転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた

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452.閑話 とある事務所での情景3

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帰社後、千晴と清涼は居酒屋の一室にいた。
無論、浮いた話や会社の愚痴でなく、
話題の中心は『ヴェルトール王国戦記』であった。

「でさ、アルフレートは『オペレーションアーチロード』には
参加してないんだ」
清涼は冷酒をぐいぐいと呑みながら、話しているが、
空いている左手はひっきりなしにテーブルに
広げられたパッドを忙しそうに行き来していた。

「うん。ロム専だから良くわからないけど、
軍から置いてきぼりを受けて、森を彷徨っているよ」

「ぷっはっ、何それ。良ければ、もう一回、ちょっと見せてよ」
右手の冷酒は空になり、箸に持ち返られていた。
素早く揚げ物を摘まんでもぐもぐと口を動かしていた。
その上、顔が千晴に近づき、千晴のバッドを覗き込んでいた。
色恋沙汰の欠片もない清涼の行動であった。

「何此処、闇の勢力圏じゃんよ。いつの間にか開放されてたんだ。
まさか、あの外れと言われていたジェイコブ遊撃軍への
従軍がもしかして、裏イベへの参加条件だったのか。
いや、まさかな」

くちゃくちゃと歯切れの悪い肉を噛みながら、独り言を呟いていた。

「佐藤さん。アルフレートのスペックを見せてよ」
強引に清涼が右手をねじ込んで、千晴のパッドを操作しようとした。

「ちょっと、見せます、見せますから、落ち着いて」
清涼の態度に辟易しながらも千晴は画面に誠一のスペックを表示した。

覗き込んだ清涼の目が一瞬だが、あやしく光ったような気が
千晴はした。
お互いの顔が近いせいか相変わらずくちゃくちゃと
肉を咀嚼する音がより鮮明に千晴に聞えた。
「清涼さん、どうしましたか?
何か気になることでもありましたか?」

清涼は咀嚼しきれぬ肉をペッとお手拭きに吐き出して包んだ。

「いやあ、確かアルフレート、いや誠一さんだっけかは、
確か『神々への反逆者』の称号を得ていたよね」

「ええ、確か持ってましたけど、どうしました?」
清涼は千晴に聞えない位に低い声でぶつぶつと呟いていた。
時節、ついに見つけたのに、くそっ、しかし一体どこで、
噂は本当だったのに、脈絡のない彼の言葉を千晴は
さっぱり理解できなかった。

清涼をよく見ると、珍しく左手が止まっており、
頬が真っ赤になり、目が黄色く濁っていた。
こうも一瞬で様変わりするものだろうか。
千晴はその変わりようが恐ろしくなってしまった。

「そうだ、そうだ。
あのバカ女の開催しているイベントを即刻辞めさせないと。
佐藤さん、本当に迷惑していたよね。
僕から莉々子にきっちりと言っておくから」

黄色く濁った目は、千晴を捉えておらず、
その視線は彼女のパッドを捉えて離さなかった。

「そう言えば、誠一さんは、この世界での自分の情報以外に
何か欲しいものはなかったかな」
清涼がさりげなさを装っていたが、あまりにも
その変わりようが唐突で千晴は訝し気に清涼を見返した。
「いや、他意はないけどさ。
何か目的があって、これほどの冒険を
しているのかなと思ってさ」

「確かエリクサーとか万能回復薬がどうこうと
言っていたことがあった気が」

「それか!エリクサーか。
太古の神殿かそれともガチャ、
いや誰かがサイトに売りに出しているかも」
千晴の言葉を途中で遮り、清涼が叫んだ。
ヒョイぱくヒョイぱくと軟骨唐揚げを摘まむと、おもむろに言った。

「佐藤さん、ここは僕が持つから、帰ろう。
それと誠一さんが死なないようにできる限りアイテムや
武器、防具、護符を送ってあげて。
本当に危険な状況なら僕に連絡をして。
直ぐにクランから助けに向かわせるからさ。いいね」
清涼の勢いに呆気にとられた千晴だったが、一先ず、頷いた。

二人は居酒屋を出ると駅で別れた。
一人になると清涼は、近くの喫茶店に入ると急ぎ、パッドを並べた。
「まさかまさか、本当にあるとは!あの称号が!」
歓喜の為だろうか、呑み過ぎのためだろうか、
清涼はぶるぶると震えていた。
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