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463.護衛1

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「ったく王都への空の荷車の搬送護衛かよ。
それじゃあ、全く活躍の場がないじゃん」
レドリアン導師に命じられた任務に愚痴を零すヴェルであった。

「まあ、そう言うなよ。戦場に向かうよりはマシだろ」
誠一の言葉に躍起になって、反論するヴェル。

「くそっ、俺のフレイムチャージが
敵を切り裂く予定だったんだぞ」

「だから、あの技じゃ無理だって」
シエンナがすかさず突っ込みを入れた。

「それより最前線の状況はどうなっているんだろう」
誠一はヴェルとシエンナの言い合いから撤収すると、
最前線の事情について話し始めた。

「それね。さっき、食堂で小耳に挟んだ情報だと、
どうやらダンブルの本軍がそろそろ三角砦に入城するそうよ。
それにグレイガーの軍は、完全に王国軍に補足されているようで、
対策もバッチリらしい。
ちょっと、何よ。そんなにじっと見ないでくれる」
誠一は感心したようにサリナを見つめてしまった。
それを二人の女性がジト目で責めていた。

「いやその、情報の入手が早いなーと思って」

「ちっ、そんな情報、主城に戻る俺らには関係ねえし」
不平不満の塊と化したヴェルが愚痴を零していた。
しかし、キャロリーヌに一睨みされると背を丸めて
一言も不平を漏らさなくなった。

 数日後、誠一たちは荷車の護衛として、主城に向かって出発した。
誠一たち以外にも護衛任務に就く者たちは多数いたが、
皆、呑気なものであった。
飛竜の一団が壊滅して以来、搬送に失敗することはなかった。
脅威と言えば、稀に現れる魔物や喰い詰めて
やけくそになった野盗の群れ程度であった。

「アル、アル、おい、アルってば、起きろよ」
北関を出発してから、2日ほど経っていた。
ヴェルは昼食後の昼寝を楽しんでいた誠一を激しく揺すっていた。

眠たい目を擦りながら、誠一は目を開けた。
雲一つない晴れ、誠一は光が眩しくて、再び目を閉じた。

「アホウ、寝るな。アル!」

いらっ、誠一は少しイラっとした。そのことで誠一は完全に目が覚めた。
「ヴェル、一体、どうしたの?」
誠一は、大したことないならば、
ただじゃ済まさないという雰囲気を誠一は醸し出した。

ヴェルは若干、怯んだが、気になる方を指で指した。
「向こうの方にどうも気になるような煙が上がっている。
アル、見えるか?」
目を凝らすと、確かに煙が上がっている様に誠一にも見えた。
しかし、誠一はヴェルのようにはっきりと捉える事が出来なかった。

「どうする、アル?一応、偵察に向かうか?」

誠一は護衛の守備隊長でなく、決定権は無かった。
「うーん、ちょっと相談に行ってくるよ。ちょっと待ってて」
そう言い残すと、誠一は守備隊長の方へ向かった。
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