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414.代理戦争4

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「一本の矢よ。その矢尻へ神の拳を顕現させよ。
フォストゴッテス」
キャロリーヌが空に向けて矢を番えた。
誰しもが氷壁越しの彼女の姿に視界を奪われた。
その美しさだけでなく、彼女の頭上に顕現する巨大な拳に胆を奪われていた。

「あのバカ。やり過ぎだ。練兵場を破壊する気か」
ロジェが慌てて、キャロリーヌを止めに移動した。

「ギャン。痛いわねー」
ロジェに頭を小突かれたキャロリーヌがその場に蹲っていた。
シエンナは我慢できずに笑ってしまった。

弓兵や魔術師は安堵の表情をしていた。
あの技が放たれていれば、ただでは済まないことは
容易に彼等にも想像できた。

「ちっここまでだな」
大盾と剣を放り投げて、降参の意をブラナスが示した。

腰を抜かしたジェイコブは戻って来た取り巻き達に抱えられていた。

パチパチ、パチパチ。

練兵場の入り口から乾いた拍手の音がした。
先頭を歩く男が拍手をしながら、誠一の方に向かってきた。
その男の拍手だけが練兵場に響いた。

「ブラナス、君は神のご意思に背くのかい。
それとも神罰に耐えるのかな」

「けっ彼我の実力差を鑑みて、手を引けとのお達しだ。
俺は手を引くぞ」
ブラナスは大盾と剣を拾った。
しかし、その言葉を以てしてもグレイガーは納得しなかった。
「神が初志を曲げるなどありえないだろう。
ブラナス、神のご意思を曲解していないかい?」

「奴らの考えなど、知るかよ。
言わして貰うが、こいつら実力あるぞ。
ファーリの詩通りかもしれん」

グレイガーの顔が酷く歪んだ。
頸がぎちぎちとなりそうなほどに不自然な動きで
彼の後方に控える者たちの方へ顔を向けた。
「バラム、ブラナスの言っていることは本当か?」

「はっ。詩の通りかどうかは別としましても実力はあります。
現にこの状況を打破しております。
その上、ブラナス殿を降参させております」
バラムは謹直な態度を崩さずに必要最小限の言葉で伝えた。

「殿下、止めておけ。こいつらには道場剣術は通用せんぞ。
確実に殺したいんなら、前線からナサレノやバルフォードを
召喚するんだな。
俺クラスでは、やるかやられるかどっこいどっこいだ」

話に置いてかれた誠一は聞くことに留めていた。
大体の事情は、彼等の話から把握することはできた。

「良くわかった。もうよい。
おまえは単に臆病風に吹かれただけだ。
等身大以上にこいつらを見定めて、びびっているだけだろう。
バラム、ブラナスの我らが皇国より受けている恩恵を
全て停止させろ」

「殿下、いけませぬ。それは陛下のお定めになることです。
今のお言葉は聞かなかったことにいたします故にお納めください」

ブラナスはどこ吹く風の如く我関せずの態度であった。
弓兵や魔術師はどうしていいか分からずに事の経緯を見守っていた。
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