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469.護衛7

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『今更ですが、あなたのことを何て呼べばいいでしょうか?』
向こうの世界でプレーヤーが笑ったような気がした。
確かに今更感があり、それが笑いを誘ったのかもしれなかった。
しばらくプレーヤーからの言葉が心に浮かんでくることはなかった。

『千晴、数字の千に晴天の晴でちはる。
改めて話すと何かこそばゆいですね』

誠一は千晴の言葉に素で反応してしまった。
『えっ女性』

『えっえええ』

『どういうこと?』
プレーヤーから素朴な疑問が投げかけられた。

あの鬼畜な命令を女性がしていたとは、
そう思うと誠一の背中に悪寒が走った。
『いえ、ゲームに興じているので男性の方かと
思っていましたので』
動揺を悟られまいと、何とか言葉を繋いだ。

『そこまではまってないですけどね。
そうだ、誠一さん、今、落ち着いていますから、
話しますけど、大学に在籍していた跡はなかったですよ』

誠一は予想していたが、少なからずまた。動揺してしまった。
おそらくアパートにも何の痕跡も残っていないと思った。
最悪、両親、親族にすら自分がいなかったものとされているかもしれない。

誠一は自分のアパートの住所を千晴に伝えた。
おそらく千晴はネットでその住所を調べているだろう。

『あったわ。確かにその住所はありますね。
念のために見てきましょうか?』

誠一は実家や両親の情報も伝えるかどうか悩んだ末に
アパートの結果の次第にすることとした。
礼を伝えると、また、とりとめもない会話を始めた。
眠くなったのかお風呂に入りたくなったのか、
誠一は千晴がログアウトしたことを確認した。

誠一は、今回の話でプレーヤーに関して
かなりの情報を得ることができた。
プレーヤーは、千晴と言うハンドルネームの女性であり、
恐らくだが自分より5歳ほど歳上の社会人のようであった。
ちょこちょこと会社の愚痴を零していたが、
働くということは何かしらの不満を持つものなのだろうと思い、
適当に誠一は相槌を打っておいた。
鬼畜な所業を命令することから、
相当、ヒステリックな性格の女性なのだろうと予測した。
ここ最近は、おかしな命令をしてくることはなかったが、
いつ何時、感情の赴くままに言葉を投げつけてくるか不安であった。
『神々への反逆者』の称号を得ている今、彼女の言葉に強制力は
なかったが、四六時中、何かを言われては煩わしいに違いなかった。
彼女を刺激しないように気を付けなければと心に誓った。

ヴェルが眠そうな目を擦りながら、交代を伝えに来た。

誠一は思索を止め、マントを羽織って後はよろしくと伝えると、
眠りに落ちた。
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