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421.軍議1

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ヴェルやシエンナが皇族と刃を交えている時、
誠一は、貴族たちが集まっている大部屋の片隅の椅子に
腰を下ろしていた。

 少し離れたところにジェイコブも座っていたが、
誠一に話しかけるような素振りは全く無かった。

様々な視線とざわめきが誠一を囲んでいた。
先日のパーティーが原因であろうことは誠一も分かっていた。
居心地の悪さを感じながらもどうすることもできず、
早く軍議とやらが始まれと心の中で毒づいていた。

 前方の方からざわめきが静けさに取って変わられていった。
誠一も空いている一際豪奢な椅子に視線を向けた。
どうやらダンブルがシャービスとガズンスを伴って現れようであった。
ダンブルは席から立ち上がろうとする貴族たちを右手で制して、
自らも席についた。

「諸君、忙しい最中、集まってくれたことに感謝する。
これより賊軍討伐の軍議を開始する」
だるそうなダンブルがだるそうな声で宣誓した。
続いて、シャービスが現在の状況に関して、説明を始めた。

 戦は膠着状態となっており、お互いの出方を窺っている様相を
示していた。
バリーを中心とした大貴族たちは、勇ましいことを唱え、
前線への大軍の派兵と早期殲滅を迫った。
一方でダンブルの古参の将は、先に軍を動かすは
愚の骨頂とそれを諫めた。
膠着状態にある戦場で先に軍を動かすのは、
非常に危険だと主張を譲らなかった。
軍議は膠着状態に陥っていた。
ダンブルは眠そうな目を貴族たちに向けた。
右手に持つ鮮やかな紅いワインの注がれているグラスをかざした。
そして、目の前のテーブルに円弧を描くように垂らした。

「おおっ!」

「これは」

「流石は陛下」

どよめきと歓声が大部屋を支配した。
誠一には何のことか皆目見当もつかなかった。
そもそも戦略・戦術の素養がなく、そんなことを考えたこともなかった。
単にダンブルがテーブルにワインを零したようにしか映らなかった。

既に勝利を手にしたような賑わいをシャービスが制した。
「栄えある別動隊を率いる将軍は如何いたしましょうか?」

「バリー・グレースが責任をもって果たしましょうぞ」

「いや、某が」

「我が一族の全てを以て、遂行いたします」

枚挙に暇がない程の自薦他薦があった。
最早、膠着状態の三角砦に向かうことなど諸将に
とってどうでもいいことになっていた。
別動隊の引き立て役など誰が好んでするものかという雰囲気が
蔓延していた。ダンブルは愉快そうであった。

「よろしい、皆の気迫、しかと受け止めた。
ならば、そうだな。砦に向かうのは余自らとしよう」

一瞬で部屋が静まった。
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