転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組！だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業？それとも社畜？誰か助けて

437.夢の世界１

「次は翔陵国際大学前、翔陵国際大学」
聞き慣れた電車のアナウンスが誠一に耳に入って来た。
誠一は眠い目を擦りながら席を立ち、降車口に向かった。
誠一の立った席は直ぐにサラリーマンらしき人に占拠されていた。

改札口を通過する際、誠一は後ろから声をかけられた。

「おはろー誠一」

振り向くとそこには、ダークグリーンの絹のような長い髪を
揺らしながら、ダークグリーンの魅力的な瞳が誠一を見つめていた。

普段から大学で見慣れた娘であったが、
誠一は何故か見惚れてしまい、改札で立ち止まってしまった。

誠一の幸せタイムが突然、ビービーというノイズで邪魔された。
何故か自分に向かって2名ほどの駅員が近づいてくる。
目の前の美少女は、あわあわと挙動不審者のように震えていた。
それもまた、美しいと誠一は思い、再び見惚れてしまった。

「君、改札でぼんやりしないで。
周りが迷惑するでしょ。向こうで精算して」
二人の駅員に挟まれて、事務所に連れていかれる誠一だった。
心配そうにその様子を眺めていた娘は何を思ったのか
トコトコと軽快な足取りで誠一の後を追った。

「きみぃ、朝の混雑時に困るよ。
まあ、さっさと精算するから少し待っていなさい」

「まったく人様の迷惑も考えずに
あんなところでぼんやりされても困る。
少しは周りに気を使えるようになりなさい」

さっさと清算を済ませて、追い出せばいいものを
陰陰滅滅と二人の駅員は説教とも嫌がらせともつかぬ話を続けていた。

全くを以て悪いのは自分であったために誠一は、
彼等の気が収まることを辛抱強く待っていた。

コンコン、事務所のドアを叩く音がした。
駅員が応対に出ると、そこには今にも泣きそうな娘が立っていた。
「ご、ごめんなさい。
講義で見知った人だったので、こんな混雑の中で
つい挨拶をしてしまいました。ごめんなさい」

上目づかいの瞳に涙が溜まっているのを見た駅員は、
うろたえてしまった。
「いっいや、大したことないから、精算を済ますだけだから」

「そ、そうなんですか。本当にすみませんでした。
改札を出たすぐそこで待ってます」

娘はとぼとぼと改札口を出ると、視線を落として
窓越しに彼等の見える所で立ち止まった。

「ちっ、おい、さっさと精算して出ろ。今後は気を付けろよ」

「俺たちも嫌がらせで言っている訳じゃないんだ。
他の客からのうざいクレームが本部にすぐさま飛ぶんだ。
なっ、理解しろよな。さっさと行け。
あの娘に泣かれたら本当に面倒事になりそうだ」

誠一はさっさと清算を済ませると、事務所を後にした。