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299.旅路17
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シエンナがすぐ傍のロジェを睨みつけていた。
「怖い顔を向けるなら、オニヤ殿にしてくれ。
シエンナ、君やサリナもアルフレート君と契りを結べば、親族だからな。」
くしゃくしゃとシエンナの頭を撫でるロジェであった。
「子供は下がっていなさい。ヴェル、お前もだ。
エンゲルス家の長男がこの男を止める。
キャロ、アルフレート君は大丈夫か?」
泣きじゃくりながら、必死で誠一に回復薬を口に
含ませるキャロリーヌが何度も頷いた。
所詮はレアリティR、妹のャロリーヌのSRには言うに及ばず、
末弟のヴェルのHRにすら及ばない。
ロジェは二人の様子を眺めた。
天真爛漫にして、男心を狂わす魔性の魅力で
将来どんだけ淫蕩な女性になることやらと心配していたが、
どうやら無用の心配事であったようだった。
才能に溺れてどんだけ粗暴で暴力に訴える男になることやらと
心配していたがそれもどうやら無用の心配事であったようだった。
アルフレートとの出会いは二人の人生にとって僥倖であったと
ロジェは信じていた。
その縁をここで断ち切る訳はいかなかった。
長男としてそれは断じて許せることでなかった。
「オニヤ殿、退いて貰えると助かるのだが。
ここで退いて貰えれば、訓練ということで納められる」
「諦めが悪いでござるなー。いい加減にして欲しいなぁ」
ツヴァイヘンダーを構えて立ち塞がるロジェを前に
露骨に不愉快な顔を向ける剣豪であった。
「信用に足る態度を示すことができなかったあなたが悪い」
剣豪は最早、答えずに両手に持つ木刀を投擲した。
サリナの眉間から血が流れていた。
次の瞬間、シエンナの脇腹辺りを捉えた木刀が砕け散っていた。
武器を持たない剣豪に容赦なくロジェが
ツヴァイヘンダーで斬りつけた。
振り下ろされる前に剣豪はロジェの懐に飛び込み、床に押し倒した。
「さて、後二人」
立ち上がりヴェルとキャロリーヌを剣豪は見据えた。
「姉貴、アルを連れて逃げろ」
「無理でござるよ」
冷たく言い放つと木刀でヴェルを右袈裟掛けに斬りつけた。
ヴェルは呻いて昏倒した。
キャロリーヌは剣豪の前に立ちはだかった。
「アルをアル君を助けてくれるなら」
キャロリーヌが哀願するような瞳で剣豪を見つめた。
剣豪がめずらしく喉を鳴らした。
剣豪はキャロリーヌの両手を掴み、壁際に追い込んで服を引き裂いた。
瞳を閉じ、震えるキャロリーヌを一瞥した。
「ふん、つまらぬ。慣れぬ真似はせぬほうが良い。興が覚めたのう」
キャロリーヌの腹部に強烈な一撃を加えた。
そのままキャロリーヌはその場でずりずりと崩れ落ちた。
剣豪は誠一を抱えると、石段の方へ歩き始めた。
「おい、待てよ。舐めてんじゃねーぞ」
ロジェが立ち上がっていた。
剣豪は誠一を抱えたまま、ロジェに肘打ちを当てた。
「ぐっ」
ロジェは呻いたが、そのまま剣豪の服を掴んで力任せに振り回した。
しかし、そこまでだった。如何なる国の技か、ロジェは大きく宙を舞い、
床に強く叩きつけられて気絶した。
「さて、アルフレート様、行きましょうか」
剣豪は誠一を担いだまま、薄暗い中の苔の生えた石段を
ゆっくりと昇り始めた。
烏天狗はその場から動かずに瞳が彼ら二人をじっと見つめていた。
「怖い顔を向けるなら、オニヤ殿にしてくれ。
シエンナ、君やサリナもアルフレート君と契りを結べば、親族だからな。」
くしゃくしゃとシエンナの頭を撫でるロジェであった。
「子供は下がっていなさい。ヴェル、お前もだ。
エンゲルス家の長男がこの男を止める。
キャロ、アルフレート君は大丈夫か?」
泣きじゃくりながら、必死で誠一に回復薬を口に
含ませるキャロリーヌが何度も頷いた。
所詮はレアリティR、妹のャロリーヌのSRには言うに及ばず、
末弟のヴェルのHRにすら及ばない。
ロジェは二人の様子を眺めた。
天真爛漫にして、男心を狂わす魔性の魅力で
将来どんだけ淫蕩な女性になることやらと心配していたが、
どうやら無用の心配事であったようだった。
才能に溺れてどんだけ粗暴で暴力に訴える男になることやらと
心配していたがそれもどうやら無用の心配事であったようだった。
アルフレートとの出会いは二人の人生にとって僥倖であったと
ロジェは信じていた。
その縁をここで断ち切る訳はいかなかった。
長男としてそれは断じて許せることでなかった。
「オニヤ殿、退いて貰えると助かるのだが。
ここで退いて貰えれば、訓練ということで納められる」
「諦めが悪いでござるなー。いい加減にして欲しいなぁ」
ツヴァイヘンダーを構えて立ち塞がるロジェを前に
露骨に不愉快な顔を向ける剣豪であった。
「信用に足る態度を示すことができなかったあなたが悪い」
剣豪は最早、答えずに両手に持つ木刀を投擲した。
サリナの眉間から血が流れていた。
次の瞬間、シエンナの脇腹辺りを捉えた木刀が砕け散っていた。
武器を持たない剣豪に容赦なくロジェが
ツヴァイヘンダーで斬りつけた。
振り下ろされる前に剣豪はロジェの懐に飛び込み、床に押し倒した。
「さて、後二人」
立ち上がりヴェルとキャロリーヌを剣豪は見据えた。
「姉貴、アルを連れて逃げろ」
「無理でござるよ」
冷たく言い放つと木刀でヴェルを右袈裟掛けに斬りつけた。
ヴェルは呻いて昏倒した。
キャロリーヌは剣豪の前に立ちはだかった。
「アルをアル君を助けてくれるなら」
キャロリーヌが哀願するような瞳で剣豪を見つめた。
剣豪がめずらしく喉を鳴らした。
剣豪はキャロリーヌの両手を掴み、壁際に追い込んで服を引き裂いた。
瞳を閉じ、震えるキャロリーヌを一瞥した。
「ふん、つまらぬ。慣れぬ真似はせぬほうが良い。興が覚めたのう」
キャロリーヌの腹部に強烈な一撃を加えた。
そのままキャロリーヌはその場でずりずりと崩れ落ちた。
剣豪は誠一を抱えると、石段の方へ歩き始めた。
「おい、待てよ。舐めてんじゃねーぞ」
ロジェが立ち上がっていた。
剣豪は誠一を抱えたまま、ロジェに肘打ちを当てた。
「ぐっ」
ロジェは呻いたが、そのまま剣豪の服を掴んで力任せに振り回した。
しかし、そこまでだった。如何なる国の技か、ロジェは大きく宙を舞い、
床に強く叩きつけられて気絶した。
「さて、アルフレート様、行きましょうか」
剣豪は誠一を担いだまま、薄暗い中の苔の生えた石段を
ゆっくりと昇り始めた。
烏天狗はその場から動かずに瞳が彼ら二人をじっと見つめていた。
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