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392.地方慰撫10

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ロジェがため息混じりにいくばかのコインを入れた。
「どういうつもりで近づいた。いい加減、その呪歌を解かないとただでは済まないぞ。俺はともかく二人の憤怒の感情は充分に感じているだろ」

「それもそうですね。そろそろ潮時です。しかし、ご勘弁を。精霊のお言葉と助力を頂いた以上、抗しがたきことでありましたので。あなた方の言葉で言うと天啓を賜ったということです。片隅であなた方を観察していた彼等もそうでしょうね」
おどけたファーリであったが、小袋の中のコインを確認すると、渋い顔をした。

「残念な音を奏でる楽器への銭と思えば、妥当だろう。でだ、何故、アルフレート君に近づく」

「さあ、そこまでは精霊も話してくれませんでした。ただ、私だけでなく精霊や神より同じような声を聞いた者が多々いるようです」
そう言って、ファーリが小袋を改めて開いた。サリナがそこへ小銭を投じた。

「まっ、今の情報に対する対価は、こんなもんでしょ」

まじまじとサリナを見たファーリであったが、小袋の中のコインを確認すると、渋い顔をした。
「情報料をケチると碌なことになりませんよ」

ヴェルも小袋へ多めの小銭を投じた。
「ったく!呪歌なんて謳わなければ、十分に報酬を得られたのにな」

「ふうう、何とか宿に一泊は出来そうです」
もうひと声が欲しいのか最後に誠一、キャロリーヌ、そしてシエンナの前に小袋を広げた。

誠一は3人を代表して、金貨を投じた。

「おおっ。アルフレート様の英雄譚を謳って街々を渡り歩きましょう、それでは、また、いずれ」

エルフ特有の軽やかな動きで貰うものを貰うと店を後にした。

「アル、あれは止めなくていいの?」
シエンナの最もな意見に誠一はため息混じりに答えた。
「あれは止めても止まらないパターンだよ。諦めが肝心さ」

その後、ダンブルより宛がわれた宿舎の一室で誠一はベッドに転がりながら、ファーリの言葉を反芻していた。

「やはりあれだよな」

プレーヤーによる悪質なイベントが開催されていると誠一は考えていた。キャラクターのアイテム強奪か拉致監禁、最悪、殺害がアングラサイトを賑わせているのだろう。

「最悪だな、まったく俺が何をしたっていうんだよ」
運営よる規制と禁止は常に後手後手か放置であり、自分が実害を被る前にこのイベントが強制停止されることはないだろう。

「目的は何だろ」
この糞イベは、恐らく上位魔人の魔石の強奪かキャロリーヌかシエンナの拉致監禁、まさかと思うが自分のプレーヤーが何らかの恨みを買って、その復讐のために発生したのだろうか。陰キャぽいプレーヤーだろうから、痴情のもつれないだろうなと想像を巡らしていた。

考えても対策は思い浮かばず、少しでも情報を得るために気が進まなかったが、誠一はプレーヤーに語りか続けた。
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