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336.竜公国16

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シエンナの形相は凄まじいものになっていた。
ほんわかした普段の表情など想像もつかないほどであった。
「ぎりりっ、こいつは許せない、許せない。
神より下賜された神秘の防具を切り刻んだ。
そしてこの程度の突きを避けきれぬ不才の身故に血で汚してしまった」

「アルフレート君、止められるのは君だけだ!
止めろ、シエンナを失うぞ」
ロジェも決闘を止めようとしていたが、
シエンナに声が届いていないようだった。
皆が一縷の望みを誠一にかけた。

「無駄だ。両者が納得しなければ、決闘は終わらない。
己の不明を詫びつつ、事の結末を待つがよい」
グロウが立ち上がろうとした誠一の肩を掴んで強引に着席させた。
エドワードの方を見ると如何にも満足そうに満面の笑みを浮かべていた。
最初から最後まで筋書き通りに事が運びそうで愉快そうであった。
左右に侍る文官や騎士、竜人と談笑をしていた。

「シエンナ、負けるな!勝機は必ずある。
まだ、奴は力に慣れていない。力に振り回されている。
そこを突くんだ」
無駄だと思いつつも誠一は叫んだ。
今、ここで彼女の力になれるなら、何だってするつもりだった。
公国の思惑に振り回されて、シエンナを失うなんて、
一片たりとも思いたくなかった。

シエンナは、アイスシールドを展開しながら、
器用にも水魔術の応用で傷を少しずつだが、回復していた。

シエンナは最小の動作でその場から突きを躱し、
その場からあまり動かなかった。
地面には血だまりができ始めていた。
少しずつだが、ふらふらし始めて、長槍で受ける傷が
大きくなってきた。

何故か、突然、シエンナは、左腕を大きく空へ掲げた。

「アル、勝って必ず戻るから。私はこんなちんけな男に負けない。
私の本当の敵は、リシェーヌやキャロリーヌなんだから。
アル、身体中が傷らだらけになっても私を受けいれて!」

誠一の脳裏に何故か選択肢が浮かんだ。
『シエンナの思いを受けいれ入れますか』

『どんなことになっても受け入れるに決まっているだろう』
誠一は心の中で叫んだ。

称号『押し掛けられた男』を得ました。
そんな言葉が誠一の脳裏に響いた。そして、嫌な説明が流れた。

追い出したら、評判は地に落ちるため、注意が必要。

追い出したら、身体が重くなり、行動制限がかかる。
 
誠一は、シエンナを鑑定した。彼女も称号を得たようだった。
『押しかけ女房』これまた、何か胡散臭い称号であった。

別の男に押しかけたら、評判は地に落ちるため、注意が必要。

押しかけた相手に本気で押し返されたら、死ぬ。

押しかけた相手から甘い言葉と態度を受けると、
一時的に書く能力が格段に上昇する。

これって、キャロリーヌと同じじゃないか!と絶叫した。
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