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372.打ち上げ2

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昼食をとり終わると、アミラは自宅に護衛を伴って、
一旦、戻っていった。
シエンナの指示によりモリス商会の者がグロウ邸に
連絡に行っていたようであった。

今度は誠一がダンブル一派との交渉について説明をした。

「アル、理解はできたが、いいのか?戦場で
ヴェルトール王国の兵と剣を交わすことになるよな。
それは、魔術院の同期生やラムデール、
ファブリッツィオの率いる騎士たちと相見えることに
なるかもしれないんだぞ。それも見越した上なのか?
商人、それは回避できるかもしないけど」

ヴェルの言うことは既に北関を出た時から
何度も反芻していた。
それにしてもこの世界は、誠一に厳しい選択を強いてくる。
社会に出て揉まれた訳でもない誠一にとって、それは辛いことであった。

「ヴェル、それは何度も考えた。
しかし、グレートウォールに商人として、
潜入しても遅かれ早かれ突きつけられる命題さ。
エスターライヒ家の名声を利用しようと
必ず奴らは近づいてくる。
ならば最大限有利に事を運べるタイミングを選ぶべきだ」

ヴェルは誠一の話を聞いて何気なく腕を組もうとして、
患部に右腕がぶつかり声に出でない叫びを上げていた。

「ヴェル、私はアルの行動を尊重するわ。
この任を受けた以上、それはありうるべきことだからね。
既に覚悟している」

「っーーー。俺だってアルの意見を尊重するさ。
やみくもにアルについて行くだけじゃしょうがないだろ。
俺はただ、アルにその覚悟があるかどうかを知りたかっただけだよ」

誠一は二人を見た。その表情は真剣そのものであった。
「ありがとう。二人と行動を共にできたことを感謝するよ」

この真剣なやり取りの最中に誠一は不覚にも
背中に感じる柔らかい双丘と香りに意識を持っていかれてしまった。
「アールっ、私とロジェもでしょ!
私たちもあなたの意思を尊重するわ。
勿論、納得できなときはとことん話をさせてもらうけどね」

「うっうん」
心臓の鼓動の早まりによる血流の増大から、
誠一は集中できずに返事をするだけに留まってしまった。
前に座るシエンナの視線が痛かった。
「ちょっと、キャロリーヌ。アルから離れなさいって。
今はそんなことをしてる時じゃないでしょ。
大切な話をしているときにふざけないで」
シエンナの言っていることは至極、まっとうであったが、
どうにもそれを額面通りに受け取った男どもはこの場にいなかった。

「はいはい、そうでしたね」
そう言って、誠一から離れると、隣の椅子を誠一に
よせてキャロリーヌは着席した。
この行為にどう難癖をつけて誠一から
キャロリーヌを引き離そうかと思案を重ねるシエンナであった。
シエンナが真剣になやんでいる他所で、今後の計画について、
ロジェが額に右手を添えながら、話を進めた。
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