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349.交流4

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「おい、アル。遅いぞ。今日は俺とお前で店を市場に構えるぞ」
ヴェルはやる気十分なのが表情と態度から見てとれた。

「アルフレート君、俺とキャロリーヌは、商人ギルドに向かう。
主に情報収集とグレートウォールへ持ち運ぶ品を検討する。
シエンナ、君は確か商会へ顔を出すんだな。
迎えが来るのをここで待っていると言うことでいいのかな」

やつれた表情の誠一はうなずいた。
その顔をまじまじと見つめるキャロリーヌであった。
心にやましいことがある誠一は咄嗟に視線を外してしまった。
キャロリーヌの視線が険しくなったが、誠一は床を見ているために
気づかなかった。心なし身体が更に怠くなっていた。

「ええ、ここで待たして貰います。
商会の者が訪ねてくることになっていますので。
ロジェさん、商会の品目と売買価格も
いくつかリストアップしておきますか?」

「おお、それは頼む。仕入れはどこでしようとも関係ないからな。
じゃあ、全員行動に移ろう。アルフレート君、辛そうだが大丈夫か?」

ロジェの問いに頷き、ヴェルと行動を開始した。

「なあ、アル。暇だな。全然、売れないんだけど。
これって、場所のせいじゃね」
市場でロジェがギルドで紹介を受けた場所で品を広げるが、
一向に売れる気配がなかった。
周囲の賑わいをよそに誠一とヴェルは品物の前で
ぼんやりと過ごしていた。

「ヴェル、このままぼんやりとしていても仕方ないし、
魔術のトレーニングでもしながら客を待つことにしようか」

誠一は魔力を練り上げて、周囲に害が及ばない範囲で
水の魔術を展開した。繊細な魔力操作の訓練であった。
「じゃ、俺もやるか」
ヴェルも魔力を練り上げて、風邪の魔術を展開した。
周囲にそよ風が起きた。否、そよ風と言うに少し荒々しかった。
人を傷つける程ではなかったが、街往く人々を驚かせるには十分であった。

「あっ、やっちまった」
慌てて、術を解き、我関せずの態度をとるヴぇるであった。
しかし、それは時、既に遅しであった。

誠一たちの前の路で、一人の少女がガラの悪い連中に絡まれていた。

「おいおい、肘打ちを喰らわしておいて、何の謝罪もなしかよ」
4人ほどの男と二人の女が少女に絡んでいた。
「いっ痛ってって。いてえよ」
1人の男がしゃがみこんで、苦しんでいた。
「どうすんだよ。これ。誠意を見せろって。こっち来い」
少女の右手を掴み、荒々しく男が少女を逃げられないように
抑えつけた。

「そんな急に風が吹いて。
この人がぶつかってきたんです。やめてください」
少女の叫びに応じる者はいなかった。
一銭の得にもならない揉め事に割って入るような者は皆無であった。
場末の市場で衛兵の介入も皆無であった。
当事者同士で話を付けるのが常であった。
少女もこの場所の暗黙のルールが分かっているのだろう。
段々と声が小さくなっていった。
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