上 下
433 / 830

426.集結地2

しおりを挟む
「アルフレート君、どうした?この気候だ。
寝付きにくいと思うがしっかと睡眠をとらないと後々に響くぞ」
ロジェが焚き火に枯れ木を加えていた。

「あんたねー仮にも冒険者を名乗るなら、
どんな状況でも睡眠を取れるようになっておかないと大変だよ。
遺跡や迷宮の探索には必須の技術でしょ」
そう言いながらも誠一が座れるように場をサリナは作った。

「気候もですが、色々と気になることが多くて、
考えてしまうんです。
例えば、各隊に提示された集結地までのルート。
魔物や闇の勢力の地を迂回する行軍ルートとか」

「確かにな。どうにも胡散臭い。
ああいった手合いとダンブルが深く結びついていると
考えるのが妥当だな。
それにどうにも我々をあまりにも疑わなさすぎる」

「ギルドに集まる情報からもかなり信憑性が高い話よね。
ただ、アルフレート、集結地までのルートに関しては
何で気にしているの?」

サリナの疑問に誠一は答えた。
「このルートは僕らだけだからさ。
ここを他のグループが通過した気配もなければ、姿も全く見えない。
何かしら恣意的なものを感じるよ」

誠一は、ロジェの背後の真っ暗な闇を見つめているようであった。
誠一の左手がサリナの右手にいつの間にか重ねられていた。
サリナは誠一の行為にびくりと身体を震わせたが、
拒絶することはなかった。
ロジェが目を細めて、それを見咎めたが、
誠一は一向に彼女の手を離すことはなかった。

「やれやれ、二人も相手がいるのにアルフレート君、
君は随分と女性にご執心なんだな。
まあ、いい。あまり大きな声は出すなよ」
そう言うとロジェは欠伸を一つしてから立ち上がり、
馬車の方へ向かった。

「ちょっと、アルフレート、私にそんなつもりはないからね。
手を離しなさい」
サリナはそう言いながらも手を振り払う素振りはなかった。
誠一はサリナに近づいた。
丁度、誠一がいた辺りを凄まじい勢いで矢が通過した。
そして、素早くサリナが矢の飛んだ方へ火のついた薪を
放り投げた。
薪は暗闇を灯していたが、地に落ちることはなかった。
薪は浮いたまま、音もなく誠一とサリナに近づいて来た。

「いやいや、君たち、面白いね。
グレイガーに聞いていたよりも随分と面白いよ。
まっ面白いだけでそれ以上でもそれ以下でもないけどね。
うーんうーん、その顔、どっかで見たことある様な無い様な。
まっいいか」
火に照らされてその姿を現したモノは、魔人であった。

「貴様は確か北関を攻略していた魔人!」
誠一はその姿を見て、思い出した。
上位魔人の3人組のうちの1人であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

料理の腕が実力主義の世界に転生した(仮)

三園 七詩
ファンタジー
りこは気がつくと森の中にいた。 なぜ自分がそこにいたのか、ここが何処なのか何も覚えていなかった。 覚えているのは自分が「りこ」と言う名前だと言うこととと自分がいたのはこんな森では無いと言うことだけ。 他の記憶はぽっかりと抜けていた。 とりあえず誰か人がいるところに…と動こうとすると自分の体が小さいことに気がついた。 「あれ?自分ってこんなに小さかったっけ?」 思い出そうとするが頭が痛くなりそれ以上考えるなと言われているようだった。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

転生幼女の異世界冒険記〜自重?なにそれおいしいの?〜

MINAMI
ファンタジー
神の喧嘩に巻き込まれて死んでしまった お詫びということで沢山の チートをつけてもらってチートの塊になってしまう。 自重を知らない幼女は持ち前のハイスペックさで二度目の人生を謳歌する。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...