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309.奥殿5
しおりを挟む「ていっ」
誠一の後ろから剣豪の手が伸びて来て、
『New game』でenterのボタンが押された。
「うぅううううおおおー」
誠一は絶叫した。突然のことに一瞬にして混乱してしまった。
慌てて周囲を見渡すが何も起きていない。画面も変わらずであった。
「ちょっと、おどかさないでください」
唇が引き攣った誠一であった。
「これで分かりましたな。
これはアルフレート様にしか反応しないでごさるよ」
誠一は深呼吸を繰り返した。
呼吸の乱れが落ち着くと共に気分も落ち着いた。
剣豪は『New game』を選択した。
どうも誠一は剣豪と同じものを選択する気がしなかった。
虫の知らせか第六感か誠一には分からなかったが、
剣豪に対する忌避感も手伝って、何となく『New game』に
嫌な印象を受けた。
今更であったが、どこかに取扱説明書でもないかと
誠一は探し始めた。
暫く探したが何も見つからず諦めて、PCの前に座った。
参考にすべきものがない。誠一は己の直感を信じて、ボタンを押した。
ピピッピピィ、画面が暗転して、ピピッピピィという音と共に
左片隅から文字が一文字ずつ表示され始めた。
『Continue』が選択されました。
アルフレート・フォン・エスターライヒによるゲームは継続されます。
継続特典が鈴木誠一に付与されます。
『異世界人の誘い』:『ヴェルトール王国戦記』に
対象の異世界人を誘うことができます。
『神隠しのアミュレット』:『神隠しの路』を山に顕現させることができる
『管理者との対話』:本PCを用いて、管理者の気分次第で
接触することができる。
文字は暫くすると消失し、ドッド絵でこの庵が表示されていた。
そして、デフォルメ化された絵で誠一と剣豪も表示されていた。
「一体、如何したでござるか?」
鑑定眼を持たないにも関わらず、剣豪の目を欺くことは
誠一にとって困難であった。そのために正直に得た情報を剣豪に伝えた。
「そうか、そうであるか。ここも対話止まりであったか。
しかし、最初の選択肢と次の選択肢を変えれば、
もしや神々の世界に向かえるのかもしれませぬ。
ささっ、もう一度、挑戦してみるのです」
目が笑っていなかった。
一の刀の柄を握り、再起動を強要してくる剣豪であった。
逆らえるはずもなく、誠一は、ログアウトもせずに
直接電源をoffした。
Saveもしていないはずだし、恐らく最初からスタートすると思い、
再起動させた。
「先生、疑問なんですが、何故、大陸の標準語と
恐らくですが生まれ育った生国の言葉が入り混じっているんですか?」
「さあ、慣れ親しんだ言葉はふとしたときに出るからではでしょうな。
ささっ、そのようなことは気にせずに続けてください」
PCからキュルキュルルと音がなりながら、
画面にいきなり『ヴェルトール王国戦記』のロゴが現れた。
そして、選択肢には、『Continue』のみが表示されていた。
その画面を見ると、剣豪は目を細めた。
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