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320.IFの世界編 誠一の選択肢2

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ヴェルが激怒した。ハルバートが大きく弧を描いた。
「テメー、ぜってー倒す」
ヴェルの怒りは、シエンナを冷静にさせた。

「救国の英雄たる俺に刃を向けることは
『ヴェルトール王国』に歯向かうことと同じだぞ。
それは理解しているな」
高笑いするアルフレートであった。

「それがどうした!
おまえが救国の英雄、笑わせるなグレートウォールの大虐殺は
許されることじゃねえ」

ヴェルに糾弾されると、見る者が嫌になるほど
アルフレートの顔が醜悪に歪んでいた。

「なるほどね。この結果をおまえは求めていた訳ね」

「流石にシエンナ、君は聡いな。
称号『婚約者1キャロリーヌ』が意外と邪魔でね。
これ以上ない程、上手くいったよ」

ヴェルを炎の鳥が包んだ。そして、炎の塊となり、
ヴェルはアルフレートに襲いかかった。

「馬鹿の一つ覚えほど、恐ろしいものはない。
そのくだらない技をそこまで昇華させるとは
それも一つの才能に違いない」

黄金の剣とハルバートが交錯した。
派手な音が響くと、ハルバートの穂先が砕けていた。

「無駄な事ヨ。俺様の実力を最も知っているのは君たちだろう」

黄金の剣はヴェルの首に振り下ろされた。
しかし、その剣が首を飛ばすことは無かった。
大剣が黄金の剣の一振りを防いでいた。
「ロジェ、君はもう少し賢いとおもっていたがな」

「ぬかせ。俺はできることをするだけだ。
ヴェル、シエンナ、ここは退け。時間を稼ぐ」
力任せに大剣でアルフレートをロジェが押し込んだ。
ロジェの意図を察したシエンナが補助魔術を3人分、無詠唱で展開した。

「兄貴、加勢するぞ」
ヴェルが美しい装飾の短刀を引き抜いた。

「シエンナ、君なら分かるだろう。
ヴェルを連れて、オニヤ殿を尋ねろ。いいな、頼むぞ」
シエンナは、ヴェルの腰を掴むと、一気にこの場から走り去った。

「シエンナ、離せよ」

「馬鹿ッ、察しなさい。いっーつも私に嫌ことをさせないでよ」
シエンナの極限まで成長した『貧乏くじ』が発動していた。
そのため、暴れるヴェルがシエンナを振り解くことができなかった。

「やれやれ、逃げられてしまった。
仕方ない王国で二人に懸賞金を賭けるしかないな」

「ぬかせ、3人分だろうが、あんまり舐めるなよ」
不敵に笑うロジェだったがその表情は真剣そのものであった。
対して、アルフレートは、余裕綽々であった。

ロジェの愛用のツヴァイヘンダーとアルフレートの黄金の剣が
交錯し、火花を散らした。

誠一亡き後の世界も有為転変しながら続き、
世界は英雄の織り成す悲喜交交の物語を紡いだ。
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