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434.集結地10

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「エアチャージ」
誠一の放った空気の衝撃波が化物の皮膚をえぐった。
血がだらだらと流れ出して、歩く毎に地を濡らした。

気味悪かったが、誠一は確信した。

「ヴェル、シエンナ。
魔術で攻撃すれば、終わる。脚を狙って!」

人の身において、あれ程に肥大された筋繊維による圧迫に
血管がもたずに内出血を起こしたのだろう。
死して、ゾンビ化でもしていれば、話は別であったのかもしれないが、
人の身体機能のため、血流が止まり、運動能力が著しく損なわれたのだろう。
 
化物を風が切り裂き、炎が焼き斬り、水が切断した。
化物は地に臥しながらも地を這い、前進を止めなかった。

「うおおおっ、燃え尽きろファイアボール」
悲鳴にも似た叫び声でヴェルが巨大な火球で化物を燃やし尽くした。

「はぁはぁ、悪趣味なもん見せやがって」
ヴェルが微動だにしないNランクたちを睨みつけた。

「おい、われらが主より伝言を承った。
アルフレートとやら、ありがたく受け取るがいい」
意志あるうちの1人が誠一の前で両膝をつき、
夜空に向かって両手を広げた。

「貴様は、狩猟祭にかかわらずコロス。
ゲームとはいえ、俺を侮辱したことは万死に値する。
今回は素体の耐力が足りずに失敗したが、
次は完璧な覚醒でまず、貴様の仲間を弄り犯し、嬲り殺す。
このまま終わるのも癪だ。貴様へ夢に出るような
楽しいトラウマを与えてやろう」
Nランクのキャラクターたちが二つのポーションを
同時に飲み干した。
直後、破裂した。血の臭いが瞬時にこの地を支配した。

「ぎゃはっはは。アルフレート、貴様のせいだ。
奴らの中には親兄弟、妻子のある者もいただろう。
貴様は残された家族の怨嗟を一身に浴びて、苦しめよ。
それと言っておく、俺はニートでも社畜でもない。
製薬会社のエリート研究員だ。
苦しい、ぐううっ。死にたくない」
言い終えると魔術師風の男もポーションを飲んで
誠一たちの前で破裂した。

大きな血だまりには、飛散した肉片、臓器、骨が散らばっていた。
誠一の言葉が多くの人の将来の可能性を潰してしまった。
ぼんやりと眼前の予想だにしなかった惨状を誠一は眺めていた。

「アル、しっかりして!あなたは何もしていないなわよ。
屑神の言葉に惑わされないで」
シエンナが誠一の両肩を掴んで彼から惨状を遮った。

「ヴェル、シエンナ。アルフレート君を荷車に運びなさい。
キャロは馭者を。サリナは先頭、俺が後方を警戒する。急げ」

ロジェが素早く指示を出した。

「兄貴、一人残ってるけど、あいつはどうすんだ」

「放っておけ。あの男を介して、我々を監視しているだけだ」
一旦、一息ついて、ロジェは一際、声を大きくした。
「神は言った。皆殺しだとな。
だから残ったあと一人も俺らを見失えば、
神の怒りが下されるだろうよ。いくぞ」
騎乗したロジェはサリナに出すように声をかけた。
サリナが頷き、右手を上げて出発の合図を出した。
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