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324.竜公国4
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「シエンナ、どうしたの。気になることでもあるの?」
じーっと男を見つめるシエンナに誠一が話しかけた。
「輜重隊を襲って、捕獲された男。いやまさか」
シエンナの言葉に誠一は札に書かれた罪状を読んだ。
『仲間を売り、死地に追いやり、のうのうと帰国した不届き者』
罪状が書かれていなかったが、裏切者として裁かれているようだった。
市井の者たちには法による罪状を書き連ねられるより分かりやすかった。
「兄貴、姉貴。親父とおかんがあそこまでしたのかよ」
ヴェルはシエンナの言葉で両親が尋問にあたっていたことを
思い出していた。
「ヴェル、落ち着きなさい。あそこまでする訳ないでしょ。
あんなに目立った傷を残す訳ないわ。
やったのは両手の爪を剥ぐ程度よ。
それもあの感じじゃ、綺麗に剥げているところだけよ。
あの中途半端に割れているのは恐らく竜公国の者に尋問官でしょ」
キャロリーヌの説明に誠一は驚いてしまった。
生爪を剥いだことは否定しないんだと。
少しだけ背筋に悪寒を感じる誠一だった。
男は立ち止まり、シエンナの方を片目で凝視していた。
何かを思い出したのか、奇声を発すると両足の鉄球が宙を舞い、
シエンナを襲った。
技と言えるほどに洗練されてはいなかったが、
遠心力の加わった鉄球は威力絶大であった。
当たればただでは済まないことは明白であった。
両足首にはめられた鉄の枷が男の肉を削ぎ、血が噴き出ていた。
しかし、男の表情は、憎悪意外の何物も感じさなかった。
鉄球はシエンナに当たることはなかった。
大きく弧を描く鉄球の軌跡は、シエンナにとって
躱すことが難しくなかった。
気力より体力の方が先に限界を迎えたのだろう。
男は鉄球に振り回されて、クルクルと回り、そのまま地に臥して、
ピクリとも動かなかった。
「くそっ、戦でのこととは言っても後味が悪いな」
ヴェルが何とも言い難い表情で男を見つめていた。
誠一はヴェルと同様の感想を持っていた。
「国の方針の犠牲者ね。中立を国是とする以上、
こういった犠牲者が出るのは仕方のないことよ。
冒険者に偽装した竜騎士が全滅したとなると尚の事よ」
キャロリーヌが冷めた表情で男を見つめていた。
冷たく醒めたような雰囲気を醸し出していた。
誠一はキャロリーヌの視線にぞくりとした。
今日はキャロリーヌの新たな一面に出会ってばかりだった。
しかもあまり好ましくない暗黒面をみたような気がした。
「そうかーこの国は、こうもり君になりきれない半端者と違って、
徹底しているってことね」
シエンナがヴェルを見ながら言うと、
ヴェルが顔を真っ赤にして食って掛かった。
「おっおまい、一体、いつまでそのことを!
あの時の俺はどうかしていたんだ。なっなあ、アル、そうだよな」
ヴェルが誠一に助けを求めたが、誠一は曖昧にうなずくだけであった。
じーっと男を見つめるシエンナに誠一が話しかけた。
「輜重隊を襲って、捕獲された男。いやまさか」
シエンナの言葉に誠一は札に書かれた罪状を読んだ。
『仲間を売り、死地に追いやり、のうのうと帰国した不届き者』
罪状が書かれていなかったが、裏切者として裁かれているようだった。
市井の者たちには法による罪状を書き連ねられるより分かりやすかった。
「兄貴、姉貴。親父とおかんがあそこまでしたのかよ」
ヴェルはシエンナの言葉で両親が尋問にあたっていたことを
思い出していた。
「ヴェル、落ち着きなさい。あそこまでする訳ないでしょ。
あんなに目立った傷を残す訳ないわ。
やったのは両手の爪を剥ぐ程度よ。
それもあの感じじゃ、綺麗に剥げているところだけよ。
あの中途半端に割れているのは恐らく竜公国の者に尋問官でしょ」
キャロリーヌの説明に誠一は驚いてしまった。
生爪を剥いだことは否定しないんだと。
少しだけ背筋に悪寒を感じる誠一だった。
男は立ち止まり、シエンナの方を片目で凝視していた。
何かを思い出したのか、奇声を発すると両足の鉄球が宙を舞い、
シエンナを襲った。
技と言えるほどに洗練されてはいなかったが、
遠心力の加わった鉄球は威力絶大であった。
当たればただでは済まないことは明白であった。
両足首にはめられた鉄の枷が男の肉を削ぎ、血が噴き出ていた。
しかし、男の表情は、憎悪意外の何物も感じさなかった。
鉄球はシエンナに当たることはなかった。
大きく弧を描く鉄球の軌跡は、シエンナにとって
躱すことが難しくなかった。
気力より体力の方が先に限界を迎えたのだろう。
男は鉄球に振り回されて、クルクルと回り、そのまま地に臥して、
ピクリとも動かなかった。
「くそっ、戦でのこととは言っても後味が悪いな」
ヴェルが何とも言い難い表情で男を見つめていた。
誠一はヴェルと同様の感想を持っていた。
「国の方針の犠牲者ね。中立を国是とする以上、
こういった犠牲者が出るのは仕方のないことよ。
冒険者に偽装した竜騎士が全滅したとなると尚の事よ」
キャロリーヌが冷めた表情で男を見つめていた。
冷たく醒めたような雰囲気を醸し出していた。
誠一はキャロリーヌの視線にぞくりとした。
今日はキャロリーヌの新たな一面に出会ってばかりだった。
しかもあまり好ましくない暗黒面をみたような気がした。
「そうかーこの国は、こうもり君になりきれない半端者と違って、
徹底しているってことね」
シエンナがヴェルを見ながら言うと、
ヴェルが顔を真っ赤にして食って掛かった。
「おっおまい、一体、いつまでそのことを!
あの時の俺はどうかしていたんだ。なっなあ、アル、そうだよな」
ヴェルが誠一に助けを求めたが、誠一は曖昧にうなずくだけであった。
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