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461.帰陣3
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通路に複数の足音が誠一の耳に入ると、
誠一は慌てて立ち上がった。
ローブに杖、如何にも魔術師の風体の男に
誠一はにっこりと表情を和らげて、挨拶をした。
「レドリアン導師、お久しぶりです。
再びお会いできたことを嬉しく感じます」
眉目秀麗の青年の物腰柔らかな態度、敬愛を示す言葉が
一瞬であったが、レドリアン導師の自尊心を満足させ、
彼等に対する恨みつらみを忘れさせて、彼の憤怒の形相が崩れた。
レドリアン導師は、頸を左右に大きく振り、
その気分を振り捨てた。
「正門から堂々と入城しようとするとは、
貴様ら一体、どういうつもりだ」
「そもそも貴様ら何故、任務を放棄して戻って来た?」
「あー本当に貴様らは世迷言を俺に言い、迷惑をかけるんだ」
「貴様らのせいでどうして俺が閑職に回されなければ。
何故、4席、5席の小僧っ子に出し抜かれなければ」
堰を切ったように不満をぶちまけているレドリアン導師であったが、
その声は悲痛な叫びでなく、ぶつぶつと永遠に続く
呪詛のような呟きであった。
誠一たち、護衛、そして守備兵もドン引きであった。
「どっ導師、この者たちをどういたしますか?」
護衛の1人が遠慮気味に尋ねた。
はっと我に返ったレドリアン導師は、
日が眩しい訳でもないはずなのに手をかざして目を覆った。
「そうだな、そうだな。このエスターライヒ家を語る不届き者は、
牢屋にでも放り込んでおくか。尋問は直々にするか、連れて行け」
己の心に鬱積した思いをぶつける玩具を不意に入手でき、
レドリアン導師の口元が奇妙に歪んでいた。
守備兵が誠一たちを連行しようとした時、
奇妙な声が黒いローブを震わせながら、聞えて来た。
「ふっふっふっ。導師、良いのですか?
私たちをそのように扱っても」
レドリアン導師は声の主の方へ胡散臭い目を向けた。
「忘れていないでしょうね。魔術戦の結果を」
レドリアン導師の耳が髪がピクリと上下に跳ねた。
「私はここに要求する」
レドリアン導師の口元が声の主より早く動いた。
まさに高速詠唱すら凌駕する速度で命令が下された。
「彼らに一室を準備しろ。士官室相当を人数分、直ぐに用意しろ。
彼らは非常に重要な案件を行って来た。
それ相応の対応をしろ。さっさとヤレ」
レドリアン導師の豹変に兵士達はついていけずに
立ち尽くしてしまった。
レドリアン導師は、憤怒の形相が今度は守備兵に向けられた。
その表情に兵士たちは我に返り、急ぎ準備に向った。
「さて、宿舎でお休みになる前に一応、
これまでのお話をお伺いしておきましょうかね」
その言葉は至極丁寧であったが、容易に棘が含まれていることを
誠一たちは感じ取ることができた。誠一は非常に不思議であった。
以前のレドリアン導師であれば、この程度の感情の発露は
容易に覆い隠していたからであった。
誠一たちは執務室に案内された。
誠一は慌てて立ち上がった。
ローブに杖、如何にも魔術師の風体の男に
誠一はにっこりと表情を和らげて、挨拶をした。
「レドリアン導師、お久しぶりです。
再びお会いできたことを嬉しく感じます」
眉目秀麗の青年の物腰柔らかな態度、敬愛を示す言葉が
一瞬であったが、レドリアン導師の自尊心を満足させ、
彼等に対する恨みつらみを忘れさせて、彼の憤怒の形相が崩れた。
レドリアン導師は、頸を左右に大きく振り、
その気分を振り捨てた。
「正門から堂々と入城しようとするとは、
貴様ら一体、どういうつもりだ」
「そもそも貴様ら何故、任務を放棄して戻って来た?」
「あー本当に貴様らは世迷言を俺に言い、迷惑をかけるんだ」
「貴様らのせいでどうして俺が閑職に回されなければ。
何故、4席、5席の小僧っ子に出し抜かれなければ」
堰を切ったように不満をぶちまけているレドリアン導師であったが、
その声は悲痛な叫びでなく、ぶつぶつと永遠に続く
呪詛のような呟きであった。
誠一たち、護衛、そして守備兵もドン引きであった。
「どっ導師、この者たちをどういたしますか?」
護衛の1人が遠慮気味に尋ねた。
はっと我に返ったレドリアン導師は、
日が眩しい訳でもないはずなのに手をかざして目を覆った。
「そうだな、そうだな。このエスターライヒ家を語る不届き者は、
牢屋にでも放り込んでおくか。尋問は直々にするか、連れて行け」
己の心に鬱積した思いをぶつける玩具を不意に入手でき、
レドリアン導師の口元が奇妙に歪んでいた。
守備兵が誠一たちを連行しようとした時、
奇妙な声が黒いローブを震わせながら、聞えて来た。
「ふっふっふっ。導師、良いのですか?
私たちをそのように扱っても」
レドリアン導師は声の主の方へ胡散臭い目を向けた。
「忘れていないでしょうね。魔術戦の結果を」
レドリアン導師の耳が髪がピクリと上下に跳ねた。
「私はここに要求する」
レドリアン導師の口元が声の主より早く動いた。
まさに高速詠唱すら凌駕する速度で命令が下された。
「彼らに一室を準備しろ。士官室相当を人数分、直ぐに用意しろ。
彼らは非常に重要な案件を行って来た。
それ相応の対応をしろ。さっさとヤレ」
レドリアン導師の豹変に兵士達はついていけずに
立ち尽くしてしまった。
レドリアン導師は、憤怒の形相が今度は守備兵に向けられた。
その表情に兵士たちは我に返り、急ぎ準備に向った。
「さて、宿舎でお休みになる前に一応、
これまでのお話をお伺いしておきましょうかね」
その言葉は至極丁寧であったが、容易に棘が含まれていることを
誠一たちは感じ取ることができた。誠一は非常に不思議であった。
以前のレドリアン導師であれば、この程度の感情の発露は
容易に覆い隠していたからであった。
誠一たちは執務室に案内された。
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