院にいるんだ?
君の居場所はここじゃないだろう」
「そうだ。麗しの皇帝陛下に尾っぽを振っとけ。
さっさと、反乱軍に戻れよ。この二枚舌野郎」
「おまえのお陰でどれだけ魔術院の評判が落ちたと思っているんだ。責任取れよ」
「お前がここにいると俺たちのキャリアに傷がつくだろ。やめちまえよ」
「ヴェル、シエンナもこんな奴と一緒にいるなよ。こっち来いよ」
事情を知らない学生たちが誠一たちの反乱軍への投降、
王国離反、そして、反乱軍を裏切っての王国への投降を
批判してきた。
世情が彼らを不安にさせ、苛立たせていた。
誰でもいいから、難癖や八つ当たりしていれば、
その間だけでも彼らはそれらの感情から逃れることができた。
「ちょっと、何てことを言うのよ。
あんたたちねー、アルが一体、何故、ここいるか考えたら、
どんな任務に就いていたか分かるでしょうよ」
シエンナが頬を膨らませて、凄んだ。
誠一はあまり迫力を感じなかった。
その代わりにその可愛らしさにほっこりしてしまった。
それは取り囲む男子たちも同じようであった。
その反面、男子たちのにやけ面に女子たちは
不満一杯の表情であった。
よっぽどその女子たちの迫力の方が誠一には恐ろしかった。
「おい、シエンナ。何、男どもをほっこりさせてるんだよ。
それよりおまえら俺を愛称で呼べるほど仲が良かったか?
ヴェルナーさんだろうが!」
ヴェルが傍に置いてある愛用のハルバートを片手に取ると、
頭上で4,5回、旋回させた。
ドン、ヴェルがハルバートの柄の端末を床に叩きつけた。
「ヴェル、やる気か!やるならやってやる。
お前ら臆病者と違って俺らは戦場を経験してきたんだぞ」
1人の男子がそう言って周りを見渡したが、
意外にも他の仲間はそれに迎合せずに目線を合わせようとしなかった。
そこでやっと誠一が口を開いた。
「君たちが一体、僕らに何の不満があるのか分からないが、
正式な手続きに則って決闘を受けようか?」
誰も誠一と目を合わせようとしなかった。
凄んだ本人すら、俯き誠一を見ようとしなかった。
感情を押させた抑揚のない誠一の声が続いた。
「さあ、決闘を望む者は挙手を。
望まぬ者は大人しく席に戻って、課題を再開すればいいさ」
彼等は互いを牽制しながら、じりじりと後退していた。
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