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300.閑話 とある大学での情景1
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お腹のコンディションが回復してきた千晴と清涼は、
食器を返却すると鈴木誠一の痕跡を探すために食堂から移動した。
「さてと佐藤さん、まずは学部の掲示板を見に行こうか。
歴史学科日本史専攻だったよね」
千晴は頷いた。特に良案があった訳でもなかったために
清涼の意見に賛成した。
学生掲示板に何かしらの名簿でも出ていれば重畳であった。
誰もいない廊下を清涼と二人で歩く千晴。
廊下に響く靴音が妙にはっきりと耳に聞えた。
「佐藤さん、あったよ!あった。
掲示板の補習者一覧や課題未提出者一覧を
ちょっと検索してみよう」
清涼は慣れた手つきで誠一の学籍番号を打ち込んだ。
H-39-2446が誠一の学籍番号であったが、
補習者にも課題未提出者にも検索にその番号が引っ掛かることはなかった。
「うーん、優秀な方だったのかな」
千晴の感想を真っ向から清涼が否定した。
「いや、違うでしょ。
出席できてない状況なんだから、休学届を出してなければ、
確実にここに掲載されるよ」
清涼が自分のパッドを眺めながら、おどおどしながら答えた。
千晴にはなぜ急に清涼がおどおどし始めたのか分からなかった。
「じゃあ、こっちなら、休学か退学していなければ、
掲載されているんじゃないかな」
千晴が来年度の研究室の振り分け表の方を指した。
「そそそっそうだね。チッ千晴の言うとっおおりだ」
声が次第に小さくなりながら、指を震わせて、
千晴の言ったところをタッチした。
んんんっ、名前で呼び捨てにされたような気がしたが、
気のせいかと思い、掲示板に目をやった。
「学籍番号、H-39-2444、H-39-2445、H-39-2447、あれっなくない」
清涼が唸り声を上げた。誠一の提示した学籍番号が抜けていた。
考え得るのは留年・休学・退学であろう。
「清涼さん、今日、教務課は開いてないですよね」
「まっまあ、休出の職員がいなければ、恐らく誰もいないだろうね。
そのあのう、千晴、一応、行ってみようか」
チラチラとパッドを見ながら、おどおどと答える清涼だった。
今度ははっきりと千晴に聞えた。
こいつ、突然、名前な上に呼び捨てやがった。
貴重な休日を割いて、手伝って貰っている手前、どう指摘すべきか
千晴にとって悩みどころであった。
「清涼さん」
ニッコリ笑って清涼の目をしっかりと見つめた。
「はひっ、すみませんすみません。莉々子が言えって」
一瞬にして、清涼がげろった。頭を45°に下げていた。
一瞬だが清涼が頭を下げた時に廊下の奥から
午後の日差しが覗いたのか千晴は眩しさに目が眩んだ。
「いえ、まあ、突然だったのでこちらとしても
驚いただけですよ、行きましょ、喬史」
ちょっとした意地悪のつもりで千晴は名前で呼んでみた。
清涼の姿勢が直角になった。
千晴は笑いが吹き出してしまった。
「ふふっ、冗談ですよ。清涼さん、行きましょう」
「全く佐藤さんには敵わないや。
教務課に誰か出勤してればいいけど。
ところで聞き出す上手いアイディアはあるのかな」
清涼も頭を上げて、千晴を教務課に案内した。
食器を返却すると鈴木誠一の痕跡を探すために食堂から移動した。
「さてと佐藤さん、まずは学部の掲示板を見に行こうか。
歴史学科日本史専攻だったよね」
千晴は頷いた。特に良案があった訳でもなかったために
清涼の意見に賛成した。
学生掲示板に何かしらの名簿でも出ていれば重畳であった。
誰もいない廊下を清涼と二人で歩く千晴。
廊下に響く靴音が妙にはっきりと耳に聞えた。
「佐藤さん、あったよ!あった。
掲示板の補習者一覧や課題未提出者一覧を
ちょっと検索してみよう」
清涼は慣れた手つきで誠一の学籍番号を打ち込んだ。
H-39-2446が誠一の学籍番号であったが、
補習者にも課題未提出者にも検索にその番号が引っ掛かることはなかった。
「うーん、優秀な方だったのかな」
千晴の感想を真っ向から清涼が否定した。
「いや、違うでしょ。
出席できてない状況なんだから、休学届を出してなければ、
確実にここに掲載されるよ」
清涼が自分のパッドを眺めながら、おどおどしながら答えた。
千晴にはなぜ急に清涼がおどおどし始めたのか分からなかった。
「じゃあ、こっちなら、休学か退学していなければ、
掲載されているんじゃないかな」
千晴が来年度の研究室の振り分け表の方を指した。
「そそそっそうだね。チッ千晴の言うとっおおりだ」
声が次第に小さくなりながら、指を震わせて、
千晴の言ったところをタッチした。
んんんっ、名前で呼び捨てにされたような気がしたが、
気のせいかと思い、掲示板に目をやった。
「学籍番号、H-39-2444、H-39-2445、H-39-2447、あれっなくない」
清涼が唸り声を上げた。誠一の提示した学籍番号が抜けていた。
考え得るのは留年・休学・退学であろう。
「清涼さん、今日、教務課は開いてないですよね」
「まっまあ、休出の職員がいなければ、恐らく誰もいないだろうね。
そのあのう、千晴、一応、行ってみようか」
チラチラとパッドを見ながら、おどおどと答える清涼だった。
今度ははっきりと千晴に聞えた。
こいつ、突然、名前な上に呼び捨てやがった。
貴重な休日を割いて、手伝って貰っている手前、どう指摘すべきか
千晴にとって悩みどころであった。
「清涼さん」
ニッコリ笑って清涼の目をしっかりと見つめた。
「はひっ、すみませんすみません。莉々子が言えって」
一瞬にして、清涼がげろった。頭を45°に下げていた。
一瞬だが清涼が頭を下げた時に廊下の奥から
午後の日差しが覗いたのか千晴は眩しさに目が眩んだ。
「いえ、まあ、突然だったのでこちらとしても
驚いただけですよ、行きましょ、喬史」
ちょっとした意地悪のつもりで千晴は名前で呼んでみた。
清涼の姿勢が直角になった。
千晴は笑いが吹き出してしまった。
「ふふっ、冗談ですよ。清涼さん、行きましょう」
「全く佐藤さんには敵わないや。
教務課に誰か出勤してればいいけど。
ところで聞き出す上手いアイディアはあるのかな」
清涼も頭を上げて、千晴を教務課に案内した。
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