転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組！だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業？それとも社畜？誰か助けて

411.代理戦1

「駄目だ駄目だ、絶対に駄目だー。
おまは、ここにいろ。街でも散歩していろ」
ジェイコブは、必死に誠一が街を出ることを妨害していた。
無論、バリーやグレイガーに言い含められているからであった。

「絶対に駄目だ！おまえ、なんで言うことを聞かないだよ。
そんなに身体が鈍るとかどうとか言うなら、
俺が鍛えてやるから今らから練兵場に行くぞ。さっさと来い」
ジェイコブは、必死に誠一の腕を掴んでいた。
流石にそれを振り切ってまでギルドに向かうつもりは誠一にはなかった。

「わかりましたから、ジェイコブさん、腕を離してください。
それで、理由は何ですか？」

「理由？理由がいるのか。理由か。理由と言っても」
ジェイコブの目が泳いでいた。
暫くすると、その目の視線の先はバラムに固定された。

ジェイコブの挙動だけで誠一には十分何かしらの理由があることを
察することができた。

バラムが珍しく暗い表情をしていた。
ジェイコブに失望しているのだろう。
「アルフレート様、先日のパーティ後にあなた様への声望が
上がっております。
皇国の一翼を担う将として、兵を鼓舞して頂きたく
上層部は検討しております。
その為、方針が定まるまで今しばらくグレートウォールに
腰を落ち着けて頂けないでしょうか？」

真の理由を話してはいないと誠一は思っていたが、
断りにくいバラムの話であった。
誰の意図かを知るためにもグレートウォールに
留まることに誠一はした。
「わかりました。グレートウォールに滞在します。
身体を動かしたいので、今からジェイコブさんに
稽古をつけて貰いましょう」
嫌味たっぷりにジェイコブに向けて、誠一が話した。
誠一の実力を十分に知るジェイコブが訓練を嫌がって
断ることを見越しての言葉であった。

「えっ今から、準備が。ちょっと待て。
何で今からなんだよ。おい、ちょっと聞いて来い」
ジェイコブが慌てて、取り巻きの1人を練兵場に走らせた。
バラムの表情は益々、暗くなっていった。

「まあ、いいでしょう。
練兵場が空いてなければ空いてないでいいので、
取り敢えず向かいましょう」
誠一に賛成した他のメンバーも歩き出した。

呆然と立ち尽くしていたジェイコブは慌てて、彼等の後を追った。
視線の先は何故か誠一でなく、キャロリーヌに向かっていたのは
この男の性であろう。

練兵場には傭兵や冒険者もおり、誠一の見知った顔も
幾人か訓練をしていた。
何人かと挨拶を交わし、誠一はヴェルと訓練を始めようと
思った矢先、ジェイコブが冒険者と諍いを始めた。