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450.閑話 とある事務所での情景1
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清涼とチャットルームで話した翌日、
千晴は決意を胸に出社した。
どの道、ここを退職して行くあてもなく、
少なくとも日々の1/3を拘束されるこのば場で
びくびく過ごすのは精神衛生上も良くないと前向きに
考える様にした。
「おはようございます」
うん、まずは挨拶だ。普段より大きめの声を出して、
事務室に入室した。既に清涼はおり、挨拶を返してきた。
坪内はその声にびくりと反応したが、
挨拶は返さずに背中を丸めて座っていた。
いつの間にか島崎の事務机の備品が無くなっていた。
否、置いてある段ボールに纏められているのだろう。
ルーティンワークの朝礼の準備と管理職への珈琲やお茶出し。
出社してくる社員には、先ほどと変わらずの挨拶をしたが、
挨拶を返さない女子もいた。
体育会系の会社であり、千晴のあいさつは、概ね好評のようであった。
多くは千晴に負けまいと声を張り上げて挨拶を返していた。
やり過ぎた!これが日常になるとちょっと大変かもと
少し後悔する千晴であった。
朝礼での管理職からの有難いお話しも千晴の朝の
挨拶のことであった。
好意的に捉えている節があり、今後も続けるようにと
有難くもないお言葉を一般社員一同は受け取ってしまった。
清涼は何がおかしいのか千晴を見て、必死に笑いを堪えていた。
そういったことがあっても直ぐに人の評価や態度など変わる訳もなく、
休憩中や昼食時の居心地の悪さは相変わらずであった。
しかし、千晴は先週の様に縮こまっているようなことはなく、
堂々としていた。
我ながら自分の心境の変化に千晴自身も驚いていた。
それもゲームの影響と思うと尚更であった。
昼食を済まして、事務所に戻ると、清涼が何台ものPCパッドを
デスクに広げて『ヴェルトール王国戦記』をプレイしていた。
その姿を目にして、改めて千晴は、これも一種の並列処理能力の
高さがなせる技なのだろうと感心してしまった。
「やあ、佐藤さん。いま大変なことになっているよ。
舞台は整った。大会戦がまもなく始まるよ。
今回は、今までにない規模になるから、
早くアルフレートに指示を出した方がいいよ。
ダンブル派は賭けにでたよ。2段構えの奇襲作戦を
敢行するために闇の勢力圏を進軍している。
くそっ、有休を取ればよかった」
話ながらも左右の手は止まることなく
恐ろしい速度でパッドを叩いていた。
「アルフレートは、今、その遊軍に置き捨てられて、
その闇の森を彷徨ってるけど」
千晴の説明に清涼の指が止まった。
「えっ」
「ふえ」
「いや、ふえじゃなくてさ。
確かにアルフレートは、佐藤さんの指示を
受け付けないけど、それ本当?」
千晴は清涼にアルフレートの現在地が分かるように
パッドの画面を見せた。清涼はその画面を覗いた。
自然、事務所と言う空間で二人の顔が近づいた。
「いやいや、これってさ。ハズレって言われてる
ジェイコブ遊撃軍のルートじゃんよ。
その上、軍を離れて何でこんなところをうろついているのさ」
清涼は笑っていた。
千晴はそう言われてもどう答えていいのか分からずに曖昧に頷いた。
千晴は決意を胸に出社した。
どの道、ここを退職して行くあてもなく、
少なくとも日々の1/3を拘束されるこのば場で
びくびく過ごすのは精神衛生上も良くないと前向きに
考える様にした。
「おはようございます」
うん、まずは挨拶だ。普段より大きめの声を出して、
事務室に入室した。既に清涼はおり、挨拶を返してきた。
坪内はその声にびくりと反応したが、
挨拶は返さずに背中を丸めて座っていた。
いつの間にか島崎の事務机の備品が無くなっていた。
否、置いてある段ボールに纏められているのだろう。
ルーティンワークの朝礼の準備と管理職への珈琲やお茶出し。
出社してくる社員には、先ほどと変わらずの挨拶をしたが、
挨拶を返さない女子もいた。
体育会系の会社であり、千晴のあいさつは、概ね好評のようであった。
多くは千晴に負けまいと声を張り上げて挨拶を返していた。
やり過ぎた!これが日常になるとちょっと大変かもと
少し後悔する千晴であった。
朝礼での管理職からの有難いお話しも千晴の朝の
挨拶のことであった。
好意的に捉えている節があり、今後も続けるようにと
有難くもないお言葉を一般社員一同は受け取ってしまった。
清涼は何がおかしいのか千晴を見て、必死に笑いを堪えていた。
そういったことがあっても直ぐに人の評価や態度など変わる訳もなく、
休憩中や昼食時の居心地の悪さは相変わらずであった。
しかし、千晴は先週の様に縮こまっているようなことはなく、
堂々としていた。
我ながら自分の心境の変化に千晴自身も驚いていた。
それもゲームの影響と思うと尚更であった。
昼食を済まして、事務所に戻ると、清涼が何台ものPCパッドを
デスクに広げて『ヴェルトール王国戦記』をプレイしていた。
その姿を目にして、改めて千晴は、これも一種の並列処理能力の
高さがなせる技なのだろうと感心してしまった。
「やあ、佐藤さん。いま大変なことになっているよ。
舞台は整った。大会戦がまもなく始まるよ。
今回は、今までにない規模になるから、
早くアルフレートに指示を出した方がいいよ。
ダンブル派は賭けにでたよ。2段構えの奇襲作戦を
敢行するために闇の勢力圏を進軍している。
くそっ、有休を取ればよかった」
話ながらも左右の手は止まることなく
恐ろしい速度でパッドを叩いていた。
「アルフレートは、今、その遊軍に置き捨てられて、
その闇の森を彷徨ってるけど」
千晴の説明に清涼の指が止まった。
「えっ」
「ふえ」
「いや、ふえじゃなくてさ。
確かにアルフレートは、佐藤さんの指示を
受け付けないけど、それ本当?」
千晴は清涼にアルフレートの現在地が分かるように
パッドの画面を見せた。清涼はその画面を覗いた。
自然、事務所と言う空間で二人の顔が近づいた。
「いやいや、これってさ。ハズレって言われてる
ジェイコブ遊撃軍のルートじゃんよ。
その上、軍を離れて何でこんなところをうろついているのさ」
清涼は笑っていた。
千晴はそう言われてもどう答えていいのか分からずに曖昧に頷いた。
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