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415.代理戦5

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グレイガーは、ブラナスの助言を無視した。
「アルフレートよ。貴様を捕らえるか、出来ぬなら殺せと啓示を賜った。
大人しく捕まるなら良し。でなければ、殺す。貴様はどちらを選ぶ?」

誠一はとにかく辞を低くして答えた。
そして、プレーヤーに了解して貰っていた啓示を話した。
「我が神より賜りました神のお言葉は、『抗え』とのことでした。
さて、どの啓示を信じるべきかと愚考しています」

誠一の卑屈な態度がグレイガーの矜持をほんの僅かだが、
満たしたのだろう。唇を釣り上げて、グレイガーが嘲笑した。
「教団に認知されぬ啓示など、この世界において何の意味もなさぬ。
おまえがその啓示を信じるのは勝手だ。だが神の言葉は我が言にあり。
そうだな、貴様の啓示に何の価値もない。
貴様はキャロリーヌを賭けろ。俺は啓示を賭ける。
負ければ、俺の受けた啓示は否定する」

誠一は息を飲んだ。啓示の否定。
それがどれほどの苦痛か知っていたからだ。
近くにいるサリナも驚きの表情であった。

「殿下、それはちと十重二十重に不味いな。
悪いが止めさせて貰う」
ここまで無関心を装っていたブラナスが口を挟んだ。
バラムは誰かと話している様であった。

「この地域で神の敬虔なる使徒の立場を預からせて貰っている以上、
殿下が負けた時、非常に困ったことになるだろう。面倒事は御免だ」
ブラナスの言いたいことをグレイガーは充分に理解していた。
6神の一柱、アルデット教により既にグレイガーの啓示は開示されていた。
それを否定することは、王太子の立場であっても
由々しき事態に発展することは容易に想像できた。
それ以前に恐らくグレイガーが神罰により心が保てないだろう。

「殿下、軍議の招集が陛下よりお達しされました」
取次らしき者と話していたバラムがグレイガーに言付けた。

「ちっ仕方ない。行くか。
アルフレート、これでうやむやになったと思わないことだな」
踵を返し、グレイガーは練兵場を去っていった。

「アルフレート様、あなたにも召集がかかっております。
至急、向って頂きたく」
バラムが誠一に軍議へ向かうことを促した。

「あっはい」
誠一は間の抜けた返事をしてしまった。
それもそのはずだろう。誠一は軍を指揮したことも
軍略を練ったこともなく、一体、何をそこで議論するのか
全く分からなかった。
誠一にあるのは、アルフレートという素体が
読み学んだ兵学の知識と誠一が遊んだシュミレーションゲームで
得た知識と経験だけであった。

軍議へ向かわざるを得ないため、誠一はのろのろと動き出した。
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